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最上級コンバーチブル ロールス・ロイス・シルバークラウドIII キャデラック・シリーズ62 後編

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最上級コンバーチブル ロールス・ロイス・シルバークラウドIII キャデラック・シリーズ62 後編

慎ましやかなロールス 大胆なキャディ

1960年当時、ロールス・ロイス・シルバークラウド・アダプテーション・ドロップヘッド・クーペの英国価格は、7601ポンド。キャデラック・シリーズ62 2ドア・コンバーチブルの3倍という金額だった。

【画像】最上級コンバーチブル 1960年代のロールス・ロイスとキャデラック 現行モデルも 全102枚

今回ご紹介する1962年式シルバークラウドIIIのアダプテーションは、1シーズンのみの製造で極めて珍しい。丸目4灯のヘッドライトが特徴で、37台しか作られていない。ベントレーS3としては、4台だけだった。

このモデルは、究極のシルバークラウドとして評価されることも多い。近年の取引価格は、100万ポンド(約1億6300万円)に迫る例もあるほど。

ロールス・ロイスとキャデラック、2台のコンバーチブルを並べてみると、シルバークラウドよりシリーズ62の方が350mmも長い。大胆なスタイリングは、エレガントさを漂わせる。

フィンの付いたキャデラックの巨大なサイズが、アメリカで一般的になった背景にも興味を抱かずにはいられない。2022年に見ると、まるで別の世界の乗り物のようだ。

対するロールス・ロイスは、どこか慎ましやか。プロポーションもディティールも美しい。トランクは遥かに短く、キャビンもひと回りコンパクト。

キャデラックの重そうなフロントグリルや肉厚なフロントバンパーを眺めていると、その手間数を想像してしまう。巨大なボディパネルも含めて、製造のために準備された工作機械や成形型は、膨大なものだっただろう。

ドアを閉めると、心強い音を立てて噛み合う。ボディは頑丈そうだ。

対象的な雰囲気と仕立てのインテリア

ボンネットの開き方や、その内側に収まる鋳鉄製エンジンの見た目などは、いかにも工業的。細部に至るまで気が配られたロールス・ロイスとは違う。HJミュリナー社が1台へ数週間かけていたのに対し、キャデラックの工場は数日で仕上げていた。

シルバークラウドのインテリアは、落ち着いたウッドパネルと、シンプルにメーターの並んだダッシュボードが英国車的。アイボリーのセパレート・シートが優しい雰囲気だ。

キャデラックの水平貴重で、真っ赤な内装とは対照的でもある。レザー張りのベンチシートは電動で調整できる。ステアリングホイールのポジションは、こちらの方が好ましい。スイッチ類も、より現代モデルに近い。

2台ともに、加速の勢いに目立った特徴はない。不足ない動力性能で、活発にスピードを乗せる。同乗者を驚かせることもないだろう。ギア比はロングで、4速に入れれば160km/h以上の速度域でクルージングできそうだ。

特に変速が滑らかなのは、キャデラック。ほぼ意識することはない。ロールス・ロイスが製造した、基本的には同じ4速ATも劣らず上質。

一般的に、サルーンと比べると洗練性で劣るコンバーチブルだが、シャシーとボディが別々のセパレート構造だけあって、どちらも構造的には有利。路面変化でボディがきしむこともなく、タイヤやドライブトレインからのノイズも遮断されている。

雲に浮いたように静々と走る

コイルスプリングが支えるキャデラックの乗り心地は、クラウドより柔らかい。だが、英国のように荒れた路面を少し高めの速度域で走ると、前後左右にボディが揺れてしまう。

たくましいエンジン任せにスピードを出したくなるが、ドラムブレーキはすぐに過熱するから、気持ちは抑えた方が良い。以前、ベーパーロック現象を起こしたことがある。当時最高水準といえたドラムブレーキを持つ、ロールス・ロイスとは異なる。

比べるとボディ幅の狭いロールス・ロイスは、ドライビングポジションが起き気味。郊外の道を、より気軽に駆け回れる。操舵に対する反応は一定しており、タイトなコーナーでも自然に大きなボディを導ける。路面からの感触も、良く伝わってくる。

キャデラックのステアリングホイールは片手で軽々と操れるほど軽く、これはこれで狭い道で有効。しかし、手応えは非常に薄い。細身のリムを回して、大きなフロントノーズの向きを変えるという「ハンドル」に過ぎない。

運転席からの視界はともに良好で、見た目以上に扱いやすい。そして、メカニズムは至って静か。

シルバークラウドは文字通り雲に浮いたように静々と走るが、アクセルペダルを踏み込むと、キャデラックより若干大きいノイズが聞こえる。とはいえ、ボンネットの内側で空気が勢いよく流れるような、洗練されたものではある。

キャデラックには、V8エンジンらしいドロドロとした響きが常にうっすら伴う。スチール製のビッグブロックらしい。

独善的なカリスマ性やエレガントさ

1960年代初頭の巨大なコンバーチブルは、今見ると余りに浮世離れしている。キャディラックで狭い駐車場を曲がれば、尖ったフィンが子供の顔を刺しそうだ。

燃費は3.5km/L前後でしかなく、巨大なV8エンジンを載せたボディが、2022年のヴィーガン的環境でヒーローになることはないだろう。効率性という言葉とは、無縁だといっていい。

1962年式のロールス・ロイス・シルバークラウドIII アダプテーション・ドロップヘッド・クーペも、1960年式のキャデラック・シリーズ62 2ドア・コンバーチブルも、そんな社会を無視するように強い独自性を放っている。

あくまでも非常に裕福な人々を、豪華で素早く、心地よく移動させるためのクルマとして作られている。オーナーを喜ばせるための、最高が目指されていた。

それ故に、21世紀では見られない、独善的なカリスマ性やエレガントさが漂っている。一度乗れば、より単純だった時代へワープしそうな、そんな存在感だ。

協力:クラシック・オートモビルズ・ワールドワイド社

ロールス・ロイスとキャデラック 2台のスペック

ロールス・ロイス・シルバークラウドIII アダプテーション・ドロップヘッド・クーペ(1959~1963年/英国仕様)のスペック

英国価格:7000ポンド(新車時)/70万ポンド(約1億1410万円)以下(現在)
販売台数:157台(シリーズ合計)
全長:5365mm
全幅:1900mm
全高:1645mm
最高速度:185km/h
0-97km/h加速:10.1秒
燃費:3.5-5.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:2235kg
パワートレイン:V型8気筒6230cc OHV自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:−
最大トルク:−
ギアボックス:4速オートマティック

キャデラック・シリーズ62 2ドア・コンバーチブル(1959~1960年/英国仕様)のスペック

英国価格:7000ドル(新車時)/8万ポンド(約1304万円)以下(現在)
販売台数:2万5130台
全長:5715mm
全幅:2029mm
全高:1427mm
最高速度:193km/h
0-97km/h加速:10.3秒
燃費:3.2-5.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:2295kg
パワートレイン:V型8気筒6384cc OHV自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:329ps/4800rpm
最大トルク:59.3kg-m/3100rpm
ギアボックス:4速オートマティック

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