スカイラインファンの聖地として知られる長野県岡谷市の「プリンス&スカイラインミュウジアム」。初代館長にはスカイラインの父、櫻井眞一郎氏、現館長に伊藤修令氏と歴代スカイラインの開発に携わった技術者が名を連ねる自動車博物館です。今年の展示では2人に縁の深いオーテックジャパンがかつて商品化した4ドアのスカイラインGT-Rとも言うべきモデルが展示されています。
6代目R30型、7代目R31型では設定されることがなかったGT-Rの称号が復活したR32型スカイライン。1989年のデビュー以降レースの世界でも大活躍したR32型スカイラインGT-Rは2ドアのみの設定でしたが、その心臓部たるRB26エンジンを搭載した4ドアモデルが1992年にオーテックジャパンの手によって限定189台生産されます。それがスカイライン オーテックバージョンです。搭載されたRB26はノンターボで4段ATが組み合わされるという本家GT-Rとはかなり異なる位置付けです。
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じつはこのクルマ、全長4580mm×全幅1965mm×全高1360mmとボディは5ナンバーサイズで駆動方式はアテーサE-TSによる4WD。つまりは当時発売されていたスカイライン4ドアGTS-4がベースです。発売当時のカタログに「(前略)~レースの洗礼を受けたメカニズムの投入。このスカイラインが具現化したものは、まさにGTカーの本質である。」とあり、勝つためのマシンとしての性格が強かった本家GT-Rと違い、高品位なグランドツアラーとして位置付けています。
そのためパワーはGTS-4が搭載するRB20ターボの215PSに対しプラス600ccのNAエンジンは220PSと控えめながら、パワーよりフィーリングにこだわり吸排気からカムシャフト、ピストン、そして制御系にいたるまでオーテックオリジナルという贅沢な内容は好景気に沸く90年代らしい1台といえるでしょう。
外観で特徴的なのは何と言ってもイエロイッシュグリーンパールメタリックと呼ばれる専用カラーにGT-R風のフロントグリルです。通常モデルでもオプションで選べるエアロバンパーには立体的に見える凝った塗装のオーテックジャパンのマークが描かれ、大きなキャリパーが見える同色の専用5本スポークホイールも相まって特別感満載です。
内装はちょっと懐かしい感じ。ATのシフトノブやCDデッキを備えた純正オーディオに90年代を強く感じます。展示車両は個人オーナーの所有車で、ミュージアムコンディションというより、日常使いによる適度なヤレがあり、それがむしろ30年という時の流れも感じなかなかいい雰囲気です。世代によっては、フェアレディZならZ32型、FFセダンなら初代P10型プリメーラ、そしてBe-1、パオ、フィガロと立て続けにパイクカーをリリースした当時の日産の勢いを思い出す人もいるでしょう。
擦れてしまったエクセーヌとダブルラッセル地のオリジナルシートはオーナーさんによって交換されていましたが、同じR32型25Xの本革シートとなかなかマニアックな選択。このクルマを選んだ理由を尋ねると「スカイラインファンなら誰もが知るスカイラインの父、桜井眞一郎氏がオーテック時代に携わった最後の1台だから」とのことです。ファンの想いを感じます。
レースでの勝利を念頭に置き開発されたGT-Rのエンジンを移植したスカイラインながらハイパワーよりもフィーリングにこだわったという「スカイライン オーテックバージョン」は今振り返ってもその異色さが際立ったモデルです。
ちなみに現在「プリンス&スカイラインミュウジアム」では、後継のR33型GT-Rの4ドアバージョンも展示中。RB26が搭載された2台の4ドアスカイラインが揃って展示されているのは貴重です。
〈文と写真=高橋 学〉
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みんなのコメント
ケアレスミス。
この車は会社のそばで乗っている人がいるらしく、たまに見かけた時は見入ってしまいます。
バブルの残り香が漂うとはいえ
バブル崩壊後で好景気に
沸いてはいなかったよ。
むしろ日産としては
いよいよやばくなってきて
経営危機の足音が
聞こえはじめていた時期で
各車大幅にコストダウンされていて
R32も後期で質感が下がっていた。