ドライバー3月号(2020年1月20日発売号)からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国をクルマで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第16回は、沖縄県の石垣島に生息する『カンムリワシ』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材のウラ話をいろいろと紹介します。
クルマで流しながらの出会い頭で野生のウサギを瞬撮!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第15回~アマミノクロウサギ」
なぜ「“カンムリ”ワシ」なのかを確かめに石垣島へ
オイラのプチヒーローの1人がボクシングの元ライトフライ級世界チャンピオンの具志堅用高さんだ。今ではテレビのバラエティ番組で軽妙なボケキャラを演じているが、現役時代の強さはハンパじゃなかった。
その具志堅さんの現役時代の異名が「カンムリワシ」。
そのころ、アナウンサーも「カンムリワシ」を連呼していたし、テレビを見ている人もなんとなくそういう鷲がいるんだろうなーと深く考えなかったと思う。オイラもそんな1人だ。
カンムリワシの撮影に行こう、と思ったときに、頭の中で具志堅さんとイメージが重なった。
この時期、すでに熱い空気が流れている沖縄県新石垣空港に降り立ち、レンタカーをピックアップする。
●相棒となるクルマは日産 デイズだ。今回借りたレンタカーは先代モデルだったがとても完成度が高く、安全装備も充実していて安心感が高かった
カンムリワシは石垣島全土に生息しているようだが、北部の山や牧草地が発見しやすいと聞く。とはいえ、限られた時間を効率的に使うためにネイチャーガイドをお願いする。
スポッターガイドサービスの川野俊幸さんは、時間があれば野山を歩き、自然の変化をチェックしているだけに、すぐにカンムリワシを探し出してくれた。しかも、好む場所、狩りの仕方など生態もレクチャーしてくれたので、これは後々の撮影でも有意義だった。
スポッター石垣島ネイチャーサービスHP
「カンムリワシ注意」の看板が多いワケ
しかし、多くのカンムリワシは人を気にしない、というか眼中にないような行動をとる。
地上にいる獲物を捕獲するためか、木の低いところで地面を睥睨(へいげい)していることも多い。そして、道の真ん中を飛び、地面を歩いたりする。
それだけに、林道沿いには「カンムリワシ注意」の看板が多いのもうなずける。
生息地のなかを通り抜ける林道は舗装されているものの狭く、路面には苔(こけ)が生えていて滑りやすい。この道幅には軽自動車がジャストフィットだった。路肩ギリギリに停めれば対向車も通れるので、自由に撮影できて助かった。
林道沿いには変わった樹木が多い。なかでも「犬ビワ」と呼ばれるグリーンの実がたわわに付いた木はおもしろい。動物名が付いた果実は往々にして渋いか苦いので、人間が食べられないものが多い。
一応試しにかじってみたが、ちょっとグァバぽい感じでわずかに甘みがある程度。食べられなくはなさそうだが、食べる必要もない味だった。
[今回の機材]
機材:SONY α1
レンズ:FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
今回は使ったカメラはソニーα1。スチールでは秒間30コマ撮影でき、動画は8Kで記録できるというハイスペックのミラーレス一眼デジタルカメラだ。
一番感銘を受けたのはオートフォーカス(AF)の食いつく速さだ。突然飛んできたカンムリワシをファインダーで捉えることができれば、がっちりとフォーカスしているのだ。もちろん、カメラマンの動体視力や反応スピードが求められるが、合焦(がっしょう)から追従まで今まで体験したことがない速さと正確さだった。
これを一度経験してしまうと、もうそれがスタンダードになってしまうから困ってしまう。しかし、連写するには画素数が大きいので大容量のSDカードをそろえたり、編集するためのPCの性能も見直さなければならない。
長年のナゾがついに明らかに
そして実際にカンムリワシを見て、頭に中に出ていた「?」がついに解消された。
それは「なんで“カンムリ(冠)”ワシなのか」いうことだ。
頭を見てもツルっとしているし、「なんでカンムリなのだろう」とずっと疑問に思っていた。
すると、あるとき何かに警戒したのか、興奮したのか、頭をプルプルっと振るとしっかりカンムリができあがっていた。
なかなかこのポーズはとってくれないので貴重なシーンだった。
撮影の合間にたまたま寄ったお店の「ソーキそば」がおいしく、通ってしまった。郊外に出てしまうとコンビニもないので、食事場所の確保も撮影では大事なのだ。
この石垣市桃里で青々葉屋というおいしい店を引き当てたのはラッキーだった。
山の中ばかりにいてほとんど海を見ることはなかったが、たまに視界に入る沖縄の海はすばらしくきれいだった。だが、海に寄っている時間はなくただ眺めるだけ。我慢の撮影旅行だった。
そういえば、最後の最後に通りかかった交差点にでっかいお墓の広告看板があって、具志堅さんがほほえんでいたっけ(笑)。
〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
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