スーパーGT第7戦オートポリス、療養中の山本尚貴に代わって木村偉織がGT500デビューすることになった100号車STANLEY NSX-GT、予選8番手から決勝は9位フィニッシュで入賞できたものの、内容的には苦しい戦いとなってしまった。実は100号車は決勝のスタートタイヤに関して、大きなハンデを抱えての走りになっていた。療養中の山本に代わるエースとしてチームを率いた牧野任祐に聞いた。
「スタートのタイヤがQ2のタイヤが選ばれることになって、偉織がロックしたことで交換することになったのですけど、20周くらい走ったユーズドしか残っていなくて、それに替えるしかない状況でした」と、レースを振り返る牧野。
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前日の予選で100号車は牧野が4番手タイムでQ1を突破していたが、Q2を担当した木村はQ2セッション最下位の8番手。実はQ2のアタックで木村は1コーナーのブレーキングでタイヤをロックさせてタイヤにフラットスポットを作ってしまい、決勝に向けてはタイヤを1本、交換を余儀なくされた。
そして牧野の言葉にあるように450kmのレースで許される持ち込み6セットのタイヤのうち、決勝の第2、第3スティントを考慮するとスタートではユーズドタイヤしか選べない状況となってしまったことで、スタート前から苦しい決勝になることが予想されていた。
「ですので、最初のスティントを短く行くしかなくて、クルマのバランスもおかしい状態でした。それでもペースは思ったほど悪くはなくて、短くファーストスティントを区切ってセカンドスティントで周回数を稼げるかなと思っていたのですけど、最後の第3スティントの偉織の時にはソフトタイヤと決めていたので、セカンドスティントではハード側のタイヤを選ばざるを得なくて、そのタイヤがまったく機能しませんでした」
16周目にタイヤ選択が合わずにピックアップに悩まされた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraと同じタイミングで、GT500のブリヂストン勢のルーティンでもっとも早いピットインを行った100号車STANLEY NSX-GT。ダブルスティントとなった牧野もセカンドスティントに期待したが、気温の低いままのコンディションとなったことで予想外の展開なってしまった。
「途中でもう1回ピットインしようかなと思うくらいでした。温度レンジを完全に外していましたね。スタートでのタイヤがうまく行っていたので、いろいろな要素がありますけど、やっぱり戦略としてはファーストスティントを伸ばしたかったし、最初はセカンドスティントを偉織で行ってもらおうと思っていたのですけど、結果的に僕がダブルスティントを行くことになりました。本来ならセカンドスティントを引っ張りたかったですけど、そこまで行けませんでした」
2度目のピットインも、ブリヂストン勢の中で早めの53周目に行った100号車STANLEY。GT500レースデビューとなった木村偉織は、そこから97周目のフィニッシュまでタイヤを持たせ、無事に初レースで9位チェッカーを受けることになった。前日、経験の少ないニュータイヤでの予選後に木村は「GT500の洗礼を受けました」とコメントしていたが、決勝に関して牧野は木村のパフォーマンスを素直に評価した。
「偉織も最後、長いスティントになってしまいましたがペースも悪くなかったですし、最後に23号車(MOTUL AUTECH Z)を抑えてくれた。クルマも最後のスティントでソフトタイヤに戻したら普通には走れていましたけど、最終スティントでは燃料がちょっと足りなくてコースティングが必要になった。偉織はそれもしっかりやってくれたので、レースに関しては問題なかったと思います」(牧野)
今回のオートポリスの週末を通じて、100号車では積極的に木村にコミュニケーションを取る牧野の姿が見られ、セッション中もコクピットに座る木村にアドバイスを送る牧野の姿が印象的だった。
「今回、武藤さんが来てくれていますけど、僕が(2016年)タイでGT500にデビューしたときにも武藤さんにずっと教えてもらっていたので。僕も何から何までといったらあれですけど、僕がわかること、できることは全部伝えていたつもりです。逆に僕は今まで尚貴さんに助けられていた部分があるので、今回、初めて年下のドライバーと組むことになりましたけど、今後そういう役割も増えるでしょうし、僕自身もいい経験になったと思っています」と牧野。
「今回のレースの内容に関しては昨日の予選でちょっと狂ってしまったというのはありますけど、偉織にとってはGT500のデビューがこのオートポリスで、いきなり予選で行けと言われても難しいのは間違いないと思います。次のもてぎでいいレースができればいいなと思うので、また偉織と一緒に頑張りたいと思います」と続けた。
残念ながら今年のチャンピオン争いからは完全に離脱してしまった100号車STANLEYだが、最終戦モビリティリゾートもてぎは昨年、牧野がレコードタイムでポールを獲得してそのままトップチェッカーを受けた相性のいいサーキット。2戦目となる新しいコンビで、療養中の山本尚貴に吉報を届けられるようなパフォーマンスを見せたいところだ。
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