14.221秒。それは1周13.626kmのコースを311ラップして、勝者と敗者の間に残ったタイム差。この数字こそ2024年のル・マン24時間を象徴し、過酷な優勝争いを示すものである。23台のハイパーカーのうち、完走の栄誉を受けたのは16台。正直、よくもまあ、これだけ生き残ったものだと思えるほど、し烈なレースだった。
幾多のドラマを演出したのは雨、雨、雨。24時間を通して断続的に路面を濡らした雨により、タイヤ交換のためのピット戦略で明暗が分かれ、パワーバランスが変化し、多くのコースオフおよびクラッシュが引き起こされ、それによりセーフティカーが出動し、ギャップがリセットされ、スプリント的な戦いが生み出された。
「アクシデントがなければ勝てたと思う」トヨタ、ル・マンで悔しい2位表彰台。優勝まであと一歩届かず
そのような状況をもっとも「うまく切り抜けた」のが優勝した50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)であり、昨年のリベンジをかけて臨んだトヨタは、最後のピースがはまらず7号車トヨタGR010ハイブリッドが2位、8号車は5位でレースを終えた。
「いやあ、悔しいです。悔しいんですけど、これが結果なので」と、7号車のステアリングを握りながら、チーム代表も務めた小林可夢偉。
「僕らのクルマはパンクやパワーダウン、ドライブスルーもあったし、8号車は、何事もなくてうまく行ってたんですけど、51号車(フェラーリ499P)に当たってしまい、その結果後ろに下がってしまった。うまくピースがはまらなかった。2台そろってノートラブルで24時間を走り切るってことがこのレースのキーだと思うので、それができなかったことは非常に悔しいです」
可夢偉が言うように、8号車は不運な接触が起こるまで優勝にもっとも近い位置にいた。そして、7号車にしても最後まで勝機は充分にあった……いくつかのトラブルがなければ。
「僕らのクルマにはステアリングのセンサーの問題が発生し、スローパンクチャーが2回ありました。そして最後、僕が乗っている時のセーフティカー明けのガチンコ勝負の時にパワーが落ちて、あれでグーッと順位が下がってしまった。ああいったことがなかったら、もうちょっと可能性があったと思うんですけどね」
そもそも、7号車は直前にマイク・コンウェイの怪我による欠場が決まり、急遽ホセ・マリア・ロペスが代役を務めることになるなど、予想外の出来事への対処に右往左往する中でレースウイークを迎えた。
ロペスは約半年GR010のステアリングを握っていなかったにも関わらず、しっかりと速さを示した。ただし、スローゾーン走行時の速度違反によりドライブスルーペナルティを科せられたり、本来得意なはずのウエットコンディションで何度かオーバーシュートを喫するなど、ミスが多かったのも事実である。少し、気持ちが入りすぎていたのかもしれない。
■「力を発揮できた」と満足げな平川亮
一方、8号車は手堅いレースを続け、大きなトラブルやアクシデントもなくレースを戦い続けた。そしてナイトセッションでは平川亮が好走を見せ、トップを快走した。ウエットコンディションでの平川のペースは非常に素晴らしく「雨はやっぱり得意だなと自分でも走りながら思いましたし、力を発揮できたのではないかと思います」と、平川自身も、自分の走りに満足していた。
しかし、それでもコースオフ紙一重の走りだったようだ。
「雨は、もうしびれました。間違いなく自分のキャリアの中でトップ1? ワーストなコンディションでしたね。雨が降っていることは分かっても路面が見えないので、どれくらい行きましょうか? みたいな。150m前からブレーキかな? ちょっと早かったな。でも、次の周に来たらまたコンディションが違うし、次のコーナーの雨の予報も違うし……と、常にアジャストしていかなきゃいけなかった。すごくシビアな状況でした」
フォードシケインで一度飛び出した以外に、大きなミスを犯すことなく平川は自分のスティントを走り抜いた。だからだろうか、凄惨な表情で表彰台に立った去年と比べると、結果は5位ながらもはるかにすっきりした、充実さえ感じさせる顔つきだった。
「自分としてはやりきった感がありますし、去年よりはチームに貢献できたかなと思います。チームとしてもベストを尽くせましたし、まぁちょっと流れがなかったのかなと」と平川。チームの中で、確実に実力と存在感を増してきていると感じた。
TGRモータースポーツ技術室の加地雅哉氏は、惜敗のレースを次のように振り返る。
「ハイパーカーの最下位からスタートして2位で終われたので、それなりの力は出せたと思いますが、まだやっぱり詰めの甘さみたいな部分があった。フェラーリよりももう少ししっかりできていれば 、どれかひとつでもトラブルやミスを防げていれば、勝てたと思います。そうじゃなかったのは僕らのチーム作りがまだまだで、過渡期だっていうことだと思うので、しっかりやり直したいと思います」
降雨の量やタイミング、セーフティカーやスローゾーンとの巡り合わせなど、例年以上にギャンブル的な要素が多かった今年のル・マン24時間。しかし、上位を争ったのはやはり高い実力を備えたクルマやチームであり、その中で純粋なスピードと、ミスやトラブルの数のバランスで勝敗が決した。BoP(性能調整)の塩梅などそれぞれに思うところがあったとは思うが、それでも僅差の戦いが続いた中で、もっとも強い力を備えていた者が勝利を得たという感がある。
昨年よりもはるかにスポーツとしての見応えがあり、後味も良い今年のル・マン24時間だった。
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みんなのコメント
速さを突き詰め 美しく走るのは予選のみ、特に長いレースになる程 その絶対的なスピードより、バトルによる あらゆるインシデントに勝たなければならない
のろのろインを刺され スペースはあり並ばれ当たってスピンしたら駄目だし、ピットレーンでのリリースは 確りスペースを侵害せず、タイムロスし 譲っている
そして もしドアを1ラップ待たず閉めさせていたら、最後のルーティンで 満タンにして ペースアップをしていただけ
あのラストの燃料は トヨタのベストラップを足して行って、24時間までの周回数を 今あるマージン分、残した時間で トヨタと同じラップだけ走れればOK
その量だけガスを入れ ピット時間最小限で、311周すれば ゴールになるペースで走っただけ
7号車はスピンせずに ベストを刻めば、3秒後ろでゴール出来たかもね
それ以外は言い訳