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“一方通行”だったウイナーの無線。暑さで分かれたタイヤ選択とその結末etc.【WEC富士決勝日Topics2】

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“一方通行”だったウイナーの無線。暑さで分かれたタイヤ選択とその結末etc.【WEC富士決勝日Topics2】

 9月11日、富士スピードウェイで行われたWEC世界耐久選手権第5戦富士6時間レースは、トヨタGAZOO Racingの8号車GR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)の勝利により、幕を閉じた。

 これでトヨタは富士で開催されたWEC9レース中、8戦で勝利を納めたことになる。また、トヨタが地元・富士でワン・ツーを飾るのは、4回連続のことである。

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■前回の“フル・グリーン”レースも富士
 この勝利により、8号車の3人はアルピーヌ・エルフ・チームのニコラ・ラピエール/マシュー・バキシビエール/アンドレ・ネグラオ組36号車に、121ポイントと同点で並ぶことになった。

 なお、ともに今季2勝を挙げているものの、2位の回数で上回るトヨタ8号車の3人が、ランキング上は首位という扱いになっている。

 今回のレースはセーフティカーやフルコースイエローによる競技中断なしに行われた。これは、2016年の富士戦以来の“フルグリーン”のWEC戦となった。2016年の富士では、トヨタがアウディを1.4秒差で下している。2016年の優勝車両の周回数は244周だったが、今回の優勝車両は232周と、同じグリーン下でも12周の差がついた。

■「トヨタと戦うペースはなかった」アルピーヌ
 トヨタのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、トヨタと他のハイパーカーとのペース差は、最終的についた2ラップのマージンよりも近いと感じたという。

「我々のベストカーである8号車と、ベストのプジョー、アルピーヌを比較すると、純粋な性能差はコンマ2~3秒だ」とバセロン。

「最大の違いは、タイヤマネージメントだ。最初のスティントでは、我々はそれほど速くはない。だが、ダブル・スティントに入ると、かなり速かった」

 バセロンはまた、効果的なトラフィック・マネジメントと迅速なピットストップも、トヨタのワン・ツーが達成された要因のひとつであると述べている。

 アルピーヌのチーム代表であるフィリップ・シノーは、FCYとセーフティカーがなかったため、「戦略的に差をつけるのは難しかった」と振り返っている。

「コース上でのアクションがなかったことによるフラストレーションはあったものの、このレースは我々が予期した通りのものだった。トヨタのホームコースで、トヨタに挑戦するのは難しいと思っていたんだ」

 ドライバーのバキシビエールも、「総合的にみて、(トヨタと)戦うのは難しかった」と語った。

「確かに、彼らと戦うためのペースはなかった。このレースには満足していないが、バーレーンに同ポイントで向かえるのは素晴らしいことだ」

■リタイアはわずかに1台。4脱でペナルティの4台
 今回の6時間レースはとてもクリーンなレースとなり、出走した36台中、リタイアは1台のみだった。

 LMGTEアマクラスの77号車デンプシー・プロトン・レーシングのポルシェ911 RSR-19は、セバスチャン・プリオールのドライブ中にドライブシャフトに不具合を起こしたため、リタイアとなった。

 プジョー・トタルエナジーズの94号車プジョー9X8は、累積デプロイエネルギーの許容量を超えたとして、60秒間のストップ&ホールドペナルティを科せられた。

 プジョーには、富士でのスティントの最大エネルギー許容量として909MJが与えられていた。エネルギー消費量は、ドライブシャフトのトルクセンサーからの情報をもとに計算されている。

 91号車ポルシェ911 RSR-19、64号車シボレーコルベットC8.R、GTE-Amクラスのアイアン・リンクスとスピリット・オブ・レースのフェラーリ488 GTE Evoの4台には、トラックリミット違反によるドライブスルーペナルティが科せられている。

■壊れた無線から入ってきた情報
 LMP2クラスで優勝を遂げたWRT31号車オレカのロビン・フラインスは、レース後半には無線が故障し、一方通行の通信しかできなかったことを明らかにした。

 フラインスはエンジニアの声を聞くことができたが、エンジニアはドライバーの声を聞くことができなかったという。

 WRTはフラインスに司令や重要な情報が伝わっているものと、信頼していた。

「38号車(JOTA)が、ピットをかなり遅らせているという情報は常に入ってきていたよ」とフラインス。

「レースが始まってから、彼らは1スティントを延ばそうとしてきたんだ。だから(JOTAが最終スプラッシュした後の)最後のラップでは、彼らの前に確実に出ようと僕は激しくプッシュしていたんだ」

 LMP2クラスの優勝は逃したものの、JOTAドライバーのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ/ウィル・スティーブンス/ロベルト・ゴンザレスは、28ポイントの大きなチャンピオンシップリードを築いて富士を後にした。

 もし、バーレーン8時間レースでランキング2位のユナイテッド・オートスポーツUSA23号車が最大得点を獲得しても、JOTAのクルーは6位以上に入ればタイトルを獲得することができる。

■ユナイテッドASは暑さに弱い?
 ニック・タンディは、富士はコルベット・レーシングにとって「最も競争力のない」レースだったと振り返った。

「金曜日の朝から、本当に苦戦しているんだ。このコースの特性と路面が、僕らのクルマに合っていないんだと思う」

 また、フィル・ハンソンによれば、ユナイテッド・オートスポーツは高温のコンディションでグッドイヤー・タイヤの性能を引き出すのに苦労していていたという。LMP2クラスに2台をエントリーさせる同チームは、クラス5位と7位に終わった。

 ハンソンは、金曜日の涼しいコースではユナイテッドが速かったと指摘する。

「傾向として、涼しいところでは強く、暑いところでは弱くなる。レースでは、最初の6~8スティントで、充分な速さがなかったんだ」

■最初はミディアムタイヤに苦戦したベン・キーティング
 コンパウンドの違いによって、時間帯やコーナーごとに得意・不得意が生じるため、富士でのタイヤ戦略は重要だった。GTEアマクラスのウイナー、TFスポーツ33号車アストンマーティンのベン・キーティングは、ミシュランがタイヤを供給するこのクラスのレースが、どのように影響されたかを説明してくれた。

「僕らは、より安定した走りができるミディアムタイヤを選択した。だけど、最初のうちは速くなかったんだ。僕のスタートはすごく良かったんだけど、3周か4周後にサラ(・ボビー)が僕をかわして飛ばしていったんだ。

「そして1時間目の終わりになると、彼女は徐々に落ちてきた。彼女はソフトタイヤを履いていたんだ」

 キーティングとマルコ・ソーレンセンは、TFスポーツのELMSヨーロッパ・ル・マン・シリーズのシャシーでエンリケ・シャベスとともに富士で勝利したことで、GTEアマのランキングにおけるリードを20ポイントに拡大した。

 最終戦では、ノースウエストAMRのデイビッド・ピタード/ニッキ・ティーム/ポール・ダラ・ラナが彼らのライバルとなる。デンプシー・プロトンの77号車ポルシェがリタイアしたことで、アストンマーティン勢が今季のタイトルを獲得することは確実となった。

* * * * * *
 次戦、最終戦となる第6戦バーレーン8時間レースは、11月10~12日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される。ロジスティクス上の制約により富士戦を欠場したLMP2のARCブラティスラバは、富士戦翌日の月曜日に、バーレーン戦での復帰を正式表明している。

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