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夢のある高級2ドアクーペ──新型BMW M850i xDriveクーペ試乗記

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夢のある高級2ドアクーペ──新型BMW M850i xDriveクーペ試乗記

新しいBMW「M850i xDriveクーペ」に、小川フミオが試乗した。かつての初代6シリーズの流れを汲むラグジュアリークーペの“今”に迫る!

初代8シリーズとは違う

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クルマにとって大事なものは、性能、そしてスタイルではないか。そう理解している人には、クーペづくりに長けているBMWが手がけたM850i xDriveクーペがいいだろう。最新の高性能クーペだ。

本モデルの特徴は、公道で楽しめるハイパフォーマンス性。8シリーズの標準ラインナップには、3.0リッター6気筒エンジンに後輪駆動システムを組み合わせた840iがあるだけだが、Mパフォーマンスモデルにはこのモデルのように4.4リッターV型8気筒モデルが用意されている。

Mを車名に持つ8シリーズには、サーキット走行を視野に入れたM8と、どちらかというと公道走行をメインにしたM850i xDriveクーペが設定されている。さらに全輪駆動方式だ。

8シリーズの大きな魅力は、スタイルにあると私は思う。4855mmの全長に、薄く見えるキャビンを組み合わせている。キドニーグリルをもったノーズは厚めで、頭でっかちに見えなくもないところが、力強さをうまく演出。パワフルなクーペとして上手なプロポーションだ。

8シリーズといえば、初代が登場したのは1990年。1989年にフランクフルトで開催されたIAA自動車ショーでお披露目されたとき、低いノーズ、格納式ヘッドランプ、小さな小さなキドニーグリルが印象的だった(この頃BMWはキドニーグリルの廃止を検討していた)。BMWデザインにいたオーストリア人デザイナーの仕事と聞いた。

当時の印象だと、トルクはたっぷりあったし、エンジンは8気筒だろうと12気筒だろうと、よくまわって「さすがエンジンのBMW!」と、感心させられた。けれど、ボディの大きさにややトゥーマッチ感があった(全長4.8m、全幅1.86m程度)いっぽう、キャビンは小ぶりで後席はどちらかというとカバンを置くスペース。

2018年にルマン24時間レースのサルトサーキットで発表された現行8シリーズは、スタイリッシュという特徴は継承しているものの、パッケージングは煮詰められて、後席もちゃんと使える。なにしろ4ドアの「グラン クーペ」まで設定されているぐらいなのだから。

これこそ高級車多気筒エンジンの大トルクを活かした乗り味は、ピュアスポーツカーではないものの、じつに気持ちがいい。その印象は、初代と似ている(初代はいま運転すると軽快なハンドリングに驚く)。

モニター画面を使って設定するドライブモードはやや複雑で、“ちょい乗り”だと習得するのに時間がかかるけれど、これもオーナーの楽しみ。もちろん、ノーマルモードでもエコモードでも、十分、トルクたっぷりの走りを堪能できる。

4394ccV型8気筒エンジンは、390kW(530ps)の最高出力と750Nmの最大トルクを発生するので、かったるさを感じる領域はない。同時に、反応がよいステアリングをそなえるので、余裕あるボディサイズに関わらず、操縦を楽しめる。

たっぷりしたトルク感と、気持ちよく車体を操作できる感覚のステアリング。この2つが、M850i xDriveクーペを大いに魅力的なクルマに仕立ててくれている。

内装の特別感も、特筆点。今回の車両には「BMWインディビデュアル」というオプションが装備されていて、シート表皮は2トーン。「アイボリーホワイト」と茶色の「タルトゥーフォ」の組み合わせだ。タルトゥーフォというと、北イタリアで採れる白トリュフのイタリア語だけれど、もうひとつ、「タルトゥーフォ ディ ピッツォ」なる有名なイタリアのチョコレート菓子がある。そっちのイメージかも。ツヤ感もおみごと。

この色のコンビネーションは、スポーティなスウェードのジャケットを連想させて、たいへん好ましい。このクルマのイメージによく合っている。メルセデス・ベンツほどやりすぎ感はなくて、適度な品のよさがいまのBMWの真骨頂だ。

高級だなあと感心するのは、上記のタルトゥーフォカラーがボンネットオープナーにまで使われていること。小さな合成樹脂のパーツまでカラーキー(色の統一)されている。これこそ高級車だ。

精度が向上したという会話型音声入力システムをはじめ、ハンズフリー運転支援システムや、現行「3シリーズ」から搭載されたパーキングアシスト(直近50mを車両が記憶していて同じラインを使って自動で後退してくれるシステム)などは、いち早くデジタライゼーションとコネクティビティの装備に注目して開発に着手してきたBMWならではのもの。

このクルマを手に入れたら、遠出がしたくなるのは請け合う。遠出が好きなひとが食指を動かすモデルということも出来る。夢のある高級2ドアクーペだ。

文・小川フミオ 写真・田村翔 編集・稲垣邦康(GQ)

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