ホンダは、2030年をめどにすべての軽自動車を電気自動車(EV)にする。来年、発売する軽商用車「N―VAN(エヌバン)」のEVを皮切りに順次、EVへと切り替える。日本のEV普及ペースは他の主要国より遅いが、通勤や買い物などの近距離利用が多い軽EVが売れ始めた。40年にすべての四輪車をEVなどのゼロミッション車(ZEV)にする方針を掲げるホンダだが、国内では軽からEV化に舵を切る。
ホンダは、30年までに国内で販売するすべての新車を電動車にする方針も持つ。35年とする政府目標より5年早い。理由の一つに、日本の30年度燃費基準(乗用車)がある。
ホンダ、商用軽EV「N-VAN e:」で年間2万台の販売計画 2024年春発売 EV市場で存在感高める
30年度基準は、20年度基準に対し、4割ほど燃費値が切り上がる。特に燃費の改善が必要なのが軽自動車だ。国土交通省によると、ホンダが10月に発売した新型「N―BOX(エヌボックス)」の燃費は1リットル当たり19.1~21.6キロメートル(WLTCモード値)。基準値(同27.2~27.8キロメートル)に満たない。その他の軽も、今は2~4割ほど基準値を下回る。排気量が660ccに制限され、安全装備の増加で車重が重くなっているためだ。
30年度基準を満たすにはエンジンや変速機の改良だけでは足らず、電動化に頼ることになる。EV化のほかにハイブリッド機構を用いる手もあり、ダイハツ工業は軽に搭載できるシリーズ式ハイブリッド機構を開発中だ。
ホンダも、燃費改善効果の高いハイブリッド機構を軽専用に開発していた。しかし、遅くとも40年には不要になるハイブリッド機構を専用開発するのは採算が合いにくいと判断し、一足飛びにEVへ切り替えることにした。
先陣を切るのがエヌバンのEVだ。熱マネジメントの工夫などで210キロメートルの航続距離を確保し、200万円以下の価格で投入し、年間で約2万台の販売を計画する。稼働率が高い商用EVで性能や使い勝手を改良し、後続のEV開発に役立てる。
ホンダは「N―ONE(エヌワン)」ベースの乗用軽EVを25年に投入することをすでに表明済みだ。最量販車種であるエヌボックスのEVも開発を進めている。また、二輪車用に開発した交換式電池「モバイルパワーパック」を搭載したエヌバンの実証も始めており、EV化に伴う新たな事業モデルも模索中だ。
ホンダとして、まずは国内販売の過半を占める軽をEV化し、自社の40年目標やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)につなげる。
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