10月30日、中東のバーレーン・インターナショナル・サーキットを舞台にWEC世界耐久選手権第5戦バーレーン6時間レースの決勝が行われ、トヨタGR010ハイブリッドで最高峰カテゴリーに参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組7号車と、セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー組8号車がワン・ツー・フィニッシュを達成した。この結果、チームは1週間後に控える最終戦を待たずして、“WEC新時代”ハイパーカー時代の初代チームチャンピオンを確定させている。
前日29日(金)に8号車と7号車でフロントロウを独占したTOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、気温30度、路面温度40度を超える暑く厳しいコンディションのなか、ドライバーとメカニック、エンジニアも一丸となって6時間レースを戦い抜きWEC通算4度目、3年連続でのチームチャンピオンを獲得した。
【ポイントランキング】2021年WEC第5戦バーレーン終了時点
トヨタGR010ハイブリッドのデビュー戦となった今季開幕戦から全戦全勝で迎えた終盤の第5戦。この“バーレーン連戦”の初戦でも2台のGR010ハイブリッドはトップ争いを繰り広げた。
レース序盤は、ポールスタートの8号車がブエミのドライブで首位を守ったが、7号車のコンウェイもチームメイトの逃げを許さず、2台が僅差のまま走行する展開が続く。
レース前半、8号車と7号車は順位を入れ替えながらライバルの36号車アルピーヌを引き離していった。その後、この日ハイパーカーの全車を苦しめたタイヤ摩耗の面で、わずかに影響の小さかった7号車がチームメイトを先行していく。
6時間レースの折返しを迎える頃には、2台の差は約10秒に広がり、4時間を過ぎには8号車がタイヤ交換時のタイムロスで3番手へと後退。その後、ハートレーがアルピーヌから2位の座を奪い返したものの、その時点で可夢偉に交代した7号車とは約40秒のギャップが生じていた。
終盤になっても戦況は変わらず。2台のトヨタGR010ハイブリッドはトップ2を維持したまま周回を重ね、最後は可夢偉の7号車が3戦連続となるトップチェッカーを受けた。また、一貴駆る8号車が51.401秒おくれの2位でフィニッシュし、TGRはワン・ツー・フィニッシュを達成。この結果、チームは今戦4位以上で決まることになっていたチームタイトルを確定させている。
「圧巻の3連勝を勝ち取った7号車、そして、懸命の追い上げで着実に2位を掴んでくれた8号車、見事なワン・ツー・フィニッシュでの優勝おめでとう。そして、TGRチームに初代ハイパーカーチャンピオンをもたらしてくれて、本当に有難う!」とコメントしたのは、TOYOTA GAZOO Racingカンパニーの佐藤恒治プレジデント。
「気温が35度まで達し、難しい熱マネジメントが求められるなか、チーム全員の頑張りにより、素晴らしい結果をもたらしてくれました。そして、ドライバーたちの渾身の走りにも心から感謝します」
「ドライバーズタイトルが決定する最終戦が、いよいよ1週間後に迫りました。チームの皆さんにはエキサイティングなシーズンエンドを迎えて欲しいと思います。そして、最後にチャンピオンを勝ち取るのは誰か、楽しみにしてその時を待ちたいと思います」
「引き続きチームは最終戦に向けてしっかり準備していきます。ファンの皆さま、最後まで熱い応援をよろしくお願いいたします!」
■小林可夢偉「金曜は苦戦したが、その原因を見出し、自信を持って決勝レースに臨めた」
佐藤氏のコメントにもあるように、TGRがチームチャンピオンを獲得したことで、1週間後に行われる今季最終戦での注目はドライバーズチャンピオンへと移る。
今年のル・マン24時間を制しドライバー選手権をリードしている7号車のクルーは、ここ第5戦での勝利で3連勝を達成。来週のバーレーン8時間レースで王座防衛を目指すことになる彼らは、ランキング2位につける8号車の3名に対し15ポイントのリードを持って最終戦に臨む。
WEC史上初のダブルヘッダー、“バーレーン2連戦”の初戦を戦い抜いたTGRドライバーたちの第5戦レース後コメントは以下のとおりだ。
■7号車トヨタGR010ハイブリッド
●小林可夢偉
「チームが素晴らしい仕事をしてくれました。ハイパーカーでの世界タイトル獲得を全員で祝いたいと思います」
「我々は金曜日にちょっと苦戦しましたが、原因を見出すことができ、自信を持って決勝レースに臨みました。決勝レースではチーム全員が素晴らしい仕事をしてくれましたし、マイク(・コンウェイ)とホセ(-マリア・ロペス)も力強いペースで走ってくれました」
「彼らのおかげで良いポジションで走ることができ、私のスティントもとても順調でした。最後、チェッカーまでのスティントを走ったときは気温が僅かに下がっていたことも良かったのか、私自身も、タイヤにとっても大きな負担にはならず、あとは後続とのギャップを保って最後まで走り切るだけでした」
●マイク・コンウェイ
「優勝できてとてもうれしいし、最大のポイントを獲得できたこと、チームのタイトルを決められたのも良かった。7号車のドライバーだけでなく、8号車の3名も今日一日を通して素晴らしい走りだったと思う」
「僕のスティントは、スタートからタイヤをマネジメントすることに専念した。今までにこれほどタイヤが摩耗したことはなく、分からないことが多かったのだけど、結果的にはすべて順調にいったと思う」
「我々にとってはドライバーズタイトル争いにおいても有利になった一日だが、まだすべてが決まるのは来週ですし、タイトル防衛へ向け全力で挑むつもりだ」
●ホセ・マリア・ロペス
「チャンピオン獲得は、シーズンをとおして素晴らしい仕事をしてくれたチーム全員のおかげであり、全員に祝福を送りたい」
「今日のレースでも、マイクと可夢偉が安定した、最高の走りをしてくれた。タイヤのマネジメントが難しく、どうなるのか正確には分からないなかでのレースだったが、チームがまったくミスなく戦ってくれたおかげで、勝つことができた」
「今日の勝利は、チームにとって非常に重要なものであると同時に、我々のドライバーズタイトル争いにおいてもとても良い結果だ」
■8号車トヨタGR010ハイブリッド
●中嶋一貴
「暑さで大変なレースでしたが、レース終盤にはそれも少し和らぎました」
「我々は限界ぎりぎりを狙った攻めのセットアップを試しましたが、それはあまりうまくいきませんでした。とはいえ、2位でフィニッシュでき、まだ逆転タイトルの可能性は残っています」
「優勝した7号車、本当におめでとう。そして、TOYOTA GAZOO Racingもチームタイトル獲得にふさわしい働きだったと思います。今日チームタイトルを決められたことで、最終戦は楽しみながら、全力でドライバーズタイトル争いができるでしょう」
●セバスチャン・ブエミ
「我々は勝利を目指してレースを戦っているので、2位フィニッシュは決して満足のいくものではないが、今日の結果はチームにとって最高だ」
「我々は今日、恐らく7号車よりも、タイヤとも戦っていたが、結果的には7号車がよかったと思う」
「TOYOTA GAZOO Racingがワン・ツー・フィニッシュでハイパーカー元年のタイトルを獲得できたということは、大変な偉業だと思う。この結果は、メカニックやエンジニアをはじめとするチーム関係者の大変な努力の賜物だ。それを成し遂げた彼らに祝福を送りたい」
●ブレンドン・ハートレー
「7号車は我々よりもわずかに速かったし、優勝に値する走りだった。我々はタイヤの摩耗と幾つかのトラブルに苦しめられたが、そこから学んでいく」
「7号車は本当に良い戦いぶりだった。我々はまだドライバーズチャンピオンを争っているが、最終戦で7号車を逆転するのは容易なことではないだろう」
「チームがハイパーカーでの初代チャンピオンを勝ち取ったことは素晴らしいことであり、チーム全員を祝福する。彼らがタイトルのためにどれだけの努力を続けてきたかよく知っているし、彼らはチャンピオンにふさわしいよ」
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