Porsche 911 Carrera 4S vs Lotus Evora GT410 SPORT
ポルシェ 911 カレラ 4S 対 ロータス エヴォーラ GT410 スポーツ
ライバル対決「新型ポルシェ 911 カレラ 4S 対 ロータス エヴォーラ」山田弘樹の見解【動画レポート】
新型911と対峙するのは“911イーター”のエヴォーラ
ポルシェ911が最新世代の“タイプ992”となり、そのロードバージョンにおける理想型といえるカレラ4Sが、遂に日本へと上陸した。果たしてその真価はどこにあるのか? それを浮き彫りにするべく用意されたのは、かつて“911イーター”として名乗りを上げたロータス・エヴォーラ。そのロードゴーイングGTである「EVORA GT 410 SPORT」だった。
この取り合わせは非常に面白いと感じた。“軽さ”が“剛性”と一騎打ちをする闘いだからだ。だがその一方で、いささか無理があるのではないか? という思いもあった。
10年以上前に登場し、今なお過給機と水冷式インタークーラーを備えた程度で大きな変更のないエヴォーラ。これが着実なモデルチェンジを繰り返し、その度に必ず進化を遂げるドイツの巨人を相手とするには、ちょっと無理があるのではないか? と思えたのだ。
だがしかし。そんな憶測が鮮やかに覆されるのだから、クルマというのは本当に面白い。この2台を直接比較するという貴重な機会を得たことで、この2台ががっぷり四つにお互い個性を主張したのである。
911の歴史はRR克服の歴史・・・それは過去の話だ
8代目となる992型で一番強く感じたものは何か? それは911が、己が目指す理想へとまた一歩近づいたということだった。わかりやすく言えばそれは、リヤエンジンの悪癖を克服することだ。ご存じの通り911の歴史はリヤエンジン・リヤドライブ(以下RR)との格闘の歴史だった。356から受け継いだそのレイアウトにフラット6をブチ込んで上級移行し、常に慣性重量と闘いながら己を磨き上げてきた歴史だ。
たとえそこに子供以外が座ることはなくとも、小旅行ができるくらいのバッグや小型スーツケースを積むことができるリヤスペース。これがいかに大切なものなのかを、私は1995年式911カレラ(タイプ993)を手に入れて、身をもって知った。
この小さなラゲッジによって911を日常の友とすることができ、わたしのような独り身の男に、もう一台余分な実用車を買わずに「スポーツカーを手に入れる」という壮大な夢をも実現してくれるのである。
RRがもたらす挙動の不安さは微塵もない
そして、こうしたギリギリの実用性をRRで維持するハンディこそが、同時に911の性能を磨き上げた。RRの悪癖を徹底して抑え込むためにボディ剛性は果てなく向上し続け、超高速域での安定性はモデルを追うごとに高まっていった。
これは991IIあたりから感じていたことだが、いまやこのRRをまったく意識しないところまで911は進化を果たしたと私は思う。
最新モデルである992型のカレラ4Sは、まさにこれを絵に描いたような一台だった。もはやその乗り味には、RRがもたらす挙動の不安さなどまったく感じられない。
無類の安定性と盤石の接地感を示す
991から2450mmのホイルベース長をそのまま受け継ぎ、全長を増やしながらもそれ以上に前/後トレッド(1591/1557mm)を拡大したボディは、明らかに回頭を性重視したディメンジョン。しかしながら高速コーナーでの姿勢は、極めて落ち着き払っている。
そこにはカレラ4S最大の特徴となるトルクスプリット式4WDの安定性と、991からさらに洗練を帯びた、いやまったくその存在を感じさせなくなったリヤ・アクスル・ステアリングの、同位相制御が大きく影響しているのだと思う。
なおかつカレラ4Sは常にそのフロントタイヤに駆動力を掛けておくことで、二輪駆動であるカレラSよりも骨太で接地感の高いステアフィールを日常から得ている。
新型911に日本の道路環境は狭すぎる
ただしその接地感の高さには贅沢な悩みがあることもわかった。なぜならカレラSは、普段はまるでスポーツカーらしさを感じさせないほどフールプルーフなドライブフィールなのだが、いざサスペンションに荷重を掛けていくと新世代シャシーが持つ剛性感を一気に高めてくる。得も言われぬ高揚感を味わうことができるからだ。
対してカレラ4Sは、そこに踏み込む前に前輪のトルクがタイヤのCP(コーナリングパワー)を立ち上げてしまう。さらに言えば、ターンインでのシャープさは、やはりカレラSの方が鋭い。
911をスポーツカーとして捉えたとき、この自らがドライビングで引き出す一体感を取るか、カレラ4Sのオールマイティさを取るかは難しい選択だ。なぜならもはや911の潜在能力を引き出すには、カレラSでさえ日本のドライブ環境は狭すぎるからだ。ならばカレラ4Sを選び、日常からそのステアフィールを楽しむのはありだと思う。
エヴォーラの走りの方向性は911の対極を成す
そんな堂々巡りを横目にエヴォーラGT 410 SPORTは軽やかに己をアピールした。ロータスのトップグレードとなるエヴォーラ。その骨格には同じアルミ製のバスタブ構造ながらも、エリーゼやエキシージに比べて大きい「ラージプラットフォーム」が採用されている。
これによってエヴォーラは911同様小さなリヤシートを備えた。サイドシルの厚みを減らし乗降性を向上させて日常性を大きく向上させたが、その走りは時を経るごとに911とは対極に向かっていったと私は思う。
デビュー当時から搭載するトヨタ製3.5リッターV6エンジンは、スーパーチャージャーを得ながら度重なる改良を施されたことによって、416psにまでパワーアップされた。なおかつ車重は6速MTモデルで1331kgと、1565kg(DIN表記)のカレラ4Sに対して234kgも軽い。パワーウェイトレシオに換算するとエヴォーラは3.2kg/psと、カレラ4Sの3.47kg/psを僅かに上回る。カレラ4SがRRの4輪駆動であることを踏まえれば、まさにがっぷり四つの取り組みである。
“柔の身のこなし”でコーナーに飛び込むエヴォーラ
911カレラ4Sが剛のハンドリングなら、エヴォーラGT 410 SPORTはまさに柔の身のこなしだ。ステアリングの切り始めで立ち上がるのは、カレラ4Sのようなタイヤのグリップ(CP)というよりも操舵応答性。微小舵角からしなやかにサスペンションが追従し、前後に結ばれた見えないロール軸を中心に車体が傾いてタイヤのグリップ感をじわっと上げていく。
ロールは穏やかながらも体感速度はかなり速い。フロントノーズは鋭く切れ込み、911カレラ4Sよりも明らかに速くクリッピングポイントへと到達する。このあまりに切れ込む感覚は、慣れない者にとって少し怖さを感じるかもしれないほどだ。だからスタビリティの高さが欲しいならば、よりトラックユースを意識して足まわりを固め、ウイングを備えた「GT430」の方が安心感は高いと思う。
ナチュラルなステア特性に脱帽せざるを得ない
しかし、どこまで車両を安定させても、このターンインの鋭さこそがロータスなのだ。そしてコーナリングでは、実はカレラ4Sよりも長い2575mmのホイールベースとトルセンLSDのトラクション性能、そして見えざる空力性能が影ながら車体を安定させている。とてもその背中にV6ユニットとトランスミッションを横置き搭載して、さらにスーパーチャージャーをも重ねたとは思えないナチュラルなステア特性。これを実現するロータスの手腕には脱帽せざるを得ない。
そしてここに、416psのパワーが炸裂する。カレラ4Sの精緻極まりないエンジンは、確かに工業製品としての魅力に満ちている。しかし排気系にタービンを置かないスーパーチャージャーのサウンドは、ワントーン迫力と気持ち良さが違う。内燃機関の時流において明らかに進化を拒んだやり方は、ある意味反則。恐ろしく悪い燃費などを考えても決して褒められはしないはずなのだが、趣味性の高さとしては抜群の純度を誇る。また水冷式インタークーラーを備えた圧力損失がうまく働いているのか、そのパワーが非常に扱いやすいのである。
試乗前の予想は完全に覆された
本来であればロータスだって、ポルシェのようにエンジンを縦置きして理想を追いかけたいはずだ。マクラーレンのようにカーボンモノコックを使えば、さらなる軽量化だって果たせるだろう。しかしそれをすることでコストが高騰するくらいならば、自分たちの技術力で走りを磨く。ややその手法は強引で、節約したコストが車両価格よりも利益に反映されている気がしなくもないのだが、この走りを味わうといつも唸らされ「仕方ないか・・・」と納得してしまう。
特に今回911カレラ4Sと比較したことによって、ロータスが生粋のスポーツカーであることを強く再認識することができた。なおかつこのGT 410 SPORTは、しなやかなサスペンション剛性をもってロードユースをも苦にしない。試乗前にはポルシェの足下にも及ばないだろうと考えていた私の予想は完璧にひっくり返されたのだ。乗り手さえ伴えばこのエヴォーラGT 410 SPORTは、最新の911カレラ4Sを食える逸材である。
911が追求する理想を実現したタイプ992
よって「スポーツ性能」だけでこれを論じれば、私はロータス・エヴォーラGT410に軍配を上げる。そしてこれと比べるのであれば、911の本性を剥き出しにするクラブレーサー、「GT3」に登場してもらわねばならないと思った。
むしろカレラ4Sは、911の悲願を達成したスポーツカーになったのだ。誰もが911をリヤエンジン・リヤドライブであることさえ忘れ、「ポルシェのスポーツカー」として楽しむことができる。これこそが、長年911が追い求めた理想像なのである。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 911 カレラ 4S
ボディサイズ:全長4519 全幅1852 全高1300mm
ホイールベース:2450mm
トレッド:前1589 後1557mm
車両重量:1565kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2981cc
ボア×ストローク:91.0×76.4mm
圧縮比:10.2
最高出力:331kW(450ps)/6500rpm
最大トルク:530Nm/2300 – 5000rpm
トランスミッション:8速DCT(PDK)
駆動方式:AWD
ステアリング形式:電動パワーアシスト(オプション:リヤアクスルステアリング)
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキシステム:前6ピストン 後4ピストン(アルミモノブロック)
ディスク径:前350×34 後350×28mm
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J)後305/30ZR21(11.5J)
最高速度:306km/h
0 – 100km/h加速:3.6(※3.4)秒
車両本体価格(税込):1804万8148円
※スポーツプラスモード時
ロータス エヴォーラ GT410 SPORT
ボディサイズ:全長4390 全幅1850 全高1240mm
ホイールベース:2575mm
トレッド:前1564 後1575mm
車両重量:1331kg(※1320kg)
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージド
総排気量:3456cc
ボア×ストローク:94.0×83.0mm
圧縮比:10.8
最高出力:306kW(416ps)/7000rpm
最大トルク:420Nm/3500rpm
トランスミッション:6速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:ラック&ピニオン
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキシステム:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前370 後350mm
タイヤサイズ(リム幅):前235/35ZR19(8.0J) 後285/30ZR20(9.5J)
最高速度:275(※305)km/h)
0 – 100km/h加速:4.1(※4.2)秒
車両本体価格(税込):1547万7000円(※1496万円)
※MT仕様
【問い合わせ】
ポルシェ カスタマーケアセンター
TEL 0120-846-911
エルシーアイ
TEL 03-5754-0805
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