製作側のコンセプトとオーナーの望みがシンクロ
RCM(Radical Construction Manufacture) USA INC社(アメリカ)が自社開発したオリジナルフレームに、’70年代のカワサキKZ1000用空冷2バルブエンジンを積んだモデル、「A16」。これをACサンクチュアリーが輸入しカスタムを行うのがRCM USA A16で、全30台の限定生産のうち、005というナンバーがついたのが、この車両だ。
RCM USA A16はカタログスペック用に紹介されている「スタートエディション」を元に、各部はフルオリジナル化でき、外装も個々に製作できるため、まさに自在。搭載エンジンの元となったZ1の丸タンク仕様も、Z1-R/Mk.IIの角タンク仕様も作れれば、この車両のようにスーパースポーツのエッセンスを取り込んだオリジナル仕様も可能だ。
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「フューエルタンクは現代的な形状でワンオフとして、A16のFIに合わせて燃料ポンプを内蔵加工。テールカウルはドゥカティ・パニガーレ用を、削り出しシートレール+ワンオフステーでセットしています。ヘッドライトステーも一般的なフォークマウントでなく、メーターマウントを上から延長する形で造形しました。FI用のスロットルボディも005ではA16標準でなくPAMS製削り出しにするなど、この車両用に作った部分はとても多いんです」と同店工場長の鈴木さん。
「エンジンも空冷2バルブですが、当店コンプリートのRCMで最近多いクランクフルリビルドやクラッチのバランシングなどバランスチューンを進め、スリッパークラッチも組んでいます。パワーも求めつつ、扱いやすさを持たせる作りです」と続く。
「オーナーさんは空冷Zにも乗り、RCM・Zにも10年以上乗っている方です。その方が車検にいらして、展示されていたA16に跨がって“これだ!”と即決。空冷2バルブにずっと乗りたいけれど、より扱いやすくて乗りやすいものがいい。そこに、A16で17インチ専用ジオメトリーで作られたフレーム、Zのカスタムで残されたラストピースを換えるという私たちの考えが嵌まった感じです。すごく気に入ってもらえてます」と、同店代表の中村さんも言う。
全30台が作られたA16のうち、国内分の残りはもうあと7台。またとない1台を作るなら、要注目なのだ。
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Detailed Description 詳細説明
独特のルックスを持つヘッドライトはLEDで、メーターとライトの間を埋めるようにセットされたマウントが両脇から下に延長されて左右からライトナセルを吊る。ウインカーはLED。この視点からもタンク下にはっきりとA16オリジナルのフレームワークが見える。
FI化によってメーターは現代車から流用。ハンドルバーはハリケーン、左右マスターはブレンボレーシングでステムはA16専用品だ。
タンクはオーナーの考えをアルミで立体化したワンオフ品で、FI用燃料ポンプを内蔵。サイドカバーはカーボン製で、全体の塗装はYFデザインによる。
シートレールを削り出してパニガーレ用加工。カウルとワンオフシートをセットする。リヤフェンダーやナンバーステー等、ほかにも単品製作品は多数。
エンジンはKZ1000を元にピスタルレーシングφ72mm鍛造ピストンをバランスして組んだ1075cc仕様で、シリンダーにはPAMS ESTライナーを組む。シリンダーヘッドはMk.IIの角型に換装しシートリング入れ替え等を行う。コンロッドも上端/下端で重量を合わせクランクもフルリビルド。オイルポンプはSMBトロコイド式。クラッチハウジングはZ1000P用をバランス加工しスリッパークラッチを組んだ。
吸気/燃料供給系はA16標準仕様のFI(制御系はLINK G4X ATOM)で、この005ではPAMSビレットφ42mmスロットルボディが組まれる。
フロントフォークはオーリンズRWUのサンクチュアリーE×Mパッケージで、フロントブレーキはブレンボGP4-RXキャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドφ320mmディスク。前後ホイールはO・Zレーシングのマグネシウム鍛造、カッティーバで3.50-17/5.50-17サイズ。
スイングアームはスカルプチャーのA16専用品をブラックアルマイト加工。リヤブレーキはブレンボCNC2ピストンキャリパー+サンスター・ワークスエキスパンドφ250mmディスクの組み合わせ。排気系はナイトロレーシング・ウエルドクラフトチタン+同ヴァリアントサイレンサーだ。
リヤショックはオーリンズ・グランドツインで、ドライブチェーンは530サイズのDID。タイヤはピレリ・ディアブロスーパーコルサSP VIIIを履く。
ステップもA16専用品。フレームは中村さんが考える「空冷Zに残されたラストピース」と言えるA16用1R9Sで、KZエンジンに合わせつつ17インチタイヤの大きな入力に対応するように、ヘッドベアリングを大容量化するなど現代的構成。これをダイヤモンドコートした。
取材協力:ACサンクチュアリー(SANCTUARY本店)
レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部
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