この記事をまとめると
■RMサザビーズがスイスとイタリアでオークション「ザ・カレラ・コレクション」を開催
落札予想価格「10億円」の凄いポルシェが姿を現した! ミュージアムでも見られない世界に4台しかない「550クーペ」とは
■スイスのパート1では2台の「ナナサンカレラ」が高額で落札された
■イタリアのパート2では限定生産モデルの人気を裏付けるように最高落札額は「911ターボS」だった
80台中62台がポルシェというオークションが開催された
自動車の世界でもその名前を広く知られるオークショニアのRMサザビーズは、7月中旬にスイスとイタリアで、「ザ・カレラ・コレクション」とタイトルを掲げたオークションを開催した。
このタイトルからも想像できるように、ザ・カレラ・コレクションの主役となったメイクスはもちろんポルシェ。スイスで開催されたパート1では、全53ロット中38ロットが、続いてイタリアで開催されたパート2では、全27ロット中24ロットがポルシェで占められ、しかもそのすべてがノー・リザーブ、すなわち最低落札価格の設定がないというスリリングなオークションであったため、その開催には早くからポルシェファンからの熱い視線が注がれていた。
今回はそのなかから、何台かの注目モデルを紹介していこう。
まずはトータルで、1045万75スイスフラン(当日のレートで約16億8455万円)を売り上げた、スイスのザ・カレラ・コレクションの出品車カタログを見ていて、まず興味を魅かれたのはポルシェのファンにとっても究極的なコレクターズアイテムともいえる1973年式の911カレラRS 2.7、すなわち「ナナサンカレラ」の愛称で親しまれる、FIAグループ4のためのホモロゲーションモデルが2台も出品されていたことだった。
1972年にFIAマニファクチャラーズ選手権のレギュレーションが変更され、1973年からは年間の生産台数が500台以上、かつ搭載エンジンの排気量が3リッター以下と決定したことを受け、ポルシェは新たに911をベースにそのホモロゲーションモデルを製作することを決断。正確には2687ccの排気量を持つ210馬力仕様の水平対向6気筒エンジンの開発に成功。同時にボディの軽量化や、さらなるエアロダイナミクスの向上、サスペンションの改良にも取り組み、911カレラRS 2.7は無事に1972年のパリ・サロンで初公開された。
その反響はポルシェの予想をはるかに上まわるもので、最終的にポルシェは17台を製作したコンペティションモデルのRSHなどを含め、1580台ものカレラRS 2.7を生産するが、ロードカーとして販売されたのはこのうち1308台である。
今回ザ・カレラ・コレクションに姿を現した2台は、ロードモデルとしての装備を充実させたツーリング仕様のRSL(コードナンバーM472)。いずれもスポーツカー・コレクションに加えるには最高の一台といえる。
ただし、実際の落札価格はやはりその人気を反映したものとなり、鮮やかなオレンジのモデルは42万1250スイスフラン(約6790万円)、一方ライトイエローのモデルは、(約7740万円)で落札されている。ナナサン・カレラの人気は不動だ。
ストーリーのある限定ポルシェはやはり大人気
そのほか、クラッシックな1963年式の「356Bカレラ2」、1955年式356 1500スピードスター」といったモデルも、各々40万4375スイスフラン、36万5000スイスフラン(約6520万円、1884万円)という価格で落札された。
さらに、限定生産された現代のポルシェの需要は依然として強く、たとえば2016年式の「911R」などには、32万5625スイスフラン(約5250万円)の値がついた。
ちなみにトータルで418万7850ユーロ(約6億6490万円)を売り上げた、イタリアのミラノ中心部で開催された、2回目の「ザ・カレラ・コレクション」でもその傾向は明らかで、最高落札価格を記録したのは1997年式の「911ターボS」と、2010年式の「911 GT2 RS」の2台。
その価格はいずれも42万1250ユーロ(約6530万円)と偶然にも同一だったが、ストーリーが面白いのは前者のほう。このターボSはポルシェが993世代のターボSをホモロゲートするために製作したプリプロダクションモデルで、その993世代の911ターボモデルがいかに大きな技術的な進化を果たして誕生したのかは良く知られるところ。その高性能版たるターボSは、336台のみが生産されたが、この出品車はその生産開始の6カ月前に完成。さまざまなプロモーション活動などに使用されたあと、ポルシェに保管されていたのである。
サテン仕上げのアルミニウム製ドアシルには、テスト・ドライバーであったヴァルター・ロールのサインも残されている。もちろん現在のコンディションも抜群な一台だけに、ここまで高価な落札価格が実現したというわけなのだろう。
出品車のヒストリーを知ると、オークションはますます面白くなる。
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