9月28日、ENEOS スーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE第5戦『SUZUKA S耐』が開催されている鈴鹿サーキットで、ST-QクラスにTeam SDA Engineeringで参戦しているスバルと、MAZDA SPIRIT RACINGで参戦しているマツダは共同でメディア向けラウンドテーブルを行い、スバルが活用しているスバル航空宇宙カンパニーの再生炭素繊維を、MAZDA SPIRIT RACINGが走らせるMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptに使用すると発表した。
スーパー耐久シリーズのST-Qクラスは、他のクラスに該当しない、STMOが認めた開発車両が参加できるクラス。自動車メーカーがカーボンニュートラルに向けた取り組みやクルマづくりのさまざまな活動を進めているが、スバルは2021年から、スバル航空宇宙カンパニーから廃棄されるプリプレグを有効利用した再生炭素繊維開発の取り組みを開始。再利用が可能な再生炭素繊維の製造プロセスを確立すると、2023年から航空機等の製造で生まれる端材を活用した再生炭素繊維を、カーボンニュートラル燃料で走っていたTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptのボンネットやアンダーカバーに活用してきた。
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これはスバルがグループで進める「人・社会・環境の調和を目指し、事業を通じて、地球環境の保護を含む様々な社会課題の解決と、持続可能な社会の実現に貢献すること」を目指したスバルグローバルサステナビリティ方針に基づいたものだが、2024年第3戦オートポリスから参戦を開始したSUBARU HighPerformanceX Future Conceptも、第5戦鈴鹿に向け車両をアップデートしており、今回は外見で目立つポイントとしてリヤウイングを変更したが、このウイングも再生カーボンで作られている。
そんなスバル航空宇宙カンパニーで排気される再生炭素繊維だが、マツダが進めるサステナブリティの基本方針のなかで掲げる資源循環のサーキュラー・エコノミーの思いと合致した。「燃料以外のカーボンニュートラル技術であったり、資源循環そのものの取り組みも増やしていきたいと今季の開発計画を考えているときに、この話をいただきました」というのはマツダブランド体験推進本部ファクトリーモータースポーツ推進部の上杉康範氏。両社の思いが合致し、スバル航空宇宙カンパニーからの再生炭素繊維が、MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptのパーツとして活用されることになった。
すでにスバルで制作されたカーボンパーツは、スーパー耐久で強度や成形性などが検証されていることから、マツダでは初めてとなるオートクレーブの成形で検証し、強度などの検証を協力していくことになる。MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptでは今季第7戦富士に向けて、現在と同形状のボンネットをカーボンで作成。さらに前後バンパー、フロントフェンダーを2025年に向けて開発し、さらにアグレッシブな形状に進化させていくという。また将来に向けても、さまざまな可能性を示唆した。
「スーパー耐久では『共挑~S耐ワイガヤクラブ~』として、技術の話やこの場に限らないマツダさんとのコミュニケーションをとっていますが、その中で興味をもっていただいて、再生炭素繊維を使っていただくことになりました。本当にありがたいことですし、自動車業界のオールジャパンの体制で取り組むことができれば」とTeam SDA Engineeringの本井雅人代表は語った。
また、MAZDA SPIRIT RACINGの前田育男代表は「とうとう共同ワークができるときが来ました。『S耐ワイガヤクラブ』でいろいろな課題について各社連携でお話をしていますが、実際に形になるのは初めてかなと思います」と語った。
「昨年、本井代表から『カーボン材料がありますが使いますか?』という話をいただきましたが、忘年会で飲んでいる最中に『使っていいですか』という話をしまして(笑)、スバル航空宇宙カンパニーを訪問し、すごい工場を拝見しました。そこにはすごく“美味しそうな”カーボンの端切れが置いてありまして、捨てるのはもったいないと使わせていただく意志固めをしました」
今回はスーパー耐久ST-Qクラスというフィールドを使った両社の連携だが、カーボン素材というレーシングカーづくり、さらに市販車に向けても可能性をもつ素材の共有はCO2排出削減にも寄与するものになる。モータースポーツ界から見ても注目の取り組みと言えそうだ。
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