2021年9月末に公式ホームページからいったんは姿を消したコンパクトSUVのスズキエスクード。しかし約7ヵ月後の2022年4月21日、エスクードはハイブリッド車として復活しました。群雄割拠の国産SUVですが、ハイブリッド車となったエスクードの実力はどうなのでしょう。萩原文博さんの試乗レポートをお届けしましょう。
コンパクトに見えない存在感
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ハンガリーで生産される現行型エスクードは、2015年10月に登場。全長4,175mm×全幅1,775mm×全高1,610mmという取り回しの良いボディサイズながら、ゆとりある前席空間と十分な荷室スペースを確保したパッケージング、そして欧州で徹底して走り込み実現した安定感のある足回りが特徴となっています。
現行型エスクードは歴代モデルのデザインを継承したクラムシェル(貝殻)フード、フェンダーガーニッシュを取り入れるとともに、大きな前後のバンパーで安定感を表現しています。今回登場したハイブリッド車は、ヘッドランプとアルミホイールの意匠を変更しています。
スポーティーさと上質さが同居したインテリア
インテリアはスポーティーさと上質さを追求。インパネ中央部のデザインで、力強いSUVらしさを強調し、金属調のインパネガーニッシュやエアコンルーバーでスポーティーさを表現しています。ハイブリッド車はマルチインフォメーションディスプレイにハイブリッド関連の表示を追加し、シフトノブの加飾をサテンメッキオーナメントに変更しています。
ラゲッジスペースは5人乗車時は289Lという容量を確保。さらに、6:4 分割可倒式のリアシートを倒せば、荷室長は最大1,415mmまで拡大します。
4WD+SUVボディでWLTC19.6km/Lは立派
デビュー時は1.6L直列4気筒DOHC+6速ATだったパワートレインは、2017年7月に最高出力136ps、最大トルク210Nmを発生する1.4L直列4気筒ガソリンターボエンジン+6速ATを搭載したモデルを追加。そして、2022年4月には、最高出力101ps、最大トルク132Nmを発生する1.5L直列4気筒エンジンと最高出力33.4ps、最大トルク60Nmを発生するモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載しました。組み合わされるトランスミッションはスズキ独自の6速AGS(2ペダルMT)となり、注目の燃費性能はWLTCモードで19.6km/Lという優れた燃費性能を発揮します。
駆動方式は、“オールグリップ”と呼ばれる電子制御4WDシステムを搭載。車両の走行状態をアクセルセンサー・操舵角センサー・車速センサーなど各センサーからの情報をもとに、トータルに監視。クルマの動きを予測し、車両が不安定になる前に対処してくれるので、高い走行安定性を実現しています。さらに、“オールグリップ”は路面状況に応じて、オート、スポーツ、スノー、ロックの4つのドライビングモードを設定。ドライバーの意思で自由に選ぶことが可能です。また、ロック以外の走行モードでは、スリップした前後の対角線上の2つのタイヤにブレーキをかけ、空転していないタイヤにより多くのトルクを伝達することで、スタックした時にも優れた脱出性能を発揮します。
安全装備も着実にアップデート
安全装備では、衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」を搭載。隣接車線の後方から接近する車両を検知する「ブラインドスポットモニター[車線変更サポート付]」、駐車場などで自車の後方左右から接近する車両を検知する「リヤクロストラフィックアラート」、全車速での追従機能を備えた「アダプティブクルーズコントロール[全車速追従機能付]」に加えて、デュアルセンサーブレーキサポートが認識した道路標識を表示する「標識認識機能[車両進入禁止、はみ出し通行禁止、最高速度]」を追加し、さらに利便性が向上しています。
高い静粛性とスムーズな加速性能が特徴
以前試乗した1.4Lターボエンジン+6速ATというパワートレインを搭載したエスクードの印象はパワフルさを前面に出した乗り味を強く感じました。今回1.5Lエンジンのハイブリッドシステムを搭載したエスクードは高い静粛性とスムーズな加速性能が特徴といえます。元々、現行型エスクードはハンガリーで生産されていることもあり、欧州を意識した乗り味は揺れが少なく安定感の高さが魅力でした。
そのフラットで安定感の高い乗り味のエスクードがハイブリッド化されたことで、シームレスでスムーズな加速性能と高い静粛性を獲得しています。このハイブリッドシステムは、コンパクトカーのスイフトに搭載されているシステムに比べて、ハイブリッドシステムの電圧、リチウムイオンバッテリーの容量、モーターの最大出力、トルクを変更しました。その結果、モーターのみで走行するEV走行領域が拡大しています。
モニターを見ないとエンジンが掛かっているかわからない
エンジンが掛かるときの振動やノイズも極力抑えているので、エンジンで走行しているのかそれともモーターで走行しているのか、それともエンジンとモーター両方なのかは、マルチインフォメーションディスプレイに表示されるエネルギーフローを見ないとわからないほどスムーズに切り替わります。
また、減速時にモーターで発電する回生ブレーキとフットブレーキを一緒に制御する回生協調ブレーキをスズキで初採用。ブレーキを掛けた際にも効率良く充電ができるようになり、19.6km/Lという燃費性能を実現しています。さらに、後退時のEV走行を初採用しました。燃費性能の向上に加えて、周囲への騒音を気にせず、駐車することが可能となっています。
AGSのクセは残るものの
2ペダルMTのAGSは例によって停止しようとしてブレーキを踏んで、再び加速しようとアクセルペダルを踏んだ時などに若干ギクシャク感は出ましたが、その制御のクセはずいぶんと少なくなっています。
車両本体価格が297万円のエスクード。欧州仕込みのフラットな乗り味と高い悪路走破性を兼ね備えた国産コンパクトSUVの中でもかなりの高い実力の持ち主と言えます。
※記事の内容は2022年5月時点の情報で制作しています。
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みんなのコメント
大多数のユーザーは電パがどうしたとかシャークフィンがどうしたとか、ヤリクロとの価格差といった比較から入るので、向かないでしょうね。
AGSは加速時のドンブラコ現象ばかりが叩かれて敬遠されるようですが、一方では減速制御が秀でていて他のATでは味わえない魅力があります。
ストップ&ゴーの多い日本の道路事情にフィットさせづらいことが少し残念なんですが、たとえ少数でも確実にファンを獲得していると思いますよ。