生活様式が変貌していく“今”を描く
日本映画界屈指の鬼才・石井裕也監督が平野啓一郎の同名長編小説を原作に、俳優・池松壮亮を主演に迎えた、革新的なヒューマンミステリーが『本心』です。
工場で働く青年・朔也(池松壮亮)は、同居する母(田中裕子)から仕事中に電話が入り「帰ったら大切な話をしたい」と告げられます。帰宅を急ぐ朔也は、途中に豪雨で氾濫する川べりに母が立っているのを目撃。助けようと飛び込むも重傷を負い、1年もの間、昏睡状態に陥ってしまいます——。
目が覚めたとき母は亡くなっていて、生前“自由死”を選択したと聞かされます。また、ロボット化の波で勤務先は閉鎖。朔也は、唯一の家族を失くし、激変した世界に戸惑いながらも幼なじみの岸谷(水上恒司)の紹介で「リアル・アバター」の仕事を始めます。カメラが搭載されたゴーグルを装着し、リアル(現実)のアバター(分身)として依頼主の代わりに行動する業務を通して、人々が胸の内に秘めた願いや時には理不尽な悪意に晒され、人の心の奥深さとわからなさを日々体感してゆきます。
そんななか、仮想空間上に任意の“人間”を作る「VF(ヴァーチャル・フィギュア)」という技術を知る朔也。いつまでも整理のつかない「母は何を伝えたかったのか? どうして死を望んでいたのか?」を解消したい気持ちから、なけなしの貯金を費やして開発者の野崎(妻夫木聡)に「母を作ってほしい」と依頼します。野崎の「本物以上のお母様を作れます」という言葉に一抹の不安をおぼえた朔也は「自分が知らない母の一面があったのではないか?」と、手掛かりを求めて、母の親友だったという三好(三吉彩花)に接触。彼女が台風被害で避難所生活中だと知り、「ウチに来ませんか」と手を差し伸べます。
かくして、朔也と三好、VFの母という奇妙な共同生活がスタートします。その過程で朔也が知る、母の本心とは。そして「人に触れられない」苦悩を抱える三好を縛る過去、彼女だけが知る母の秘密とは。その先に浮かび上がるのは、時代が進んでも完全には理解できない人の心の本質そのもので——。
主演の池松壮亮に加え、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、田中泯、綾野剛、妻夫木聡、田中裕子ら、日本の映画界を牽引する豪華実力派俳優陣が集結。これまで映画・ドラマを合わせて8作品の石井監督作品に出演している池松が、原作を読み「今描かれるべき作品」として全幅の信頼を寄せる石井監督に企画を持ち込んだ、9作目のタッグ作となっています。
近年ますます活動領域を拡張している池松壮亮さんですが、バイクとの共演といえば主人公・本郷猛を演じた『シン・仮面ライダー』が思い出されます。同作の本郷が乗るサイクロン号のベースは、ホンダのCB250RとCB650R。当時のテレビシリーズへのオマージュ的な造型も魅力的な、仮面ライダーファンにとっても納得のデザインと言えるでしょう。
『本心』は、2024年11月8日(金)より全国ロードショーです。
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