■真夏の九州オートポリス! BRZ不在でGR86はどう戦ったのか?
2023年のスーパー耐久シリーズ。7月は月初と月末に2戦開催されます。
最初の宮城県のスポーツランド菅生で行なわれた第3戦から僅か3週間、今回は第4戦となる大分県のオートポリスで行なわれる5時間耐久です。
【画像】真夏のオートポリスはどうだったのか画像を見る(10枚)
菅生ではクラッシュからの復活、そして決勝では28号車「ORC ROOKIE GR86 CNF Concept」(以下GR86 CNFコンセプト)に大差をつけて勝利した61号車「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」(以下BRZ CNFコンセプト)ですが、今回のオートポリスではST-Qの規定に伴い参戦を行なわず。
更にST-4クラスの参戦もないため、GR86 CNFコンセプトにとってはいつもとは違うレースウィークとなりました。
ORC ROOKIE Racingのオーナー兼ドライバーのモリゾウ選手はチームミーティングで次のように語っています。
「GR86はスバル/ST-4がおらず、通常の環境ではないレースだと思いますが、我々の目的は『もっといいクルマ』を作ること。
そして次期GR86のために知見を“人間”が取ること。それぞれのミッションがあると思います」
菅生ではトラブルで速さが無かったGR86 CNFコンセプトですが、短期間でどのようなカイゼン/アップデートが行なわれたのでしょうか。
開発責任者の藤原裕也氏に聞いてみました。
「まず菅生で起きたトラブルの対策ですね。
開発用に量産車には無いセンサーを数多く装着していますが、そのひとつがドライバーの操作で動き、疲労によりハーネスが破損してしまいました。
そこで取り回し含めて設計の見直しを行なっています」
前回の菅生で、リアウイングの変更で前後の空力バランスが変わったので、調整の必要があると聞きましたが、その辺りはどうでしょうか。
「実はフロント周りに手を入れてきたのですが、走行するとドライバーから『前のバランスでいいよ』と言うフィードバックがあり、今回は投入していません。
この辺りはエンジニアとしては誤算でしたが、走る環境によって異なるんだな……と」
今回はモリゾウ選手も言うように普段と違うレース環境です。
ある意味「見えない敵」と戦うわけですが、どのような目標を掲げて走るのでしょうか。
「こういう状況なのでドライバー、エンジニア、メカニック共にテーマを持って取り組むということが大事だと思っています。
マシンは着実に良くなっていますが、それを支える“土台”が揺らいでいるように感じています。
メンバーは良くも悪くもこの環境に慣れてしまった所があるので、今一度クルマづくりとヒトづくりをやり直すつもりで、『一度立ち止まって考えよう』と」
そんなGR86 CNFコンセプトですが、順調ではありませんでした。
金曜日の占有走行では燃料ポンプの不具合が発生。
更に土曜日の予選では突然の電源消失でエンジンが始動できず、C/Dドライバーは予選を走ることができなかったのです。
ただ、いくつかトラブルを抱えていましたが、予選タイムは4分05秒889(A:加藤恵三選手2分03秒510、B:山下健太選手2分02秒379)と、格上となるST-2、ST-3クラスに匹敵する速さも見せつけました。
そうした中でパドックには、今回不参加となるTeam SDA Engineeringの本井雅人監督の姿が。なぜ、オートポリスにいるか聞いてみました。
「菅生から投入の改良されたCN燃料のメディア向けラウンドテーブルに参加するためですが、本音を言えばGR86が気になり居ても立ってもいられず(笑)。
更にマツダさんもロードスター(同じCN燃料使用)が投入されますからね。
現在、マシンは菅生でのクラッシュの修復を行ないつつも、後半戦に向けて車体のアップデートを行なっています。
かなり変わると思いますので、ご期待ください」
■ライバル不在かと思いきや…意外なライバル登場!? GR86 CNFコンセプトのレースはどうだった?
実はここオートポリスがデビュー戦の12号車「MAZDA SPIRIT RACING ROADSTER CNF concept」(以下がロードスターCNFコンセプト)は、GR86 CNFコンセプト/BRZ CNFコンセプトと同じカーボンニュートラル燃料を使用します。
実は木曜日の練習走行でクラッシュしてしまい、そこからチーム総動員で修復作業をスタート。
菅生でのTeam SDA Engineeringと同じ状況でしたが、メンバーに話を聞くと「スバルさんに直せて、我々が直せないのは悔しいですから」と教えてくれました。そして、有言実行で決勝日の朝に新車のように戻ったマシンの姿が。
日曜日の決勝は早朝に雨が降り、ウォームアップ走行は時々刻々と路面状況が変わるコンディションでしたが、スタート進行が始まる頃には路面もほぼドライに。
そして11時から5時間のレースがスタートしました。ORC
GR86 CNFコンセプトは序盤から安定した走行を続け、5時間をほぼノントラブル137周を走ってゴール。
ちなみに2022年のオートポリスはエンジンが吹けないトラブルでリタイヤでしたが、今回シッカリ走り切ったことで、多くのデータを残すことができました。
ちなみにロードスターCNFコンセプトはセッティングもほぼぶっつけ本番ながらも、安定したタイムで130周を走り切りました。
しかし、実はMAZDA SPRIT Racingのもう1台、バイオディーゼル燃料を使う55号車「MAZDA SPRIT Racing MAZDA3 Bioコンセプト」(以下MAZDA3 Bioコンセプト)がGR86 CNFコンセプトと同一周回でゴール。
今後はGR86 CNFコンセプト/BRZ CNFコンセプトのガチンコ対決に割って入ってくる予感も。
Team SDA Engineeringの本井監督は「55号車の進化がヤバい。しかも、もてぎは300psらしい」と焦っていました。
最後に藤原氏にレース後の総括をお聞きしました。
外から見ている限りは順調に走っているように見えましたが、実際はどうだったのでしょうか。
「スバルさんとST-4がいないことで気持ち的なゆとりはありましたが、やはり『一筋縄ではなかった』と言うのは素直な感想です。
マシン的にはこれまでの熟成の成果が出たと思いますが、ドライバーからも課題もたくさんいただきましたので、これからですね。
特に路面温度の高さとオートポリス特有の路面から来るタイヤの負担が予想以上でした。
そんな状況下でも乗りやすいクルマにする必要がある……そんな課題が得られたレースだったと思っています。
スバルさんはオートポリスを休んだ事で、更なるレベルアップを行なっているのは間違いないと思います。
我々もこのままではいけないと思っていますので、頑張ります」
※ ※ ※
次戦は2023年9月2日・3日のモビリティリゾート(栃木県)で開催される5時間耐久です。
ストップ&ゴーが多いブレーキや冷却に厳しいコース、まだまだ残暑は厳しい中の戦いとなります。
その中でGR86 CNFコンセプト/BRZ CNFコンセプトのガチンコ対決。そしてMAZDA SPRIT Racingの2台も加わる「四つ巴(?)の戦い」にも期待したい所です。
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