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時代をチョー先取っていた!日本車の4ドアクーペ列伝

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時代をチョー先取っていた!日本車の4ドアクーペ列伝

 かつての日本車には初代カリーナEDをはじめ、流麗なボディスタイルを持つ4ドアクーペが数多く存在していた。この4ドアクーペというカテゴリー、BMWのグランクーペやメルセデスベンツのCLSクラスなど今や輸入車のモデルの最新トレンドにもなっているのだが、日本車は1980年代にそれを先取りしていたのだ。その当時の熱気を振り返ってみよう。

文/片岡英明、写真/トヨタ、マツダ、日産、三菱、ベストカー編集部

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■艶やかな4ドアHTとして登場した初代カリーナED

 日本が元気だった1980年代、3ナンバーの普通車は税金や保険料がメチャ高かった。だから多くの人がマイカーに選んだのは、排気量が2000cc以下で、維持費も安い5ナンバーの小型車だ。

 かぎられたサイズのなかで高性能と個性を競い合っている。1985年秋から日本はバブル景気となり、円高ドル安の波が一気に押し寄せた。当然、日本の自動車メーカーは元気になり、販売台数も急カーブを描く。

 バブルが始まった1985年秋、トヨタの4代目セリカとコロナクーペはFFスペシャルティカーに生まれ変わっている。この2車とともに鮮烈なデビューを飾ったのがカリーナEDだった。

1985年にデビューした初代カリーナED。ボディサイズは全長4475×全幅1690×全高1310mm。背の低いスタイリッシュなデザインはR32スカイラインGT-Rより30mmも低かった

 「足のいいヤツ」、のキャッチフレーズで売ったカリーナもFF方式に転換したが、この時代、カリーナはコロナやセリカより格下のイメージだった。が、カリーナEDが大ブレイクし、コロナを凌ぐ人気者になったから一気にメジャーブランドにのし上がっている。

 今につながる4ドアクーペブームを巻き起こしたカリーナEDとはどんなクルマだったのだろう!? カリーナの後ろに付く「ED」は「エキサイティング・ドレッシー」の頭文字だ。妖しい夜のムードが似合う、艶やかな4ドアハードトップだった。

 カタログ写真にも不倫の関係をほのめかす妖艶さが漂っている。女性が運転しても助手席に乗っても似合う。この流麗なフォルムに魅せられ、多くの人がオーナーになろうとしたのだ。

 セリカ、コロナクーペとはメカニズムの多くを共有する兄弟車である。だが、エクステリアは徹底的に差別化を図り、別のクルマに見えるほど変えていた。注目を集めたのはワイド&ローの低く伸びやかなフォルムだ。

 センターピラーのない爽快な4ドアハードトップで、背はスポーツクーペ並みに低い。全高は背の高い乗用車を見慣れた世代はビックリの1310mmだ。この少し後に登場したR32スカイラインGT-Rより30mmも低かった。

 パワーユニットは2Lの3S-GELU型直列4気筒スポーツDOHCと1.8Lの直列4気筒SOHCだ。4速ATが主役だが、スポーティ派には5速MTを用意している。エンジンは気持ちよく回り、サスペンションはセリカなどと同じ4輪ストラットだった。だからワインディングロードでも軽やかなハンドリングと冴えたフットワークを見せる。

 スタイル優先だし、小型車枠のなかに収めているからキャビンは広くない。特に後席は頭上空間がミニマムで、膝もとも窮屈だった。ドアもそれほど大きく開かないから、大柄な人だと乗り降りするのに苦労する。

 実用性はそれなりだったが、多くの人がカッコいいと思った。女性も羨望の眼差しで見ている。だから決算月には1万台の大台を超える販売台数を記録し、カリーナEDが街や行楽地にあふれた。

■ビューティフル&ゴージャスを優先してデザインされたマツダペルソナ

 驚くほどの売れゆきを見せたからライバルメーカーは慌てたし、カリーナEDの成功に刺激を受けている。当然、他メーカーからも2匹目のドジョウを狙って似たような4ドアスペシャルティカーが次々に登場した。

 マツダは3年後の1988年10月に、カペラのプラットフォームやパワートレーンを使ってペルソナを送り出している。国内専用モデルと割り切り、日本のユーザーが好むデザインと装備を採用した。

1988年に登場したマツダペルソナ。デビュー当初を除いて販売成績は振るわず、販売開始からわずか4年後の1992年に一代かぎりで姿を消した

 タイプBは高級なレザーシートを標準装備し、後席はサイドまで回り込んだラウンジ風のシートだ。また、ユーノスチャンネルに兄弟車のユーノス300を送り込む。

 本家のカリーナEDは1989年秋にキープコンセプトのまま第2世代へとバトンタッチ。兄弟関係にあるコロナは、不人気のクーペを廃して4ドアスペシャルティのコロナエクシヴを誕生させている。

■プレセア、マリノ、エメロード、美しき4ドアクーペの時代

 静観していた日産も重い腰をあげ、1990年6月に初代プレセアを発売した。グリルレスのエレガントなフロントマスクや凝ったインテリアが女性ファンを惹きつけ、好調な滑り出しを見せている。

1990年6月に発売された初代プレセア。「絶世のセダンです。」のキャッチコピーから見返り美人に扮した女優の桐嶋カレンさんが出演するCMが印象的だった

 バブル景気も後押ししたのだろう。トヨタは1992年春、カローラFXのモデルチェンジと歩調を合わせ、コンパクトクラスにも4ドアスペシャルティを送り込んだ。それがカローラセレスとスプリンターマリノである。

 キャビンは狭いが、カップルや子育て世代はクーペ感覚のセレスとマリノに関心を寄せた。また、三菱も新型になったギャランとエテルナを4ドアハードトップにしたエメロードを投入する。

 これはほかの4ドアスペシャルティと違い、全幅1730mmの3ナンバー車だ。エンジンは上質なV型6気筒が主役で、フルタイム4WDも設定した。

 だが、トヨタと日産の2社以外はふるわず、ペルソナとエメロードは1代かぎりで姿を消している。カローラセレスとスプリンターマリノも2代目は登場しなかった。

 火付け役のカリーナEDは1993年秋に3代目を発表。コロナエクシヴも2代目になる。また、日産のプレセアも1995年には2代目を発売した。が、季節商品だっただけに10年ほどでブームは去り、一世を風靡した4ドアスペシャルティは静かに消えていく。

■ドイツの流麗な4ドアクーペ

 が、多くの日本人が4ドアスペシャルティを忘れた頃、ドイツ勢が同じコンセプトの4ドアクーペを発表し、発売した。メルセデスベンツCLSやVWパサートCCなどがその代表だ。これに続くVWアルテオンやBMWグランクーペもこの流れにある。

2017年にデビューしたVWアルテオン。このクルマは5ドアハッチバッククーペとなり、BMWのグランクーペなども同型状となっている

 また、最近はクロスオーバーSUVも4ドアクーペ風のデザインを採用するようになった。

 この手のデザインとパッケージングを最初に実現し、衝撃を与えたのはニッポンの自動車メーカーだ。今の4ドアスペシャルティは3ナンバー枠だからキャビンもそれなりに広く設計できる。

 カリーナEDやプレセアは、小型車というかぎられた枠のなかで最高のスタイリングと気持ちいい走りを実現した。ちょっと早すぎたが、その先見性とチャレンジ精神は高く評価されていいと思う。

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みんなのコメント

7件
  • カリーナEDはじめ、日本で背の低い4ドアクーペが流行った頃、自動車評論家連中はこぞって、「こんなの自動車の邪道!」「こんなのは、自動車の本場である欧州ではアリエナイ!」「日本の自動車文化の稚拙さを示す恥知らず!」と、ケチョンケチョンだった。

    それがどうよ、四半世紀遅れて欧州メーカーが4ドアクーペ出し始めた後の評論家の掌返しし、、、いやはや。
  • この車が出た頃って、若者は2ドアの車に乗るのが当たり前で4ドアの車に乗っていたらオッサン扱いだった。
    だけど家庭の事情で4ドアの車を選択しなきゃならない若者にとっては救世主みたいな車だった。
    この頃の4ドアハードトップは室内空間を確保するためにセダンベースが普通だった。
    それとは真逆の発想でクーペボディーを4ドア化させたのがEDだった。
    だから全高はセリカとほぼ変わらない高さだったが、トヨタの仕上げは、そんな単純なものではなかった。
    運転席の頭上空間を確保する為に座席の高さはMR2よりも引く抑えてきていた。
    後席の広さを確保する為に燃費タンクの形状と位置を工夫して座面をできるだけ低くして、大人でも膝が前席に当たらないようにフロントシートの背もたれにも工夫を凝らしていた。
    新しいジャンルの車なのにあらゆる角度から車を作り上げたトヨタの凄さに感心した車だった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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