599psと81.4kg-mを生み出すツインターボV8
text:Simon Davis(サイモン・デイビス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
大きく膨らんだフェンダーラインに、シャープで鋭い目つき。アグレッシブなデザインが、秘めた性能を示唆するようだ。
ライバルのハイパフォーマンス・サルーンとは、一味違う印象を与えるRS7スポーツバック。599psと81.4kg-mを生み出す、ツインターボV8エンジンを搭載した高性能モデルであることには違いない。0-100km/h加速は、3.6秒でこなす。
滑らかなドイツのアウトバーンのために生まれた、グランドツアラー。英国の継ぎ接ぎだらけの路面でも、そのイメージは崩さない。
アウディRS7を、エッジの効いた現代のスーパーサルーンと差別化させるのが、日常の足としても扱いやすいこと。確実な走行性能と、普段遣いの親しみやすさを兼ね備えている。目的地までの、没入するようなスリリングなドライビング体験と同じくらいの水準で。
それは、以前からアウディ・スポーツが掲げるテーマでもある。自車の前方がガラ空きなことはほぼない、今どきの交通事情。RS7のアプローチは、多くのドライバーが歓迎するものに違いない。
現実世界のドライバビリティを高めるため、最新のRS7スポーツバックには、少なくない改良が施された。RS7としては初めて、電圧48Vによるハイブリッド・システムを採用。巡航走行時には4気筒を休止させるシステムも搭載し、燃費を改善させ、CO2の排出量を削減している。
長いホイールベースを実質的に短くする、後輪操舵システムも備える。全長5.0mもあるアルミニウムと鉄の車体を、狭い駐車場へも簡単に導いてくれる。
高級エグゼクティブ・サルーンのように
先代同様、RS7にはサスペンションの選択肢が2つある。前後ともにマルチリンク式で、標準では車高調整が可能なエアサス。試乗車には、オプションのスチールコイルにアダプティブ・ダンパーが組み合わされていた。
ホイールもオプションとなる22インチ。タイヤはとても肉の薄い、285/30サイズのピレリPゼロ。オンロードでの乗り心地に、不安を抱くサイズであることは確かだ。
しかし、心配不要。燃費が8.0km/L前後に留まることを除けば、RS7は日々の移動手段として、高級なエグゼクティブ・サルーンのように運転できる。段差には注意が必要だけれど。
引き締められたサスペンションと大径ホイールは、路面の凹凸に伴う振動を吸収するのは得意分野ではない。それでも、RS7スポーツバックは快適だ。
アダプティブ・ダンパーをコンフォート・モードにすれば、高速道路での長距離ドライブも、至って平穏な時間にしてくれる。初期状態のままスキルが試されるような一般道を攻めても、巧みな姿勢制御と最小限の振動で、滑らかに駆け抜けてくれる。
ダンパーを最も硬いダイナミック・モードへ切り替えれば、乗り心地は落ち着かなくなる。路面状態がそのまま車内へ届くかのような上下の揺れは、このモードの選択を思い留ませるほど。
カスタマイズ可能な、RS1とRS2というドライブモードも付いている。ダンパーやエンジン、ステアリング、デフとスタビリティコントロールの設定を、ドライバー好みに設定できる。厳しくすることも、穏やかにすることも、思いのままだ。
絶大なパフォーマンスと鋭利なレスポンス
それでも、ダイナミック・モードはめったに選ばないだろう。仮にハードな設定で決め込んでも、フルアタックの気分で運転したいと思わせるクルマでもない。
その理由はいくつかある。まず、599psのV8エンジン。
疑う余地がないほど強力で、8速ATと四輪駆動システムのクワトロと、良いパートナーを組んでいる。どんな状況でも、うろたえない、一貫して爆発的な直線加速を披露する。
絶大なパフォーマンスと、鋭利なほどのアクセルレスポンス。駆動系統は、圧倒的な性能を誇る。だがRS7の場合、それを誇示するような雰囲気が薄い。
試乗車には1450ポンド(19万円)のRSスポーツ・エグゾーストが装備され、排気音の主張は大きい。それでもV8エンジンの唸りは、遠くの深いところに隠されている。時折、軽く叫ぶくらいだ。
ステアリングも同様。RS7の後輪操舵は、知的に統合されている。車重2.1tもある大きなRS7のボディを、機敏で確実なマナーで操れる。一方で、切り初めの即時的な反応は備えていない。
BMW M5コンペティションやメルセデスAMG E63 Sなどに期待する、瞬発的な回頭性ではない。むしろ比較的ステアリングのレシオは大人しい。
それでも、アルカンターラで巻かれたステアリングホイールを少し積極的に回せば、コーナーへ勢いよく切れ込んでいく。望んだとおりに。いつものアウディらしく、手のひらに伝わるフィードバックは、ほとんどないけれど。
トラクションは凄まじい。車重やボディサイズを考えれば、アンダーステアも抑え込んである。コーナーの途中にある不規則な路面の乱れは、フィルタリングされたステアリングのおかげで、意に介せずに済む。
見逃せない万能主義的グランドツアラー
アウディRS7スポーツバックが与えてくれる信頼感は厚い。でも、大きなボディは隠せない。英国の一般道では、車線の幅を塞ぐほど。多少道幅に余裕があっても、視界の悪いコーナーでは慎重に鼻先を向けたくなる。
大きなボディが、RS7の足を引っ張っている。全幅が広すぎ、スリリングな運転を楽しめる郊外の道でも、無心になって運転はできない。
そのかわり、広々とした流れの良い国道や高速道路に出れば、本来の姿を取り戻せる。この環境なら圧倒的な速さを秘めた、グランドツアラーとしての魅力が一気に高まる。
手のひらや耳へ伝わるドラマ性は、さほど濃くはない。しかし、エネルギーに溢れる加速と確かな足さばき、驚くほど快適な乗り心地は、それを上回る説得力がある。
車内も素晴らしくラグジュアリー。長時間を過ごしたくなる。リアシートの広さも充分で、荷室容量は535Lが確保されている。
英国でのアウディRS7スポーツバックの価格は、10万4990ポンド(1385万円)から。BMW M5コンペティションやメルセデスAMG E63 Sと並ぶ値段だ。
走りを素直に楽しみたいドライバーは、BMWやAMGを選ぶかもしれない。それでも、万能主義的なアウディRS7スポーツバックの訴求力は、見逃せないほどに秀でている。
アウディRS7スポーツバック・カーボン・ブラック(英国仕様)のスペック
価格:10万4990ポンド(1385万円)
全長:4980mm
全幅:1911mm
全高:1408mm
最高速度:280km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:7.9-8.1km/L
CO2排出量:280-286g/km
乾燥重量:2065kg
パワートレイン:V型8気筒3993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:599ps/6000-6250rpm
最大トルク:81.4kg-m/2050-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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