この記事をまとめると
■空力に優れた特徴的な造形が特徴のスペシャルティカーがアルシオーネSVXだ
【ニッポンの名車】こだわり抜いたFRのような回頭性! スバル・アルシオーネSVX
■アルシオーネSVXのデザインは初代レガシィと共通のルーツをもっていた
■販売こそされなかったもののワゴンバージョンの計画もあった
唯一無二のスペシャルティカーの裏に隠された秘密
アルシオーネSVXは、1991年に発売されたSUBARU(当時は富士重工業)のスペシャルティカーだ。スペシャルティカーの祖は、ファルコンという乗用車をもとに開発され、1964年に登場した米国のフォード・マスタングといわれる。スペシャルティカーとは、スポーツカーではないが格好よく精悍で、乗り味は乗用車としての利便性も満たすものをいう。日本車では、トヨタ・セリカが時代を築いた。
アルシオーネSVXは、SUBARUのスペシャルティカーと位置付けられる。じつはSVXの前に、単にアルシオーネと名付けられたスペシャルティカーもあり、1985年に発売されている。中島飛行機を祖とする遺伝子を継承するかのように空力性能を高め、そのCd(空気抵抗係数)値0.29は、当時としては抜群の数字といえた。
その後継となるのがアルシオーネSVXだ。やはり航空機の姿を思い描かせる外観が特徴だが、造形を担ったのは、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロである。その原案を忠実に市販車として再現した凄さがSVXにはある。
当時、セダンとクーペの2車種のデザインをジウジアーロに対しSUBARUは依頼しており、そのうちのクーペがアルシオーネSVXとなった。では、セダンのほうはというと、初代レガシィなのである。ただし、セダンはジウジアーロの案をそのまま使うのではなく、社内でデザインし直している。
アルシオーネSVXには、ほかにワゴンの計画もあったと伝えられる。レオーネからレガシィへ移行してなお、スバル車の人気を支えたのはツーリングワゴンだ。
3代目レガシィでは、4ドアセダンも販売に力を注ごうとB4という特別な呼び名を与えたが、それでもSUBARUを代表するのはツーリングワゴンであった。当然、スペシャルティカーのSVXにワゴンの計画があったとしても不思議ではない。
しかし、結局SVXのワゴンは発売に至らなかった。残された写真からは、航空機のような客室のガラスの造形を活かしてワゴンにしている様子がうかがえる。ルーフレールがバックドアまで伸び、造形の独創性のなかにもワゴンとしての実用を備えた様子が見える。
そうした客室部分の造形を実現するためのガラス加工や、そもそも内装に本革を使ったジウジアーロの案を活かすべく、スエード調の革をどうクルマ用として耐久性を備えたものにしていくか。そこで生まれた人工皮革のエクセーヌ(東レが開発したスエード調人工皮革)の採用など、SVXはSUBARUのデザイン力を大きく前進させたという。そこに、もしワゴンも加わっていれば……。スバリストの夢を掻き立てる構想であった。
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