昨シーズンまでホンダのF1マネージングディレクターを務めていた山本雅史が、今月限りでホンダを退社し、新たにコンサルティングなどを行なう会社を立ち上げるという。
山本はホンダでモータースポーツ部長などを務めた後、2019年からF1マネージングディレクターとしてF1専任の役職を担い、ホンダのF1活動を取り仕切ってきた。そして同年にはレッドブルとのコンビで第4期初優勝を遂げると、2021年にはマックス・フェルスタッペンの手により悲願のドライバーズタイトルを獲得。それを節目に、山本はホンダを去ることになるという。
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「2021年でホンダのF1活動も最後だし、しっかりと勝って区切りをつけて退社しようと、昨年の3月に決めました」
山本はそう語る。
「2016年にモータースポーツ部長に就任して、最初はスーパーGTのチャンピオンを獲ることが目標で、それを2018年に実現することができました。その後の3年はF1専任となりましたが、その当初からこの仕事こそホンダ人生の集大成だと思っていました。ホンダで経験してきたモノが全て活かすことができると思いました」
「その1年目にはレッドブルと初めて優勝することができて、2年目にはメルセデスと良い戦いができるかなと思ったんですがそうはいかず、そして3年目にフェルスタッペンのドライビング力、レッドブルのチーム力の高さもあって、なんとかチャンピオンを獲ることができました」
山本は、自身のことを「やると決めたらとことんやってしまう」性格だと分析する。そのため、今後はもう少し自由な時間を持ちたいという気持ちもあったと明かす。
「僕は本当にホンダが好きなんです。なのでこの6年間、モータースポーツ担当として集中して仕事をしてきました。その一方で、家族との時間をあまり取れなかったということもあります」
「ホンダを引退して自由な時間を持って、家族との時間を過ごしたり、自分の趣味に使ったりと、今風で言うとワークライフバランス的なことも考えなければいけないということを、この数年間考えていました。人生を謳歌したいですからね」
そしてホンダのことも考えた上での決断だったとも明かす。
「良い意味でも悪い意味でも、ホンダにとって”重し”にはなりたくなかった。僕がいることで、若い人たちが自由にできないということにはならないようにしたかったんです。僕は基本的には放任主義なので、そういうことはなかったと思いますが、伸び伸びやってもらえるようにしたかったんです」
「そういう意味では、攻めるだけじゃなく、引き際も気持ちよく行こうと、そう決めたんです」
しかし山本は、モータースポーツの世界、そしてF1の世界から離れるわけではない。まずは自身が設立した会社で、レッドブル・パワートレインズのサポートをするという。
「新しく会社を設立しました。そこで人に喜ばれることをしたいと思っています。F1って、僕らが勝てばファンの皆さんがそれを喜んでくれるじゃないですか。期待を大きく超えることができれば、人はさらに喜んでくれる。そういうことを粛々とやっていきたいと思います」
具体的にはどんなことをするのか? そう尋ねると、山本は次のように説明してくれた。
「その会社と、レッドブル・パワートレインズとで契約を結びました。その会社には僕という存在がいて、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表や、(同社モータースポーツ・アドバイザーの)ヘルムート・マルコの依頼に応じて、サポートをするということです」
「会社同士の契約なので表現の仕方が難しいのですが、レッドブル・パワートレインズのメンバーのひとりとして、彼らのお役に立てるような仕事を請け負うということになります。ホンダの役員にも、それはお伝えしました」
山本には、レッドブルとホンダの関係を繋ぐ役割も期待されているという。
「例えば、彼らが日本の文化や、ホンダの文化を共有して、よりホンダとの関係を密に、そしてうまくやりたい……そういう依頼があれば、そのサポートもします。また、日本に若い将来有望なドライバーがいれば、それをレッドブルに紹介するということもあるかもしれません」
「契約には、クリスチャンとマルコの指示によって、山本は仕事をすると……そういう漠然としたことが書いてあります。もちろん、その他細かいこともありますけどね。でも基本的には、レッドブルと日本の架け橋ということになると思います」
「F1全戦に帯同するということはありません。ですが、5戦は行かなければならないことになっていますし、それプラス鈴鹿くらいは行きたいなと思っています」
昨年限りでホンダはF1活動を終了。2022年シーズンからは四輪のレース活動も担うことになったHRC(ホンダ・レーシング)がレッドブル・パワートレインズを支援していくことになる。しかし山本も、立場は変われど、レッドブルのF1での活動、そしてF1と日本を繋ぐ立場として、重要な役割を果たしていくこととなりそうだ。
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