マックス・フェルスタッペンが2021年F1第8戦シュタイアーマルクGPで優勝を飾り、レッドブル・ホンダは4連勝を記録した。ホンダにとって4連勝というのは1991年以来30年ぶりのことであり、ホンダF1の山本雅史マネージングディレクターによれば、ホンダ社内ではこの7年間において今が一番盛り上がっているという。
またシュタイアーマルクGPで今季3度目の入賞を果たした角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)については、事前にアドバイスした通りにミスなく3日間を終え、「次に繋がる結果でよかった」と評価した。
「レッドブルが強くなったと知らしめた勝利だった」完璧な週末を過ごし通算10勝目/ホンダF1山本MDインタビュー(1)
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──非常にいいムードになってきたのに、ホンダが今シーズン限りでF1から撤退するということは本当に残念です。今シーズン、ホンダF1が好調な成績を収めていることに対して、ホンダの社内の声、反応というのは山本さんにはどのように届いていますか。たとえば今シーズンでラストだけど頑張ってくれという感じなのか、撤退するのは忍びないという人が何人かいるのか、ホンダ社内の反応を教えてください。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):日本にいらっしゃる方は、もしかして見られている方もいらっしゃるかもしれませんが、先週(6月20日)はホンダの勝利が多くて、MotoGPも久々に勝って、スーパーフォーミュラも勝って、インディカーも勝って、あちこちのレースでホンダが勝っています。今週は青山のヘッドオフィスのエントランスにレッドブル・ホンダとMotoGPのマシンが2台飾られていたりとか、ホンダのホームページでは優勝記念ポスターを作り、みんながダウンロードできるようになっていて、それを役員室にベタベタ張っているとか、僕の席がある11階はF1のポスターだらけになっているとか、そういう情報や写真を日本の同僚が送ってくれています。ポスターも非常にいいのでみさなんもぜひ見ていただければと思うし、もちろんレッドブルにもデータやポスターを分けたりもしています。
ムード的にはこのまま突き進んでほしいというメッセージももらいますし、本当にこのまま辞めちゃうのはもったいないねとか、そういうコメントもいただけるし、僕ら、田辺共々戦場で戦っている者たちは今年、有終の美を飾ろうと、開幕前に言ったように記憶に残るシーズンで終えたいと思っています。
今シーズンからモータースポーツ部長は長井(昌也)がやっているのですが、長井とも連携がよくて、先ほどもメッセージをもらいました。鈴鹿での日本GPに向けてもいろいろと準備してくれているみたいですし、ホンダの社内はこの7年間で一番盛り上がっています。本当にありがたいです。
(ホンダのモーターホームの前でインタビューしているところに、ちょうどメルセデスのトト・ウォルフ代表が通りかかり、山本MDを見つけると近寄ってきて、握手してきた。そして、インタビューはさらに続いた)
──いま、ウォルフから「優勝おめでとう」という賛辞の言葉をいただきましたが、そのウォルフは今週末、「今年のマシンの開発はもうしない。これからリソースは来年に回す」ことを明言して、現場では話題になっています。レース後にその件をレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表に尋ねたら「そんなことは信じない。彼らはまだまだ開発してくるよ」と言っていました。ウォルフのコメントに関して、山本さんはどう思っていますか。
山本MD:クリスチャンと同じ意見です。メルセデスはそんなことしないと思います。王者メルセデスが来年のためにと言ったのも、あれだけの規模のスタッフがいるのに、全員を来年に回す必要なんてない。今シーズンもまだまだ開発してくると思うし、来シーズンはまた別部隊がやるはずです。トップに君臨するチームがそんなことするとは思えない。僕らはレッドブルとチャンピオンシップに向けて1戦1戦積み上げていくだけです。
──角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)選手が2戦ぶりにポイントを獲得しました。100%ハッピーという感じではなかったですけど、ドライバーとしてはほぼノーミスで、ピエール・ガスリーがリタイアして1台だけとなったなか、チームにポイントをしっかりと持ち帰りました。山本さんは今週の角田選手をどう評価しますか。
山本MD:今週末はとにかく3日間トラブルを起こさない、クラッシュしない、週末をどう過ごすかをしっかり考えてほしいと、木曜日に言いました。それがしっかりできていたと思います。
アルファタウリのクルマなら、Q1は普通にやれば確実に通る。ガスリーもそれくらいのパフォーマンスを出しています。たとえば、ガスリーのコンマ2秒落ちだったとしても、Q3にいくか行かないかのレベルなんだから、まずはQ1を普通に流して、その後どう攻めるかはQ2以降の話。それでもまだQ3に行けそうな速さがあるんだったら、少しずつ攻めていけばいい。今回は普通に予選を戦えばQ3にいけるパフォーマンスがありました。それをしっかりやり切って、アドバイスどおり、3日間ノーミスでした。
本人はレースで(フェルナンド・)アロンソを抜けなかったことでフラストレーションがあると思いますが、いまは正直そこまでの実力。アロンソだって(アラン・)プロストさんが言っていたけど、少しずつ昔のアロンソに戻ってきたから、やっぱり速いし、そしてうまい。今日も角田が追いつくと離しましたし。そりゃ、そんな簡単にバーレーンGPのときみたいにルーキーに抜かれることはないです。総じて言えばポイントを持って帰ったし、この週末は本人のミスがなくまずまずの出来で、僕は冷静に考えたら次につながる結果でよかったと思います。
──ポイント獲得はバーレーンGPとアゼルバイジャンGPと今回ですが、バーレーンは予選Q2でミディアムタイヤで失速して15番手スタート。アゼルバイジャンは予選で壁にぶつかったり、レースでは最後の2周で抜かれました。今回は3日間、とっ散らかることがなかった。これは確かに初めてです。
山本MD:週末3日間、初めてよかったです。これを続けること。すごいフラストレーションが溜まっていることは、本人とは話さなくてもわかります。だけどここはF1。クルマが10種類あるなかで戦っている、そういう意味では上出来だと、明日言います。本人は相当プンプンしてると思うけどよくやりましたよ。
──前回のフランスGPでは、山本さんはプロのドライバーとしてかなり厳しい評価をしていましたが、今回はプロのドライバーでしたね。
山本MD:プロ入門という感じ。FIA-F2と違って、F1はいったんグリップを失ったらもう修正できないと言っていたから、その点はきちんと経験したことが身についてるという週末でしたね。
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