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変化は大きいが、日本は小さい? 新型メルセデス・ベンツGLC試乗記

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変化は大きいが、日本は小さい? 新型メルセデス・ベンツGLC試乗記

このほどマイナーチェンジを受けたメルセデス・ベンツ「GLC」の主な改良点は3つ。ひとつはフェイスリフトと呼ばれる内外装の見直し。もうひとつは「ヘイ、メルセデス!」という呼びかけで立ち上がる音声認識システムを中心としたMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)の搭載。そして3つめは、ヨーロッパで導入された最新の排ガス規制への対応である。

日本ではあまり知られていないが、ヨーロッパではここ数年、排ガス規制が急激に厳しくなっている。

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従来は、エンジンにあまり大きな負荷を掛けない領域で有害物質の排出量を計測し、これが規制値を下まわっていれば合格とされたが、近年は実際に運転している環境に近い条件でも有害物質の排出量が規制されるようになった。さらに、計測規準そのものも見直され、ヨーロッパを主戦場とする自動車メーカーはその対応に四苦八苦しているところだ。

Die neue GLC Familie I Frankfurt 2019The new GLC Family I Frankfurt 2019【主要諸元(GLC300 4マティック】全長×全幅×全高:4669mm×1890mm×1644mm、ホイールベース:2873mm、車両重量:1805kg、乗車定員:5名、エンジン:1991cc直列4気筒DOHCターボ(258ps/5800~6100rpm、370Nm/1800~4000rpm)、トランスミッション:9AT、駆動方式:4WD、タイヤサイズ:235/65R17、価格:775万円(OP含まず)。DaimlerAG - Global Communications Mercedes-Benz Cars Global photos by Dieter Rebmann on behalf of Daimler AG排ガスがきれいになるだけであれば、これはわれわれユーザーにとっても歓迎されるべきことであるが、最新の規制に適合させようとすると、ガソリン・エンジンであればこれまでは不要とされたパティキュレート・フィルター(微粒子除去装置)が必要になり、ディーゼル・エンジンでは従来ひとつで済んだ窒素酸化物除去用の触媒を2段階で装備しなければならないためコストが上昇する。

さらに、アクセルを踏み込んでもクルマがなかなか加速しない「ドライバビリティの低下」などを招く可能性も懸念されている。つまり、排ガス規制の強化はわれわれにとって一筋縄ではいかない、頭の痛い問題でもあるのだ。

メルセデスは、いかにしてこの厳しい排ガス規制をクリアしたのか?

Der neue Mercedes-Benz GLCThe new Mercedes-Benz GLC日本仕様のエンジンは、2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ搭載の「GLC220d 4MATIC」、2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ搭載の「GLC300 4MATIC」、3.0リッターV型6気筒ツインターボ搭載の「GLC43 4MATIC」、4.0リッターV型8気筒ツインターボ搭載の「GLC63/63S 4MATIC +」が選べる。Daimler AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars主力の直列4気筒ディーゼルターボ・エンジンはパーツの98%を刷新するほどの大改良を実施した。さらに、酸化窒素物(NOx)の除去に効果のある後処理装置のSCRを従来の1段階から2段階に増やして排ガスを浄化し、最新の規制をクリアした。

いっぽうのガソリン・エンジンではパティキュレート・フィルターを搭載。これにより心配されるドライバビリティの低下を48Vマイルド・ハイブリッド・システムやツインスクロール・ターボチャージャーの装備などで補った。もっとも、マイルド・ハイブリッド・システムはドライバビリティの向上だけでなくCO2削減や燃費の向上にも効果がある。エンジンの効率を底上げするテクノロジーが採用されたと考えればいいだろう。

Die neue GLC Familie I Frankfurt 2019The new GLC Family I Frankfurt 2019フルLEDのリアコンビネーションランプは、デザインが変更された。DaimlerAG - Global Communications Mercedes-Benz Cars Global photos by Dieter Rebmann on behalf of Daimler AGエンジンもいいが、エアサスもいい2019年5月末にドイツ・フランクフルト周辺で行われた国際試乗会では、まず直列4気筒ディーゼルターボ・エンジンの高性能版であるGLC300d 4MATIC(日本未導入)に乗り込んだ。

ディーゼル・エンジンが発するキンキン音を覚悟してスターター・ボタンを押したところ、エンジン・ノイズは拍子抜けするほど静か。アイドリング状態でもエンジン振動はほとんど感じられないレベルにまで抑え込まれていた。どうやらメルセデスのエンジニアたちは、排ガス規制への対応という後ろ向きの作業だけに取り組んでいたわけではなかったようだ。

Der neue Mercedes-Benz GLCThe new Mercedes-Benz GLCGLC300d 4MATIC(日本未導入)が搭載するエンジンは2.0リッター直列4気筒ディーゼルターボ(最高出力245ps/4200rpm、最大トルク500Nm/1600~2400rpm)。Daimler AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars走り始めても、エンジンのまわり方はスムーズだし、スロットル・ペダルを強く踏み込んだときに騒音が不当に大きくなることもない。そのいっぽうでディーゼルらしい力強いトルクを低回転でも発揮してくれるから、市街地から高速道路まで気持ちよく走れた。

エンジンの仕上がり以上に驚かされたのはエア・サスペンションの仕上がり。路面からのゴツゴツした印象はほとんど消え去っているのに、高速道路を突っ走っても、しなやかな足まわりがボディを常にフラットに保ってくれたのだ。

Der neue Mercedes-Benz GLCThe new Mercedes-Benz GLCインテリアはインフォテインメント・システムの機能がアップデートされたほか、メーターパネルのデザインなどが変わった。Daimler AG - Global Communications Mercedes-Benz Cars欧州仕様と日本仕様で異なるパワトレ続いてガソリン・モデルのGLC300 4MATICに試乗する。いくらディーゼル・エンジンが静かになったとはいえ、やはりガソリン・エンジンとの差は歴然。ガソリン仕様のほうがはるかに静かでエンジンのまわり方もスムーズだった。

力強さの点ではディーゼルに及ばないものの、前述したマイルド・ハイブリッド・システムがガソリン・エンジンの苦手な領域をしっかりサポートしてくれるので、市街地走行でも痛痒は感じなかった。

Die neue GLC Familie, Frankfurt 2019The new GLC Family, Frankfurt 2019GLC300 4MATICが搭載するエンジンは、1991cc直列4気筒DOHCターボ(258ps/5800~6100rpm、370Nm/1800~4000rpm)。DaimlerAG - Global Communications Mercedes-Benz Cars Global photos by Andreas Lindlahr on behalf of Daimler AGDie neue GLC Familie, Frankfurt 2019The new GLC Family, Frankfurt 2019ラゲッジルームの容量は通常時580リッター。リアシートのバックレスト(40:20:40の分割可倒式)を格納すると、1150リッターに拡大する。DaimlerAG - Global Communications Mercedes-Benz Cars Global photos by Andreas Lindlahr on behalf of Daimler AGところで、こちらの試乗車にはエアサスペンションが装備されていなかったものの、細かい改良の成果なのか、微振動の吸収性、タイヤが発するロードノイズ、ボディのフラット感などはいずれも改善されているように思われた。

今回は最高出力510ps、最大トルク700Nmを発揮するフラッグシップのメルセデスAMG GLC 63S 4MATIC+にも試乗した。そのパワーは圧巻のひとこと。AMGのV型8気筒 4.0リッターのツインターボ・エンジンはとにかくレスポンスがいいのが売り物だが、その美点は新型にもしっかり受け継がれていた。

また、新型になってエンジン、サスペンション、ESP、電子制御デフなどを統合制御するシステムが採用されたのもニュースのひとつである。

Die neue GLC Familie, Frankfurt 2019The new GLC Family, Frankfurt 2019メルセデスAMG GLC 63S 4MATIC+の価格は1487万円。DaimlerAG - Global Communications Mercedes-Benz Cars Global photos by Andreas Lindlahr on behalf of Daimler AGMercedes-AMG GLC 63 S 4MATIC+ (2019)Mercedes-AMG GLC 63 S 4MATIC+ (2019)メルセデスAMG GLC 63S 4MATIC+が搭載するエンジンは、最高出力510ps、最大トルク700Nmを発揮する4.0リッターV型8気筒ツインターボ。Daimler AG - Global Communications Mercedes-Benz CarsDie neue GLC Familie, Frankfurt 2019The new GLC Family, Frankfurt 20194WDシステムは、メルセデスAMGが開発した電子制御式4WD「AMG 4MATIC +」。トルクを前:後 50:50から0:100の範囲で、自動配分する。DaimlerAG - Global Communications Mercedes-Benz Cars Global photos by Andreas Lindlahr on behalf of Daimler AGDie neue GLC Familie, Frankfurt 2019The new GLC Family, Frankfurt 2019専用デザインのステアリング・ホイールやシート。メルセデスAMG GLC 63S 4MATIC+のステアリング・ホイールは、ドライブ・モード切り替えスウィッチ(ダイヤル式)「AMGドライブコントロールスウィッチ」が、スポークに備わる。DaimlerAG - Global Communications Mercedes-Benz Cars Global photos by Andreas Lindlahr on behalf of Daimler AGここまでドライブトレイン中心の解説をしてきたけれど、日本仕様の新型GLCにはこれとは少し違ったエンジンが搭載されるという。ヨーロッパと日本で排ガス規制の内容が微妙に異なるのが原因。たとえば、GLC300d 4MATICは日本に導入されず、かわりにGLC220d 4MATICが導入される。

裏を返せば、ヨーロッパの厳しい規制をクリアするために必要になったさまざまなデバイスが取り外されるので、高価なテクノロジーを使わなくとも従来と変わらないパフォーマンスやドライバビリティが手に入ると期待される。

いっぽう、足まわりの進化は日本仕様でも同様に実施されるはずだし、使い勝手のいいMBUXが搭載されるのも朗報。したがって、メルセデスGLCの商品性はさらに高まるとみて間違いないだろう。

文・大谷達也

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