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【セブンの姿のスーパーカー】ドンカーブートD8 GTO-JD70へ試乗 618ps/t

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【セブンの姿のスーパーカー】ドンカーブートD8 GTO-JD70へ試乗 618ps/t

古希祝いの生産台数は70台限定

text:Matt Prior(マット・プライヤー)

【画像】ドンカーブート 英国製ライバル 全106枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


その昔、若きヨープ・ドンカーブートがロータス・セブンを欧州へ輸入し初めたとき、1つの問題に直面した。そのままでは合法扱いにならず、小さな改良を加える必要があったのだ。

それから42年が過ぎた。彼は、手を休めることはなかったらしい。

今回試乗する、オリーブグリーンのモンスターは、ドンカーブートD8 GTO-JD70。ドンカーブート社を創業した、ヨープの70才を記念して生み出されたクルマで、生産台数は70台に限定されている。

ベースとするのは、ドンカーブートD8 GTO。フロントエンジン・リアドライブの小さなロードスターだ。ケーターハム・セブンもロータス・セブンを起源としているが、こちらはさらに変化を遂げている。

オランダ(ネーデルラント)のレリスタット工場で生み出されるのは、チューブラーフレームを軸とするシャシー。オリジナルとなる、カーボンファイバー製の構造部分と結合される。

シャシー単体の重量は54kgしかない。ねじり剛性は20kNm/degもある。プッシュロッド式のウイッシュボーン・サスペンションがタイヤ4本を支える。

以前から、コスワース製ユニットを用いていたドンカーブート。一時、V6エンジンを搭載するためアウディと契約する。ところがRS3に搭載される、2.5Lの直列5気筒ユニットへの新しい取り決めはうまく行かなかった。

セブンのカタチでも最高速度は280km/h

だが当時のアウディの技術者、ウルリッヒ・ハッケンバーグは、そのアイデアを気に入っていた。そこからドンカーブートD8へと展開し、素晴らしく速いレーシングカーが誕生した。

ルーフの付くD8 GTは、2011年のドバイ24時間レースで、クラス優勝を挙げるほど。だがオープンボディのロードスターの需要が高く、D8 GTOが生まれた。Oは、オープンの頭文字だ。

D8は、ロータス・セブンを由来とするほかのロードスターより、ひと回り大きい。全長は3836mmで、全幅は1850mm。ケーターハム・セブンは全長3380mm、全幅1580mm程度しかない。アリエル・アトムでも、全長3520mm、全幅1880mmだ。

車重は680kg。ボディは少し大きくても、まだまだ軽いスポーツカーだといえる。

ドンカーブート社は、年間50台のD8 GTOを生産している。JD70のリリースに合わせて、アップデートを施した。

最新の環境規制に合わせて、ガソリン微粒子フィルターを追加。このフィルターのおかげで、排気音はかなり絞られるから、荷室下にあった大きなサイレンサーはなくなっている。レイアウトはサイド排気だ。

荷室の床面は深くなり、容量は大きくなった。荷物が熱くなることもない。フロントのサイクルフェンダーにはルーバーが切り込まれ、リフトを抑えている。

ドンカーブートD8は、デザインも魅力的に変化を重ねている。同時に空力特性も向上され、GTO-JD70では最高速度が280km/hに届く。

高水準の仕上がりで快適な車内

小さなボディに、トルクフルな420psのエンジンは強烈だ。比較的ロングレシオの5速MTが組み合わされ、LSDを介してリアタイヤを駆動する。調整式のトラクション・コントロールを装備し、オプションでABSとパワーステアリングも選べる。

GTO-JD70の仕上がりは良い。技術力はアリエルほどではないにしても、完成度は見事。カーボン製パネルの織り目を、指定することもできる。

ドライビングポジションも理想的。シートは快適で、着座姿勢はケーターハムと似ている。肘が少しボディからはみ出るが、助手席側の人と肘がぶつかる心配は少ない。

ドアを取り付ければ、走行中の車内の乱気流は少なくなる。ずっと居心地が良くなる。メーター類は整然と並び、見やすく、スイッチ類の品質も高い。

快適な車内のおかげで、アリエルやケーターハムより、週末のロングドライブを楽しみやすい。GTO-JD70は別次元といって良い。

今回試乗したのは、ヨープ・ドンカーブート自身のクルマ。70台のうちの22番目。特徴的なグリーンのボディに、わずかにゴールドのメタリック・フレークが散りばめられている。70才になったヨープだが、まだまだ心は熱い。

彼が指定したGTO-JD70には、エアコンやABSだけでなく、パワステすら付いていない。そのかわり、カーボン製シートと6点ハーネスを、オプションで追加している。

徐行程度の速度では、ステアリングはかなり重い。ロックトゥロックは2.7回転と、さほどクイックではない。工場から外へ出て、速度を上げると操舵が軽くなっていく。

乗ってすぐに楽しい抜群の操縦性

埋め立て地の一角に工場はあり、付近は平坦。直角コーナーでつながった、直線に伸びる道路が敷設されている。

タイヤはナンカン製のAR-1。フロントが235/47 R17でリアが245/40 R18と異径。旋回時に2Gの遠心力に耐える粘着力があるらしいが、今回はそこまで攻め込まない。

むしろその必要はない。GTO-JD70は、乗ってすぐに楽しい。乗り心地も良好。橋桁の継ぎ目では大きめの振動が伝わるが、それ以外では充分に落ち着いている。

5速MTのシフトレバーは重いものの、ショートストロークでピタリと決まる。ペダルの重み付けもレイアウトも、非の打ち所がない。一部の少量生産メーカーは、人間工学を理解していないこともあるが、ドンカーブートは違う。

GTO-JD70は息を呑むほどに速い。ピークトルクは56.9kg-mで、1750rpmから6350rpmという幅広い回転数で発生。最高出力の420psには5850rpmで到達するが、リミッターが効く7000rpmまで衰えないという。

ターボラグはあっても、慣性は小さく、低回転域からブースト圧を小気味よく生成。そして一気に回転数を高めていく。

高回転域では、直列5気筒らしい個性的なビートも楽しめる。低回転域ではMTからのメカノイズやエグゾーストで、あまり聞こえてこない。

2シーターのロードスターとしては、アウディ製の2.5L 5気筒ユニットは軽い方ではない。ケーターハムやアリエルの方が、ステリングホイールの指先での操作に機敏に反応してくれる。でも、操縦性も抜群だ。

贅肉が取り除かれたスーパーカーの1種

タイヤが冷たい状態でも、グリップ力は高い。旋回途中、アンダーステア手前でわずかなアクセル操作を加えると、テールが外へと流れ出す。動きは速いが、予測可能で挙動は自然。制御もしやすい。

ただし、筆者はあまり夢中になれなかった。ステアリングがかなり重く、筋力と持久力が求められる。まとまりは良く、とても愉快なことは確かだ。

残念ながら、ドンカーブートD8 GTO-JD70は英国へやってこないらしい。少量生産のスポーツカーを愛する人が多いのに。

理由の1つは、左ハンドル車しかないということ。さらに、値段もネックだろう。税金適用前の欧州価格は、16万3600ユーロ(2045万円)もする。ケーターハムやアリエルのライバルとするなら、ちょっと考えさせられてしまう。

しかし、美しく仕上げられ、贅肉が取り除かれたスーパーカーの1種だと考えれば、高すぎることはない。過剰気味のパワーと、一体感の強いドライビングフィール。しかもエンジンは、カリスマ的なアウディ製5気筒ターボだ。

筆者はどう感じたか。ずばり、大好物だ。

ドンカーブートD8 GTO-JD70(欧州仕様)のスペック

価格:16万3600ユーロ(2045万円)
全長:3836mm
全幅:1850mm
全高:1081mm
最高速度:280km/h
0-100km/h加速:2.7秒
燃費:12.5km/L
CO2排出量:191g/km
乾燥重量:680kg
パワートレイン:直列5気筒2480ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:420ps/5850-7000rpm
最大トルク:56.9kg-m/1750-6350rpm
ギアボックス:5速マニュアル

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みんなのコメント

2件
  • オリジナル、正統性にこだわる人からは色々揶揄されるけど、これはこれで「進化系」としてアリだと思ってる。
    コブラかんかもそうで、今だにスーパーフォーマンスありきだの、アルミ叩き出しじゃないとだのって人もいるし、現代の規格に合わせてサイズアップと性能アップしつつイメージを守ってるところもある。
    ユーザーそれぞれ、受け取り手次第なので「これだけが正解」ってもんじゃないと思う。
  • >ケーターハム・セブンもロータス・セブンを起源としているが
    「ロータスからセブンの権利を正式に譲り受けたケーターハム」のセブンが【亜流】であるかのような書き方には、ちょいと引っ掛かるな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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