この記事をまとめると
■プリウス・アルヴェル・センチュリーなど目玉車種を続々登場させるトヨタ
■プレゼンはサイモン・ハンフリーズさんが登壇している
■サイモンさんはデザイン畑の人物
トヨタの目玉車種はサイモンさんのプレゼンが主コンテンツ
プリウス、ランドクルーザー250、センチュリーと、このところ話題作を連発しているトヨタですが、同時に話題になっているのが、各車の発表会を流暢な日本語で仕切っているサイモン・ハンフリーズ氏です。デザイン担当であることは知られているようですが、果たしてどのような人物なのか、今回はあらためてクローズアップしてみたいと思います。
●プロダクトデザイナーからカーデザイナーへ
新型車の発表会といえば、社長など役員の挨拶に続き、開発責任者の車両説明、営業担当者から販売計画の解説といった内容がお約束ですが、最近のトヨタはサイモン氏がほぼひとりで仕切っているのが特徴。一体何者なんだこの人は? となるワケです。
1967年生まれのサイモン氏は、大学卒業後の1988年に出身であるイギリスのデザイン会社に就職、翌年には日本の会社に転職します。いずれも職種は一般的なプロダクトデザイナーであり、クルマとは無縁でした。が、5年後の1994年、海外のデザインカルチャー経験者を欲していたトヨタに入社します。
しばらくはいちデザイナーとしてとくに目立った仕事はしていなかったようですが、転機になったのは2001年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「pod(ポッド)」です。ソニーとの共同開発によるクルマ版「AIBO」のデザインが役員の目に留まり、仕事の幅が広がって行ったといいます。
その後、2007年にグローバルデザインの統括部長に就いて以降、欧州拠点のEDスクエア社長、常務理事として先進技術開発カンパニー統括とキャリアを重ね、2019年にはデザイン領域領域長に就任し、前任の福市得雄氏からトヨタとレクサスのデザイン統括を引き継ぎます。そして今年、執行役員としてチーフブランディングオフィサーに就きました。
「最近のトヨタ車のデザインはいい感じ」という声は、ユーザーはもとより自動車評論家からも聞かれますが、その背景にはこうしたサイモン氏の経歴が関わっているようです。ただ、それは同氏がチャカチャカと優れたスケッチを描いているワケじゃなく、いいデザインを生む環境を作っているのです。
マネジメント能力とセンスを兼ね備えた逸材
近年、産業界に限らずあらゆる社会で「デザイン思考」が注目されているのをご存じでしょうか? デザインというと丸いとか四角いなどカタチを思い浮かべてしまいますが、それは最終的なスタイリングのこと。デザインとは、対象が抱える課題を発見して整理、その最善の解決策を導く一連の作業を指し、その「課題解決力」に社会が注目しているのです。
クルマ業界でも、デザインと言えばもっぱらスタイリングの話が先行しがちですが、サイモン氏はおそらくプロダクトデザイナーの経験などから「デザイン思考」を深く理解しているのでしょう。その上で、最終的なスタイリングには純粋に「美しさ」を求めています。
同氏による発表会では、スタイリングだけでなく歴史や社会的背景、そのクルマのあるべき姿など多岐にわたる話が展開されます。たとえば、ランドクルーザー250ではクロカンの歴史や原点風景、センチュリーではトヨタの誇りや日本人の感性、といった具合。
最近のトヨタ車にハズレが少ないのは、おそらくこうした諸課題を発見、整理した上でのデザイン開発が軌道に乗っているからで、それはまさに企業ブランディングそのもの。であれば、トヨタがチーフブランディングオフィサーであるサイモン氏にプレゼンテーションを任せているのも頷けます。
ちなみに、マネジメント能力とセンスのよさを兼ね備えたデザイナーは稀だそうで、その点で同氏は、かつていすゞから日産に移籍した中村史郎氏に近い存在なのかもしれません。デザインを広く理解したトップの元では、現場は非常にオープンで自由な環境となり、優れた提案が集まるのも必然と言えるでしょう。
さて、今回はサイモン・ハンフリーズ氏の人物像に迫ってみましたが、先のとおり最近のハズさない新型車群を見ると、同氏の本格的な活躍はむしろこれからなのかもしれませんね。
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