年末に超ビッグニュースが飛び込んだ自動車業界。とはいえ1年を通して見れば、見逃せない、あるいはいずれ大きな意味を持つニュースがたくさんあった。モーターファン編集部の見解をまとめてみよう。局長S 三栄書房の自動車メディアをとりまとめる。この年末にBMWを買い換え、それすらもリポートにする貪欲な心の持ち主。局次長W カスタムカー、モータースポーツ担当。業界を正面から見るのではなく、斜め後から眺めることで真実を見いだす。編集長K モーターファンjp編集長。4輪誌編集長も兼務。無類の車輪好き。ややフランスびいき。愛車はクルマ1台、バイク4台。技術担当編集M モーターファンテック編集長としてあらゆる技術を辛口評価。信念あるクルマ造りを求める煩型(うるさがた)。2輪担当編集A モーターファン2輪担当編集。2輪誌編集歴15年。写真にも造詣深く、編集・執筆・撮影のトリプルコンボが得意。司会:輸入車担当編集Y 4輪誌編集部にも所属。日本車から離れて久しく、輸入車も偏ったクルマばかり担当しており浦島太郎状態。
2018年10大ニュースその1「ゴーンショック」
年の瀬に考えるモーターファン的10大ニュース2018「今年の自動車業界」(後編)
局長S:特別背任罪は別問題として、この一件でわかったのはルノーと日産、今は三菱も加えて世界第2位になる規模でアライアンスを組むのは、想像以上に難しいってこと。半面そんな巨大グループで1人にそんな権力が集中していたことも驚きだけど。
局次長W:これだけ歴史ある成熟した企業が右往左往するというのは、なんとも不思議な景色だったし、ゴーンさんが逮捕されただけで、アライアンスが崩れるってことはありえるのかな?
輸入担当Y:そういう確固たる体制がもろくも崩れてしまったかっていうのは、いささか性急すぎるかなとも思います。今後の展開はまだ予断を許しませんが、まだまだ二転三転あるかもしれません。
技術担当M:逮捕当日に記者会見に行きましたけど、同業他社がほとんどおらず、それはそれで気になりましたね。
編集長K:この事件で唯一よかったのは、西川廣人CEOの読み方が「にしかわ」じゃなくて「さいかわ」だったっていうのが周知されたことかな。
2018年10大ニュースその2「トヨタのル・マンとWRC制覇」
局次長W:まずはル・マン優勝に関してですが、ライバル不在なんて言われたりもしましたけど、それでもやっぱり偉業ですよ。
編集長K:そういう背景はともかく、独走しててもやらかしたりすることだってあるわけで。
技術担当M:でも前を追いかけていると、タイヤやエンジンに負担がかかるけど、さほど脅威もなく淡々と行けるってのは楽だと思います。
局次長W:総括するなら2016年の中嶋一貴の「ノーパワー」からきちんとつながったストーリーになっていると思う。
局長S:まずは走りきることが大切。もっと言うならモータースポーツは続けることが一番大事だから。今年トヨタがそれに気づいてくれたらいいな。
代理W:2019年はトヨタが勝ち逃げ撤退する説もあったけど、どうやら続けるみたいですね。GRスーパースポーツも売らなきゃいけないし。
輸入担当Y:WRCは19年ぶりの戴冠ですけど、これもぜひ継続してほしいところです。
2018年10大ニュースその3「中国の存在感がさらに大きく」
局長S:今年は自動車メーカーの商品企画、開発における中国市場の存在感が増しているのが気になったね。新型BMW3シリーズも大きくなったのは、中国市場を意識しているからって話だからね。
輸入担当Y:えっ、そうなんですか?
編集長K:でもスズキが中国から撤退しました。フォルクスワーゲンとの提携を解消した直後にディーゼルゲートが起きるとか、あの嗅覚は侮れない。予言者も真っ青です。
局長S:どこもそうだけど、日本向けのクルマの商品企画は没になるケースが多い。日産のゴーン逮捕記者会見でもそんな話になっていた。今まではアメリカ市場向けのクルマのおこぼれを日本でも売ってもいいよ、って話だったのが、今度は中国市場向けを日本で買ってもいいよって話になるかもしれない。自動車がグローバルで販売される商品である以上、やむを得ないんだけど、中国ってわかりやすいハンドリング、大柄に立派に見えるスタイルの受けが良くて、だんだん日本人好みから外れていく感じがちょっと心配だな。そういう意味でクラウンとか、ジムニーとか日本向けのモデルってのは応援したい部分もある。
編集長K:ボルボなんかは吉利汽車が親会社だけど、日本の立体駐車場のサイズにあわせた車幅とか考えてクルマ造りしているから、わからんもんですな。
輸入担当Y:インドのタタなんかも親会社としてはいいみたいですね。意外とジャガー・ランドローバーなんかものびのびクルマ造りできていますからね。
2018年10大ニュースその4「先進安全技術への過度な期待」
技術担当M:先日、親戚の集まりがあって、そこで自動運転の話になったんですけど、あれってすぐにできるんでしょ? って聞かれてビックリしました。もうすぐにでもできると思っている。クルマを運転する責任がなくなってほしいと思っている人がこんなに多いのかと。交通の考え方として、みんなハンドルを握ったら自分の行動には責任を持つべきです。システムがなんとかしてくれるとか、そういう希望を持っている人が多い、そういう風潮が蔓延しているということに愕然としました。それならタクシーに乗れよって思うんですよね。過度な期待を最近すごく感じますね。最近の論調で安易に自動運転って言わないようにしようっていうのは歓迎したい動きです。
編集長K:自動ブレーキって言うところから改めていかないと。CMでも過度な期待を煽るモノがありましたが、メーカーがそれをやったらダメでしょう。被害軽減ブレーキは正しいですね。
輸入担当Y:もう自動ブレーキという名前が浸透しているので難しいですね。4輪メディアにいるとそういう技術や情報が身近ですけど、2輪の人はどうなんでしょうか? 社用車の追従クルコンとか使いますか?
2輪担当A:使い方がよくわからないので使わないですね。信用できないし。世の中の人で本当は運転したくない人がどのくらいいるのかな? って話はすごく気になりましたね。そういう人たちがどういう期待をしているのか。
輸入担当Y:高齢者とかはあったほうがいいでしょう。普通の人でも渋滞だったら自動運転にしてほしいでしょうね。私から見ると自動運転に対する論調は地に足付いてきたような印象があります。数年前まで、メディアの関係者でもワイン片手のほろ酔い気分でも自動運転車なら大丈夫ってコラムがあって、ずっこけたことがありました。
技術担当M:普通のひとはそんなレベルでしょう。10年後くらいにもう完全自動運転が実現しているみたいな。
局長S:そういう自動運転もさることながら、メルセデスのMBUXで「ハイ、メルセデス」でつながれるコネクテッド技術のほうがもう現実になりつつある。あの商品力はすごいと思う。今年初めてそういう転機があったんじゃないかな。最近のクルマの中で一番一般の人の受けが良かったような気がする。
編集長K:それでも普通の人は買い換えの周期は8年とか10年に1回だから、かなり普及したといえるのがこの2年くらいだとして、やはり街を走るクルマのほとんどは追従クルコンなんてないと考えるべきでしょう。
局長S:やはりわれわれが正しい情報を発信する必要があるね。
2018年10大ニュースその5「消えたバイクが復活した」
2輪担当A:SR、セローがユーロ4によって1回消えて、メーカーの壮絶な努力で復活したり、カタナとかZ900RSとか昔から名のあるバイクが復活した。そういう二つの潮流がありましたね。
局次長W:俺、20年以上前にセローに乗ってたから嬉しいな。懐かしくて買っちゃうかも。
編集長K:モーターファンが選ぶ今年のバイクとして、スーパーカブを高いという人もいますが、ユーロ4対応技術を考えれば、逆に安いくらいですよ。カブはそれでも売れるから、まだ出せた。排ガス規制についてもっと言いたいのは、大排気量のバイクのほうが対応しやすいということ。大排気量なら多少価格が上がっても、もともと高いから上がり幅も目立ちにくい。排気量が大きいからそんなに限界で走ることもないから有害物質も出にくい。
技術担当M:そうですね。原付はもともと20万円の価格が27万円に上がったり、50ccエンジンを限界まで使ったりするから、どうしても不利になりやすいです。
編集長K:結果、本末転倒になっているのは、スーパースポーツなんか1000ccクラスは対応しやすいけど、600ccクラスは価格が安いってこともあって、技術を入れにくくて、もはや絶滅しつつある。来年あたり出てきそうだけど……
2輪担当A:まあそんなこともあって、今年の3月のショーでホンダとヤマハが原付でエンジンを共用どころか、ジョグとビーノをホンダ・タクトのOEM供給で販売し始めたりもしましたが。
編集長K:カブも水冷案が出てきたけど、シンプルな空冷を守り通したのはあらためて偉いと思う。これについてはいいたいことはまだまだたくさんあるが今日はこれくらいにしておこう。
(後編に続く)
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