スーパースポーツカーに最適と言える、強力な3モーター方式を採用したフェラーリSF90ストラダーレ。フェラーリのラインナップ最高峰のロードカーだ。(Motor Magazine 2020年9月号より)
「スクーデリア・フェラーリ」90周年を記念したネーミング
スーパースポーツカーの電動化では2011年のAMG SLS E-CELL、2012年にはアウディR8 eトロンなどが、まずBEVとして登場した。しかしかさばる重量と貧弱な航続距離のために、いずれもまともな量産車とはならなかった。
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2013年にポルシェがPHEVの918スパイダーを開発、限定販売ではあったがようやく市民権を得た。続いて2014年にBMWがi8を販売したが、このツインパワーコンセプトもわずか2万台強で生産を終えている。さらにホンダも2016年に3モーターと凝ったシステムのNSXを完成、発売を始めたが、プラグインではないがゆえに中途半端で販売には苦戦している。
つまり、スーパースポーツカーの分野では、ある程度の距離をゼロエミッション走行ができると同時にフロント2基を含めた合計3基の強力なモーターを持ったPHEVが、高価にはなるが最適のレイアウトなのだ。この点で、フェラーリ初のプラグインハイブリッド「SF90ストラダーレ」は最有力視されるべきモデルだ。
SF90というモデル名は、まだ自動車メーカーになる以前の1929年にエンツォ・フェラーリが設立し、今日も続いているレーシングチーム「スクーデリア・フェラーリ」の90周年を意味している。
スーパースポーツカーへの期待に応える新たな高性能
フェラーリの聖地マラネッロで対面した同社初のPHEVは全長4.71m、全幅1.97m、全高わずか1.19mの真っ赤なボディで、全体のデザインはこれまでのV8モデル、488GTBやF8トリブートの流れを組むものだ。しかしヘッドライトなど細部は一層シャープな仕上がりを見せる。
キーをセンターコンソールに置いてバケットシートに入り込む。赤いスタートストップボタンはタッチ式に変わっており最初のワンタッチで「ON」、正面のインチ曲面デジタルバーチャルディスプレイが起動して様々な情報が表示される。再びセンサーに触れると「READY」すなわちスタンバイモード。
昔のシフトゲートを思わせるセレクトスイッチで1速ギアをセットし、アクセルペダルを踏み込む。すると、最大出力135p(99kW)/最大トルク85Nmを発生するフロント2基の電気モーターによる静かなEV走行が始まる。このゼロエミッション走行は距離で最大25km、また高速度は135km/hである。ドライブモードは「e」の付いた新型マネッティーノによってE(電動走行)、ハイブリッド、パフォーマンス、そしてクオリファイと、いかにもF1=フェラーリらしいパターンが選択できる。
マラネッロ郊外の一般道路では「ハイブリッド」で十分にダイナミックなドライビングを楽しむことができた。またワインディングロードで見せたフロント2基の電気モーターによるトルクベクタリングでのクイックなターンインには、胸のすくような感覚を覚えた。
フィオラノテストコースでは軽量バージョンの「アセット フィオラノ」で走る。まずは「パフォーマンス」を選択。右足を踏み込むと背後から780psの4L V8ツインターボエンジン、そして8速DCTとの間に挟まれた203ps(150kW)の電気モーターも同調、システム出力1000ps(735kW)のパワーが炸裂する。1570kgの跳ね馬は0→100km/hを2.5秒、200km/hまで6.7秒で加速し、最高速度は340km/hに達する。
このスポーツバージョンは、明らかによりシャープなハンドリングとパワー展開を示した。とくにミシュランのパイロットスポーツカップ2タイヤは、非常に高いグリップ性能でサーキット走行をより楽しいものにさせてくれた。注文済みのオーナーの50%は、このバージョンを選択してるそうだ。
最後に価格だが、日本仕様では5340万円、アセット フィオラノはさらに570万円の追加料金が必要となる。ただし、現在は完売状態で、いま注文してもデリバリーは間違いなく2年先となる。(文:ベルント・オストマン<キムラ・オフィス>)
■フェラーリSF90ストラダーレ主要諸元
●全長×全幅×全高=4710×1972×1186mm
●ホイールベース=2650mm
●車両重量=1570kg(乾燥重量・アセット フィオラノ仕様)
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=3990cc
●最高出力=780ps/7500rpm
●最大トルク=800Nm/6000rpm
●システム最高出力=1000ps
●モーター最高出力=220ps
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速DCT
[ アルバム : フェラーリSF90ストラダーレ はオリジナルサイトでご覧ください ]
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