新世代に向けた新世代のスーパーサルーン
最新のアウディRS3 サルーン。どこか真夜中の湾岸エリアが似合いそうに感じるのは、筆者だけだろうか。ビデオゲームのニード・フォー・スピードや、映画のワイルド・スピードには年齢的にハマったことはないが、金曜日の深夜に近い香りがある。
【画像】新型の四輪駆動 BMW M3とアウディRS3 サルーン M4とRS3 スポーツバックも 全111枚
ルックスは、アフターマーケット・パーツのような、ブラックのトリムやホイールで統一されている。ヘッドライトに一体化されたLEDデイライトは、ドアロックを解除するとR、S、3と順に点灯する。街角のネオンサインのように。
いわゆる、ドリフト・モードも付いている。ローンチコントロールを機能させた時の撮影と、ティックトックなどのアプリとの連携が可能になったら、より完璧な、イマドキの若者向けのクルマになりそうだ。
少々皮肉めいているが、RS3 サルーンを否定するつもりはない。AUTOCARなどの自動車メディア以上に影響を持つ、SNSやカーカルチャーへ歩み寄っている。新世代に向けた、新世代のスーパーサルーンだ。
父親世代のクルマへ憧れる、息子世代は多くない。若い層は、若い層なりの道を歩む。自らのクルマだと主張できる、若々しいモデルを望んでいる。筆者自身も、父が愛していたオースチン・ヒーレーやMGBを、同じ頃は好きだと感じなかった。
最新のアウディRS3は、ちょっとワルだ。今っぽい、ターボブーストとドリフトが似合う。エグゾーストノートとローダウンは、カスタムカーの定石。アウディの開発者は、そんな嗜好へ合わせてタイトに仕立てたのだろう。
オプションで四輪駆動も選べる最新のM3
寒い冬に、ピーク・ディストリクト国立公園へ来た。グレートブリテン島の中心部に広がるワインディングが、今日の舞台。標高が高いエリアは雪が降っている。山頂付近は雲で見えない。クルマの横で立っていると、手足が凍える。四輪駆動が必要な条件だ。
生まれ変わったRS3の実力を確かめるのに、2022年の冬ほど最適な時はない。時期を重ねるように登場した、M xドライブを獲得した最新のBMW M3 コンペティションも。
CセグメントのRS3に、DセグメントのM3。アウディに分が悪く見えるかもしれないが、優劣ではなく、個々の能力を確かめることに主眼がある。価格差を考えれば、M3が優勢で当然といえる。
約40年の歴史を持つBMW M3は、現行型で6世代目。AUTOCARの読者ならご存知かと思うが、オプションで四輪駆動システムの、M xドライブの搭載が可能となった。
アウディRS3は、2代目A3の時代に初登場してから10年ちょっと。高性能コンパクトモデルとして、その地位を一気に確立した。
新しいRS3 サルーンには、トルクベクタリング機能付きの電子制御デフが標準装備。オプションに課金すれば、カーボンセラミック・ブレーキや、アダプティブ・スポーツサスペンションなども選べる。
それらのアイテムで武装すると、英国では6万7500ポンド(約1046万円)に達する。かなり特別なプライスだが、最高速度289km/hのアウディを入手できる。1万1000ポンド(約170万円)ほど追加すれば、M3 コンペティションも視野に入ってくるが。
エキサイティングな体験を想起させる車内
さて、夜の都心が似合いそうなRS3を堪能するのに、自然豊かな昼間のピーク・ディストリクト国立公園は場違いかもしれない。でも道路は閑散としているから、思い切り走れる。路面は濡れ、滑りやすい。凍えるほど寒いが、凍結していない。
気温は5度。たまに見かける人影は、本気のサイクリストと、装備で身構えた登山客。彼らはクルマに興味はなさそうだが、イエローのRS3 サルーンには目が止まるらしい。想像以上に、アピール力があるようだ。
エンジンを温めながら、インテリアを観察する。コンパクトなアウディの車内はとても快適。デジタル技術の内容では、BMW M3といい勝負といえそうだ。
大人4名もカバーできる実用性では、車格が大きいM3が当然のように有利。ドライビングポジションもより自然だし、内装も豪華。突出したパフォーマンスを、デザインからも感じさせてくれる。
M3の運転席に座ると、真っすぐ伸びた足先へペダルが自然に並ぶ。サイドボルスターが立ち上がった、カーボンファイバー製のバケットシートが体を包む。オプションだが。
座っているだけで、エキサイティングな体験が待っていることを想起させる。ステアリングホイールとメーター用モニターが、真正面に重なる。慣れ親しんだレイアウトに、少し気持ちが落ち着く。
5気筒ターボの威嚇的なサウンド
RS3 サルーンは座面の位置が高く、操作系に対して身体が全体的に上に来る。興奮を誘うスタンスではないが、視界は良好。クルマの四隅も掴みやすい。
アウディの内装に、見入ってしまう部分はあまりない。市場によってはカラフルな装飾トリムも選べるそうだが、英国仕様はモノトーンだけの設定。ブラックのレザーに、グレーかカーボンの装飾トリムが組み合わされる。
リアシートは、高校生くらいの子供には少し窮屈かもしれない。それ以下なら不平は出ないだろう。インテリアの実用性や素材の質感、華やかさでは、M3に届いていない。エモーショナルな刺激も。
RS3 サルーンの赤いスタートボタンをして、アウディ謹製の5気筒ターボエンジンを目覚めさせる。BMWのストレート6へ負けないほど、威嚇的なサウンドを放つ。5気筒らしい特長も併せ持っている。
両車とも、デフォルトのドライブモードは至って社交的。だが指先の操作で、アクティブ・エグゾーストとサウンド・ジェネレーターを、開放的なものに変えられる。アダプティブダンパーと駆動系、スタビリティ・コントロールの設定も同様に。
400psを発揮するRS3 サルーンのパワーウエイトレシオは、約253ps/t。車重がかさむBMW M3の最高出力は510psで勝るが、その差は33ps/tに過ぎない。
今回走るエリアの路面は、滑らかなものから小石が浮いたものまで様々。タイトなコーナーと、大きな起伏が連続する区間に、長いストレートが組み合わされている。より軽量なRS3がM3に並ぶ能力を示すことも、可能かもしれない。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
っていうか、ノーマル3シリーズの佇まいが余りにも飽き飽きしたツマラナイものに感じられるので。
とは言えM3は価格バカ高いし、キャラもちょっとバカっぽい。
そんな自分には、M430i がベストチョイス、、、