ホットハッチに並ぶスタートダッシュ
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
【画像】ヒュンダイ・アイオニック5 競合する純EVモデルと比較 全107枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ヒュンダイ・アイオニック5の動的性能は充分に活発。0-100km/h加速時間は5.2秒とされており、ゴルフRやメルセデスAMG A35など四輪駆動のホットハッチに並ぶスタートダッシュを決められる。
航続距離重視の後輪駆動版は、ここまでエネルギッシュではない。そのかわり、482kmの距離を一度の充電で走り切れる。
英国価格は、バッテリー容量が58kWhで後輪駆動のアイオニック5なら、4万ポンド(600万円)以下。電気モーターの最高出力は170psに設定され、0-100km/h加速は8.5秒となるという。
電圧800Vのシステムを採用し、最大350kWの超高速充電に対応。計算上は充電を初めてから5分で、約100kmぶんの電気を蓄えられることになる。
ドライビング体験は、斬新なボディデザインからイメージするほど、強い特徴があるわけではない。しかし、充分な説得力はある。軽く正確な操作系に上質なシート、優れた視認性で、安楽に運転できる特性が与えられている。
0-100km/h加速から想像するような、コーナーの頂点をすり抜けるホットハッチ的ではない。とはいえ、ファミリーカーサイズのクロスオーバーとして、当然の内容ではあるだろう。
サスペンションは長波長の揺れが若干残る印象で、量産仕様として上層部の承認が降りるまでに、もう少し引き締めても良いかもしれない。それでも、この価格帯の純EVとしては感心するほど乗り心地に長けている。
印象的なまでに居心地が良いインテリア
シンプルな2本スポークのステアリングホイールを回せば、幅の広いフロントノーズを狙った通りに操れる。狭い道でも扱いやすい。高速道路も得意分野。ホイールは20インチと大きいが、走行中は平穏で安定感もある。
このソフトな個性は、インテリアデザインにも反映している。通常触れるような場所にはリサイクル素材か持続可能性を意識した素材が用いられ、車内は快適性と利便性に焦点が向けられている。
アイオニック5のフロアは、ほぼ車内幅いっぱいに渡ってフラット。前列シート周りの空間は広々しており、スリムなシートデザインのおかげで2列目シートの空間にもゆとりがある。電動で135mmもスライドが可能だ。
フロントシートには、メルセデス・ベンツSクラスのリアシートに付いているような、ふくらはぎをサポートするカーフレストのほか、深くリクライニングできる機能もオプションで追加できるという。印象的なまでに、居心地が良い。
ダッシュボードの半分を埋めるのが、12.3インチの2面のモニター。同時に、実際に押せるスイッチ類も充分に残されている。触覚フィードバックは、あまり良くは感じられなかった。
最大トルクは61.5kg-mもあり、ドライバーが望めば周囲が驚く勢いでスピードを高められる。特にステアリングホイールのセレクターでスポーツ・モードを選べば、目をみはるほど。
運転しやすい特徴とクルマとしての個性
タイヤはSUV用のミシュラン・パイロット・スポーツ4。シャシー性能が高く、グリップ力も不足ない。力強いモーターのパワーをしっかり受け止め、サスペンションの快適な速度域を超えるスピードまで、アイオニック5を突き進められる。
大型のハッチバックとして、操縦性のバランスは良好。リア側に主役があるパワートレインの構成は、より車高の低いクーペにも載せたいと思える。ちなみに同じプラットフォームを用いて、ヒュンダイはクーペを検討中だという。
ここ10年のヒュンダイの中で、最も重要な意味を持つであろうアイオニック5。プロトタイプとはいえ、90分の試乗時間が充分ではないほど濃い内容を持つクルマだった。
考え込まれた人間工学的なデザインや、不足ない航続距離と動的性能を備えていることは間違いない。さらに運転しやすい特徴が、ヒュンダイ・アイオニック5の訴求力をしっかり支えている。
多くのライバル純EVに欠けている、クルマとしての個性が与えられている点も強み。多くの競合メーカーにとって、手強い存在になるかもしれない。
ヒュンダイ・アイオニック5 ロングレンジAWD プロトタイプのスペック
英国価格:4万4000ポンド(660万円/予想)
全長:4640mm
全幅:1890mm
全高:1600mm
最高速度:185km/h
0-100km/h加速:5.2秒
航続距離:410km(予想)
CO2排出量:−
車両重量:2150kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:72.6kWh
最高出力:306ps
最大トルク:61.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック
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