張さんの運転で湯沢町を走る。窓を少しあけると、快音が車内にも響く。訊くと、エンジンやマフラーは純正のままという。
「いいマフラーの音とは、まさにこういう音なんでしょうね。購入したクルマの多くは、マフラーを含め色々とカスタマイズしましたが、B8 4.6リムジンはほとんど手を入れていません」
モータースポーツ復活の鍵は? 現役ドライバー&監督に訊く!(後編)
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B8 4.6 リムジンのトランスミッションは6MTのみ。アクセルをグッと踏み込むと、シートバックに身体がグッとおされる。助手席にいても、相当パワフルなエンジンが搭載されているのがわかる。張さんの口元が緩む。
「自然吸気のV8エンジンはホントに気持ちいいですよね。アルピナも今、すべてのモデルがターボ付きエンジンになってしまいましたから……」
【2桁ナンバー物語 Vol.1 春日部33のブガッティ EB110 前編/後編】
【連載:29歳、フェラーリを買う Vol.38 フェラーリと銭湯】
搭載する4.6リッターV型8気筒エンジンは、最高出力340ps/5700rpm、最大トルク480Nm/3900rpmを発揮する。駆動方式はFR(後輪駆動)。SRSエアバッグ付きステアリング・ホイールは純正のまま。当時の3シリーズと異なるアルピナ専用デザイン。ワインディングに入ると、ひらりひらりといくつものカーブを駆け抜けていく。
「自分の手足のように動くB8 4.6リムジンは最高です。V8エンジンを搭載しているとはいえ、今のクルマに比べれば軽いですし、それにボディ・サイズもコンパクトですからね。東京都内で乗るのにも最適です。普段、都内で乗っているB4 S ビ・ターボ クーペ(先代3シリーズベース)ですら、『ちょっと大きいな……』と、思う場面がよくありますから」
B8-4.6リムジンの正規輸入台数は30~40台といわれる。トランスミッションはゲトラグ製。目的地に到着後、B8 4.6リムジンを購入した経緯を張さんに訊いた。きっかけは、営業担当者の勧めだったという。
「アルピナの担当だったニコル・オートモビルズの須田さんが、『絶対に気にいると思いますから!』と言って数日間、B8 4.6リムジンを貸してくれたんです。で、乗ったら本当に気に入ってしまってすぐに買い換えてしまいました(笑)。M3も素晴らしいクルマだったのですが、それにも増してB8 4.6リムジンが魅力的だったんです。とくにV8NAのフィーリングは最高ですね」
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張さんは続けて「須田さんは僕の気持ちをよく理解してくれる素晴らしい営業マンです。普通、ある程度の年数乗っていると、営業マンの多くは買い替えを勧めるかもしれません。が、須田さんは、僕がB8 4.6リムジンを気に入っているのを知っているから勧めてはきません」と、話す。B8 4.6リムジンと出会い、かつ長期間所有し続けられているのは、優秀な営業担当者のおかげでもある。
「当時は今よりもアルピナがマイナーだったため、僕が購入したことで興味をもった友人・知人がアルピナを購入したから、須田さんにはそれなりに恩返し出来たかもしれないですね(笑)。ちなみに、実姉もB3(E46)、XD3とアルピナを乗り継いでいます。私が乗っていたのでアルピナの魅力が多くの人に伝わったのは嬉しいですね」
メータパネルはアルピナのロゴ入り専用デザイン。ダッシュボードに備わるシリアル・プレート。アルピナの魅力について話す張さんは終始笑顔だった。ところで、信頼性はいかに?
「B8 4.6リムジンについては、ほぼノートラブルです。コンピューターの故障で走行が不安定になるトラブルに一度見舞われたましたが、大きなトラブルといえばそれのみです。普段心がけているのは、暖機運転と定期的なオイル交換ぐらいです」
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リアウインドウには、新車購入時のシール(ハイオクガソリン使用)がそのままある。ちなみに、かつて所有していた5シリーズ(E34)ベースの「B10 ビ・ターボ」はそれなりに故障もあったという。
が、「鬼門だったターボ制御も、コンピューターを交換すれば解決しました。あらゆるクルマに乗ってきた経験と信頼できるショップがあれば、故障に対してはそれほど不安はないですね」と張さんは話す。
B10 ビ・ターボは5シリーズ(E34)をもとに開発された。搭載するエンジンは3.5リッター直列6気筒ガソリンターボ。最高出力は370ps/6000rpm。理想の1台張さんはB8 4.6リムジンと出会うまで、どんなクルマを所有さしてきたのか?
「はじめて購入したクルマはトヨタ『セリカXX(2代目)』です。次がトヨタの『スープラ(A70型)』。スープラはフル・チューニングして乗っていました。そして並行輸入のBMW『M635 CSi』に乗り換えましたが、故障が多くて大変でしたね。で、当時出たばかりの『850i』に買い換えてしまいました。その後はM3やB10 ビ・ターボなどを購入しました」
はじめて購入したクルマ、トヨタ『セリカXX(2代目)』は今なお所有し続けている。1989年登場の8シリーズ。「たしか、日本に上陸したばかりの1台を購入しました」と、張さん。張さんの愛車遍歴はユニークだ。日本車・輸入車問わずあらゆるクルマに乗っている。近年は、浅間山ヒルクライム用に初代ホンダ「シティ ターボII」を購入したというし(現在は売却)、マツダ「ロードスター」をもとに光岡自動車が開発した「ロックスター」も購入したとのこと(現在は納車待ち)。
「いいなぁと思うクルマはバラバラですね(笑)。ただ、近頃は“軽いクルマ”に興味を持つ傾向があります」と、話す。
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マツダ「ロードスター」をもとに、オリジナル・デザインのボディを持つ光岡自動車「ロックスター」も購入。現在は納車待ちとのこと。浅間ヒルクライム用に購入したホンダ「シティ ターボII」。現在は売却済。次の浅間ヒルクライム用に向け、現在はあらたなクルマを探しているという。「浅間ヒルクライムには、ちょっとふるい日本車で出走したいんです。今は、いすゞの初代「ピアッツア」などの中古車を探しています」と、張さんは話す。
B8 4.6リムジンとともに長年所有する「Z1」も軽さに惹かれて購入した1台だ。
「ちょうどバブルが崩壊した頃に中古で購入しました。前オーナーはすぐに現金が必要だったようで、交渉後、当初の販売価格より大幅に安く購入出来ました。Z1も20年以上所有しています。僕より妻が気に入っていますね。なんてたって妻は、出会った頃に2代目三菱『ランサー』のターボ・モデルに乗っていたぐらいですから」
「品川34」ナンバーのBMW「Z1」も20年以上所有しているという。奥は普段の足として使っているというアルピナの限定モデル「B4 S ビ・ターボ クーペ」。ちなみに張さんが所有するZ1は、なんとアルピナのエンジンに換装されている。実姉が乗られていたB3 3.3のエンジンに載せ替えたというのだ。
「Z1はいいクルマですが、搭載する2.5リッター直列6気筒エンジンのパワーは少々物足りなくて……」
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張さんのZ1は、本来搭載する2.5リッター直列6気筒エンジンからアルピナ「B3 3.3」が搭載する3.3リッター直列6気筒エンジンに換装されている。シートはオリジナルのまま。そういえばB8 4.6リムジンでは、装着したいと思ったオプションはすべて選んだという。張さんのクルマに対する情熱はすごい。納得出来る愛車に仕立てるべく、あらゆる手段を尽くす。さて、それほど情熱を傾けたB8 4.6リムジンを今後も所有し続けますか?
「息子も最近、クルマに興味を持っているようなので、彼が望めばいずれは譲りたいと思います。でも、彼が興味をそれほど持たなければ、B8 4.6リムジンを大切に乗ってくれる人に譲りたいですね」
「大切にしているクルマをもし手放すのであれば、やはりおなじクルマ好きの人に乗ってもらいたいですね」と、張さんは話す。ダカール・イエローのB8 4.6リムジンは珍しいようで、日本国内はもとよりアメリカなどの海外からも「ゆずってくれないか?」と、話がくるという。
「当面、誰かにゆずる予定はないですね。これといってほしいアルピナもいまはないですし……。ただし、自然吸気エンジン搭載のアルピナが出たらわかりません(笑)。以前、『どんなアルピナならほしいですか?』と、担当の須田さんから訊かれたとき、すかさず『ターボを取り外したモデル!』と、答えました。今、BMWも十分ハイパワーになってしまったので、アルピナの新しい個性として、BMWにはない自然吸気エンジンを搭載したモデルを出してほしいですね」
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理想のアルピナについて張さんは熱心に話す。アルピナを深く愛しているのがひしひしと伝わってくる。「現状、アルピナ最後の自然吸気エンジン搭載モデルである『ロードスター S』(初代Z4ベース)は、いい個体が中古市場にあったら購入しようと思っているんですけどね」という。
納得いくクルマを、納得のいくまで仕上げる張さんにして、あまり手をくわえていないB8 4.6リムジンは、素性のよさとともに、いかに張さんの理想の1台であったかがよくわかる。
ダカール・イエローのB8 4.6リムジンとの生活は、まだまだ続きそうだ。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
【2桁ナンバー物語 過去記事】
Vol.2 品川35のアルピナB8 4.6 リムジン 前編
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Vol.37 半年間の通信簿と今後の不安
Vol.36 プチ・カスタマイズ
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