現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「テスラに追いつき、そして追い越す!」 AIで将棋の名人を破った天才がクルマの自動運転に挑む!! TURING代表、山本一成CEOインタビュー(前編)

ここから本文です

「テスラに追いつき、そして追い越す!」 AIで将棋の名人を破った天才がクルマの自動運転に挑む!! TURING代表、山本一成CEOインタビュー(前編)

掲載 2
「テスラに追いつき、そして追い越す!」 AIで将棋の名人を破った天才がクルマの自動運転に挑む!! TURING代表、山本一成CEOインタビュー(前編)

 今、日本国内でにわかに注目を浴びつつあるスタートアップがある。プロ棋士の頂点である名人を破った将棋AIの「Ponanza」(ポナンザ)を開発した山本一成代表兼CEO率いる「TURING」だ。同社は2025年をメドに自動運転レベル5を目指しているのだという。

 まだ、昨年12月に立ち上がったばかりの同社がターゲットとしているのは、かのイーロン・マスク率いるテスラ。将棋のプログラムで頂点に立った山本氏がクルマの世界に身を投じ、自動運転にチャレンジする理由とは何か? 長年、自動運転の取材を続けている国沢光宏氏が独自の視点で直撃した! 

「テスラに追いつき、そして追い越す!」 AIで将棋の名人を破った天才がクルマの自動運転に挑む!! TURING代表、山本一成CEOインタビュー(前編)

インタビュアー/国沢光宏、写真/平野 学

■「ピュアAI」の人間が自動運転に挑戦するのは敷居が高かった

かのテスラを超える野望を持つ若き天才、山本一成CEO(左)率いるTURINGが見ている未来とはいったい何か? 国沢光宏氏(右)が直撃した!

国沢光宏(以下、国沢)/山本さんがそもそも自動運転のクルマをやってみようと思ったきっかけってどういうことだったのでしょうか?

山本一成(以下、山本)/私はそれまでずっと将棋のAIのプログラムをやっており、何とか人間より強くすることができたため、次の大きなチャレンジをしたいと思ってました。そんななか、クルマの自動運転に着目したんです。AI技術者にとって制御が非常に難しい自動運転は面白い課題なんです。

国沢/AIを手がけている人たちのなかには特定のグループがあり、社会があるワケですよね? そのなかで将棋やチェス、いろいろなものがあってそのなかでもクルマはチャレンジングで面白いということでしょうか?

山本/もちろんです。クルマの自動運転はかなり昔からあって、ごく最近まではできなかったんですが、そういうのが急速に今、もちろんまだ人には及ばないんですけど、やっと少しは形になってきたと考えています。

国沢/そうかもしれません。自動運転のハードルはひと昔前からすればずっとハードルが低くなりました。例えば、ステアリング系統とかブレーキは電動や油圧制御になったため、プログラムだけで稼働させられます。もうひとつは、センサーやコンピュータが進化し、画像処理なども大幅に進化してます。そういう意味ではクルマのハードも自動運転ができるような素地ができあがったというのは間違いないと思います。

山本/ただ、クルマのソフトウェアは複雑で、簡単に電動パワステをコントロールすることはできません。そういう意味では私みたいなソフトウェアだけ、いわゆる「ピュアAI」の人間がこういう分野に参加するっていうことは、すごく敷居が高かったです。

国沢/なるほど。例えば自動車メーカーと一緒にやれば、まずそこのハードルがなくなるわけじゃないですか?

山本/う~ん、なぜ一緒にやる意味があるのでしょう?

国沢/自動車メーカーからすれば、クルマの制御を乗っ取られたら危険です。走行中に急ハンドル操作すると大事故になりますから。だから制御系に入られないようプロテクトします。メーカーと一緒に開発することで、そこのハードルはなくせます。

山本/それは確かに。

国沢/今回、見せていただいたエスティマは3世代くらい前のCAN(クルマの制御をコントロールするシステム)です。これから新しい時代になると、もっと複雑になってきて、簡単にクルマを制御することができなくなってくると思うんですね。

■クルマを自前で作り、テスラを凌駕する!

山本CEOはあくまで「自動運転レベル5を達成できるクルマを我々自身の手で作る」と、その熱意を語っていた

山本/メーカーと組むのではなく、我々はクルマそのものを作りたいと思っています。

国沢/独自企業であるテスラのようになると?

山本/そうですね。なりたいと思っています。アメリカではGoogle、Facebook、Amazon、Microsoftなど無数のスタートアップ(起業及び新規事業)ができてとんでもない企業価値になっていますよね。そういうチャレンジをする人って日本にももっといてもいいんじゃないかと思っているんです。

国沢/なるほど。

山本/テスラだって最初は「何なの、この会社」って皆から思われてました。今や新しい産業テクノロジーって、世界でアメリカと中国ばかりで生まれてます。日本人の頭が悪いわけじゃない。やらなきゃ、って最初に思ったんですね。

国沢/100%私も同意します。そのとおりだと。日本はやっぱりそういうところが弱い。新しいことをやろうっていう人もそんなに出てこない。周りから押さえつけられちゃうし。ただ、やっぱり最短距離を進むための方法論は必要かな、と思います。話を自動運転に戻しますが、今の自動運転の現状をどういうふうに思っていますか?

■優れたセンサーを持つ人間をAIは超えることができるのか?

TURINGが開発中のテスト車両でのデータ取りの様子。プレステのコントローラーでハンドルを操作する

山本/まず、人間ってクルマの運転がうまいんだなって改めて思います(笑)。実際に自動運転を作るっていう視点で考えてみると、人間というものは本当にいろんな判断をして運転をしてるんだって気づかされました。限定された区間を走るっていうだけだったら、センサーをいっぱい積んでしまえばできると思うんです。けど、何が難しいかというと「判断」なんですね。例えば、走行中に路駐している車両があって、これが本当に路駐かどうかって、人間は軽やかに判断してますけど、AIだと難しい。

国沢/そうですね。

山本/人間が今まで見落としてきた、あるいはとっても上手いドライバーしか理解できなかったことまで汲み取るようなレベルじゃないと絶対いけないと思うんです。そういう高度な判断を作らなきゃいけないっていう意味では非常にまだ拙いレベルでしかないです。意味不明なことが起こった時にどう対応するか、あるいは危険を事前に遠巻きに逃げるっていうことが必要です。

国沢/人間と同じくらい高度な判断って今のコンピュータの解析性能とか容量とかで対応できると思っていますか?

山本/この瞬間は届かないと思ってます。私の将棋のAIプログラムは今から12年前に始め、10年ほどやりましたが、最初はまったく駄目でしたね。AIの機会学習とかやってもぜんぜん技術として成立してなかったし、コンピュータも今と比べてすごく貧弱でした。でも、結局そういったAIコミュニティのパワーアップとか、あるいはハードウェアの進歩とともに大きく変わって人間の将棋の名人をも負かせるようになりました。自動運転に関しても5~10年あればたどり着けないものではないと思っています。

国沢/たぶん将棋の世界では、いきなり殴りかかってきたり、将棋盤をひっくり返して逃げたりする人って、考える必要がないと思うんですね。でも、クルマの場合は当て逃げしてきたり、目の前に飛び出してきたり、女の子がひとりで乗っていればクルマは止まるだろうからって止めてからガラスを割って連れ出す輩も出てくるわけじゃないですか。そういうレアケースをやっていかないと、自動運転ってダメだと思うんですよね。先日も自動車メーカーの開発者と話をしていて、死亡事故って1台のクルマが2億7000kmくらい走らないと起きないそうです。それを例えば100件集めてシミュレーションすることもできると思うけど、やっぱりパターンにはまらない事故とって起きるんですよね。そういうものに対して人間はいろんな対応をします。人間よりも優れたセンサーって何かありそうな雰囲気ですか?

山本/例えば、人間の目ってよくできてるんですけど、カメラなら可視光線だけでなく赤外線も取れます。人間には難しいような情報だって入ってくる。問題は目がどれだけよくても不明な行動をしてクルマに対してどうすればいいかっていうことは、センサーは答えを出してくれないです。

■「これまでの常識を超えたい」

「カメラのみでヒトができることすべてをAIが肩代わりするのは難しいというのがクルマ界の常識です」と指摘する国沢氏(右)に対し、山本CEO(左)は「わかっていますが、我々はその常識と戦っているんです」と応戦

国沢/山本さんはカメラ単独使用で行くつもりのようですが、人間って例えば目の前に何か汚れがついたり、物が飛んできたりしたら、とりあえず顔の位置を変える。カメラって固定だから前が曇ったらもう見えない。そういう時の対策をどうしますか、という問題があります。自動車メーカーが何をやってるかというと、カメラだけではなく、レーダーを使ったり、LiDERを使ったりして、いろいろなものを副次的に見ているんですね。カメラだけで人間のこと全部をAIができるかっていうと、けっこう難しいでしょうねっていうのがこの業界の常識です。

山本/わかっています。ただ、我々はこれまでの常識と戦わなきゃいけない。だから「そうですか」っていうふうには言えないんです。

国沢/例えば、カメラが見えなくなったとかそういう時ってどうしますか?

山本/カメラが見えなくなってしまったら、その時はもう諦めるしかないんじゃないでしょうか。例えば、鳥の糞とかいきなりカメラについてきた時とかですよね。正面カメラを三つバラバラの場所に置けば安全かもしれないですけど、フロントガラスが割れてしまったとかあらゆることが起こるので、そういう意味では諦めるしかないですね。

国沢/それが高速道路を走行中で片側3車線の真ん中で起きたらどうなりますか?

山本/脇に寄るしかないんじゃないんでしょうか。サイドビューカメラとか360度カメラがあるから、1個潰れても全滅ということにはならないと思います。ただ、大きな前提上の話として事故ゼロにはできない、それはもう構造上できないんです。この世界で、例えば地震が起きるとか橋が落ちるとか、対向車線からタイヤが飛び出してきた場合にクルマがかわせるとはかぎりませんから。

※「後編」に続きます。

※インタビュー後編はこちら(https://bestcarweb.jp/news/440947)

こんな記事も読まれています

やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
やっぱたまらんなV型エンジン!! [スカイラインNISMO]とレクサス[IS500]の[パンチ力]にひれ伏した件
ベストカーWeb
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
【角田裕毅F1第22戦展望】ファクトリーと現場の連携で活きたレッドブル製リヤサスペンション。改善の継続が7番手に繋がる
AUTOSPORT web
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
エバンスとの実質的な一騎打ちもタナクはトップ譲らず。ヌービルは7番手に挽回【ラリージャパン デイ3】
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
メルセデス・ベンツCLE 詳細データテスト 快適で上質な走りが身上 動力性能と燃費効率はほどほど
AUTOCAR JAPAN
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
WRCラリージャパンSS12恵那での車両進入事案について実行委員会が声明。被害届を提出へ
AUTOSPORT web
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
2024年も記録保持中!? カローラ ロードスター…… ギネスブックに登録された「日本のクルマの世界一」【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
80年代バブル期に日本で人気だったMG「ミジェット」に試乗! 英国ライトウェイトスポーツの代表格はいまもビギナーにオススメです【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
【正式結果】2024年F1第22戦ラスベガスGP予選
AUTOSPORT web
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
角田裕毅が予選7番手「大満足。アップグレードへの理解が改善につながった」努力が報われたとチームも喜ぶ/F1第22戦
AUTOSPORT web
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
クラッシュで50Gを超える衝撃を受けたコラピント。決勝レースの出場可否は再検査後に判断へ/F1第22戦
AUTOSPORT web
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
勝田貴元、木にスピンヒットも間一髪「メンタル的に難しい一日。明日はタイトル獲得を最優先」/ラリージャパン デイ3
AUTOSPORT web
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
胸を打つ「上質な走り」 アウディQ6 e-トロン・クワトロへ試乗 優秀なシャシーを味わえる388ps!
AUTOCAR JAPAN
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
オーテック&ニスモ車が大集合!「AOG湘南里帰りミーティング2024」で見た「超レア車5台」と「中古車で狙いたいクルマ5台」を紹介します
Auto Messe Web
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 後編
AUTOCAR JAPAN
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
ラリージャパン3日目、SS12がキャンセル…一般車両が検問を突破しコース内へ進入、実行委員会は理解呼びかけると共に被害届を提出予定
レスポンス
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
【F1第22戦予選の要点】苦戦予想を覆すアタック。ラッセルとガスリーが見せた2つのサプライズ
AUTOSPORT web
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 前編
なぜ潰れた? 名車と振り返る「消滅した自動車メーカー」 32選 前編
AUTOCAR JAPAN
NASCARの2024シーズン終了! 日本からスポット参戦した「Hattori Racing Enterprises」の今季の結果は…?
NASCARの2024シーズン終了! 日本からスポット参戦した「Hattori Racing Enterprises」の今季の結果は…?
Auto Messe Web

みんなのコメント

2件
  • 日本の某メーカーとは組まないほうがいいよ、知的財産 名誉 権利 全て身ぐるみ剥がされたうえ このメーカーのお手柄にw さらに報酬や設備投資を庶民から捻出し合法的横領を完成させるためのロビー要員に廻されますですw。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

327.1391.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

15.8337.0万円

中古車を検索
エスティマの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

327.1391.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

15.8337.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村