6月18日、宮城県のスポーツランドSUGOで全日本スーパーフォーミュラ選手権2023年第5戦が行われ、宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)が今季2勝目を挙げ、ランキングトップに立った。
決勝後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、“魔物が棲む”と言われるSUGO戦に挑んだドライバーたちの声を、2回に分けてお届けする。
宮田莉朋「レインライト点滅は嘘だと思った」野尻智紀「さすがに今日の宮田選手の速さでは」【SF第5戦決勝会見】
■小林可夢偉(Kids com Team KCMG) 決勝6位
予選Q1でのベストラップ抹消により14番手からスタートを迎えた可夢偉は、3戦ぶりのポイント獲得を果たした。
「ペースも内容的にも悪くはなかったのですけど、本来はもうちょっと予選で前に行けたパフォーマンスはあったなか、残念ながら14番手からのスタートとなったので、追い上げたもののあの順位(6位)がベストだったなと思いますね」と可夢偉。
「ピットストップで少しタイムロスしたり、アウトラップが良くなかったりと小さなロスがあったのですけど、それがなかったら3位の可能性は充分あったなとは思います。ただ、全体的な内容としてクルマのペースがいいというのはポジティブかなと思っています」
そんな可夢偉は27周にピットイン。レース後半に差し掛かったタイミングでのピットインは当初からの作戦ではなかったとも口にする。
「本当は早く入ろうと思ったのですけど、乗っていたら『意外にいけるな』と思ったので引っ張る作戦に。オフセットすることによってタイヤのマイレージ(でアドバンテージが)ができ、抜くチャンスは増えるので少し引っ張らせてもらって、タイヤがきついなと感じた頃に入ったという感じです」
そんな可夢偉は燃料ポンプのトラブルにより土曜フリー走行では6周しか走行できず、決勝へ向けたセットアップを作る時間は土曜日にはなかった。そのため、可夢偉とチームは日曜フリー走行と8分間のウォームアップというわずかな時間で51周のレースのセットアップを作ることとなった。
「今日の朝(日曜フリー走行)も悪くはなかったのですけど、『これじゃ戦えない』と思ったので、そこからさらに(8分間のウォームアップの前に)結構変えて。結果的にそれがいい方向には行ったのかなと思います。(ウォームアップの際に)もう乗った瞬間に全然いいとと思ったので、(国本)雄資にもコピーさせました」
それほどの手応えのあったセットアップを手にしていただけに、3戦ぶりの入賞も可夢偉は悔しさを口にする。
「作戦は別に間違ってはないと思います。ただ、ピットストップのロスとかで追いつくまでに時間かかってしまった。毎回僕の前にクルマがピットアウトしてくるので、その度に1秒、1秒、1秒とロスしていって、それだけで通算で4秒とかロスしたと思います。でも、正直そういう小さなロスがある中で、ここまで追い上げられたというのはポジティブに捉えてもいいのかなと思います」
決勝レースペースも悪くなかっただけに、このセットアップが今後のKCMGの復調に繋がることに期待したいが、可夢偉は「そうとも限らないですね」と口にする。
「結構サーキットによってコロっと変わるので。なので、あんまりそういう意識はせず、サーキットそれぞれで合うセットアップをしっかり理解して、見つけていかないといけないと思っています」
■国本雄資(Kids com Team KCMG) 決勝9位
11番手からスタートを迎えた国本は、手応えを感じていたチームメイトの可夢偉とは対照的に、レースペースに悩まされる一戦となった。
「決勝のペースは苦しかったです。スタートしてすぐにSCが入りましたが、ペースが悪かったら10周目にピットに入ろうとチームと決めていました」と国本は明かす。
「そうじゃないと、どんどんと傷口を広げるだけなので。もうぱっと走った感じでちょっと周りよりペースが悪いなというのはあったので、10周目にピットに入りました」
しかし、ミニマムでピットを済ませると、その後は続々と上位スタート勢をアンダーカットし、42周時点ではチームメイトの可夢偉を先行する5番手につけていた。
「作戦的にはすごく良かったです。うまくアンダーカットして、誰もいないところで走ることができたので。ただ、そこでのペースが4位に入った大嶋(和也)選手よりも少しずつ悪くて……。あそこで大嶋選手について行けたらよかったのですけど、それができなかったことが僕としてはすごく悔しいです」
徐々にタイヤが厳しくなるなか、国本は43周目に可夢偉、47周目にリアム・ローソン、50周目に坪井翔、山下健太にかわされ9番手に後退するに至った。
「最後、長く走ている間はクリーンエアだったのですけど、そこでタイヤをすごく使ってしまい……終盤に追いつかれてきてからはもう勝負はできなかったです」と国本。
「自分もミスしてしまったり、抜かれてしまったり、反省の多いレースだったかなと思います」
■平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 決勝11位
5番グリッドからスタートした平川だったが、スタートではアンチストールシステムが働き失速。一気に11番手まで後退した。
これまでも悪くないスタートを切っていた平川だったこともあり、少々珍しい光景だったのだが、朝のフリー走行から不調は出ていたという。
「今日の朝からトラブルが出ていて、それを直そうとはしたんですけど、直らなかった感じでした。それで勝負権がなくなった感じでした」と平川。
「作戦も、正直良くなかったです。ポジション的にも、それ(引っ張る作戦)しかなくなってしまいました。……こういう時もありますね」と、いつも以上に悔しさを滲ませている様子が伺えた。
結果、11位でフィニッシュし、ノーポイントで終わってしまった平川。宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)をはじめ、ライバルたちが順調に加点したことで、差が広がってしまったのだが、当の本人は「チャンピオンは無理だと思います」とキッパリ。
「今、そういうレベルにいないし、今日のレースを見ても、そういう次元にいないです。ちゃんとクルマを走れる次元に戻すのが一番なのかなと思います。ラッキーなことに来週テストがあるので、そこでしっかりと解決をしてきたいと思います」と、チャンピオン争いの前に、改善すべき目の前に課題に集中しようとしていた。
■ジュリアーノ・アレジ(VANTELIN TEAM TOM’S) 決勝リタイア
予選16番手からスタートしたアレジだが、1周目に関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)と接触。その時のダメージが大きく、レースはリタイアとなった。
「スタートで何とか(小林)可夢偉選手を抜こうとしたんですけど、イン側にいて(スペース的にスピードを保つのが難しくて)彼の後ろになりました」とアレジ。関口との接触については、公式映像でも鮮明に捉えられていなかったのだが、その時の状況も説明してくれた。
「シケイン(S字)のところでは、山本(尚貴)選手が真ん中にいて、僕がアウト側にいました。彼について行ってコーナーに入るつもりだったけど、僕がリフトオフしたら、後ろの関口選手に抜かれる思ったから、ポジションキープをしようと思ったら、山本選手と並んでいる中で、スペースがなくなってしまって、僕の右側のタイヤが芝生にはみ出てしまってスピンしてしまいました。残念」
■関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 決勝リタイア
アレジと接触し、こちらもリタイアとなってしまった関口。アレジがコースからはみ出てスピン状態になった真後ろにいたこともあり、避けられない接触だったという。
「ちょうど2台(山本とアレジ)の後ろにいて、(アレジの右側のタイヤがグリーンゾーンに)落ちて、僕の目の前にきて、そのまま道連れになった感じで、気づいたら芝生にいました」と関口。
その後、フロントウイングを引き摺りながらもピットに帰還。新しいウイングに交換してレース続行を試みたが、「接触の影響なのか、ブレーキオイルが漏れていたみたいで、ブレーキが効かない状況になっていました。(走行続行は)危ないので、止めました」とのことで、再びピットイン。悔しいリタイアとなった。
今シーズンは開幕戦から不運続きで、5戦を終えてポイントが獲れていない関口。「5レースを終えてノーポイントは初めてです」と本人も信じられないという様子。「今週末も流れが悪くて、トラブルで始まって、もらい事故で終わりました。こういうことも稀にあるので、今回で(悪い流れは)終わりにして、来週の富士テストで流れを変えたいなと思います」と締め括った。
なお、ミックスゾーン取材中に、アレジが登場。「ごめん。避けられなかった」と関口が言ったのに対し「僕も行くところがなかった」とアレジも返答。そこからふたりで状況説明をしながら、最後は「また頑張ろう」と笑顔で握手をしていた。
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笹原にかえろ