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1960年代に愛したクルマたち

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1960年代に愛したクルマたち

1960年代に出会ったクルマたち!


岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第180回

価格は31億円!? 「ロールス・ロイス」が製造した究極のフルオーダーモデルとは?


1960年代は、日本のモータリゼーションが大きく飛躍した時期だが、僕が出会ったクルマたちもまた大きく飛躍した。
 
前回触れたように、僕の人生を変えた女性との出会いは19才のとき。そして彼女とは21才で結婚(学生結婚)した。

ワケあって、青山学院大学経済学部から日大芸術学部放送学科へ入り直したため、僕の大学生活は6年と長くなってしまった。

卒業して自立できるまでは、彼女(家内)の家に同居させてもらい、僕の実家からは経済的サポートを受けるといった生活だった。

なので、卒業して就職するまでは、前回触れたルノー4CVでじっと我慢、と思っていた。、、のだが、ある日突然ハプニングが、、。


父(義父)の会社が使っていたブルーバード(310型)を「ほしければあげるよ」という話が持ち上がった。とくに好きでもなかったが、当然「ありがたくいただく」ことに。

そうして手にしたブルーバードは、次のステップへ踏み出す重要な資金源になった。それにアルバイトで手にしたお金を足してヒルマン・ミンクスを買った。

ワクワクするほどのステップアップではなかったものの、それなりの満足感はあった。

家内の家(以下はわが家と呼ぶ)は、誰をも笑顔で大歓迎して迎え入れる、、そんな天真爛漫な母親の存在のせいか、いつも多くのひとが集まっていた。兄の友達も、僕の友達も集まった。

当然、クルマ好きも多かった。そんな人達が夕方辺りから集まり始める。とくに週末はいつも満席状態!?だった。そして、夜中までクルマの話で盛り上がった。

結婚した当時のわが家のクルマは、オールズモビル88から、ビュイック・スペシャル・4ドア(1958年?)に変わっていた。ボディカラーは黒だったが、クローム満載で華やかさは文句なしだった。

次いでわが家にやってきたのは、メルセデス・ベンツ 220S。1958~59年モデルだったかと思う。

前回に触れたシトロエンやオールズモビル、そしてビュイックにもしびれたが、メルセデス・ベンツ220Sにはさらにしびれた。

華やかさでは当然アメリカ車が勝る。だが、そこを除けば、すべての面でMB 220Sは勝っていた。ひと言で言えば、「しっかり感と上質感と性能」は、それまでに触れてきたすべてのクルマを圧倒的に凌ぐものだった。


クルマは「色の違いしかわからない」母。なのに、220Sに初めて乗った時、「すごく安心感があるわね!」と言った言葉にそれは凝縮されていた。

同時期に、兄はVWビートルからトライアンフ・TR-4に乗り換え、さらには、ポルシェ356C(356の最終モデルで12Vシステムと電動サンルーフ付き)へと乗り換えた。

そして僕はといえば、家業を手伝って得る家内の収入と僕のアルバイト収入を担保に、再び兄(僕の兄)に借金。MGAを買った。

白のMGA1500。まったく非力で遅いクルマだったが、そんなマイナスを打ち消すほど、そのルックスには惹かれていた。

より強力な1600やツインカムという選択肢もあったのだが、僕はどうしても、1500のシンプルな美しさを手に入れたかった。

MGAを手にして、僕は初めて「ヤッター!」という気持ちに、、。22才のときだった。

でも、結局、MGAとの生活は短期間で終ることになる。やはり、あまりの非力さに耐えられなかったのだ。

で、次に買ったのがMGB。これも速くはなかったが、ずっとマシ。MGA1500では参加する気にもなれなかったジムカーナやヒルクライムにも参加した。上位は無理だったが、ドンケツにはならずに済んだ。

大学にもMGBで通った。同時期に、練馬区江古田の日芸には生沢徹が在学していたが、彼もMGBで通ってきていた。僕のベージュのMGBと生沢徹の淡いブルーのMGBが正門の前に並ぶのは、嬉しい眺めだった。


1963年に始まった日本GPは、1964年の第2回で一気にヒートアップ。クルマ好きを虜にした。僕も仲間たちと鈴鹿詣でを始めた。週末はほとんど鈴鹿に行った。

となれば、MGBの性能ではどうにもならない。そこで、仲のいいチューニングショップのエンジニアに相談してベレットを買った。国産車の方がチューニングしやすく、費用も少なくて済むからだ。

そして、かなり頑張ってベレットをチューニング。鈴鹿でのタイムアップに励んだ。その結果、ワークスチームに近いレベルのタイムを出せるまでになった。まぁ、当時のレベルではそんなことができたということになる。

ちなみに、シャコタンのベレットだけでは家内が可愛そうだったので、日常の気軽な足としてパブリカ800を買い足した。

熱に侵されたような鈴鹿詣では1年ほどで終止符を打った。同時にベレットも手放した。そして、手に入れたのがなんとアメリカ車。

長いテールフィンを持ち、ビッグV8を積んだデソートの2ドアハードトップ。ボディカラーはサーモンピンクの濃淡、、派手だった!

ある日突然、遊び仲間の兄だった東宝の2枚目スターからお呼びがかかり、「俺のクルマを買わないか!」と、、。かなり躊躇はしたものの、結局は「憧れのドリームカーの誘惑」に負けた。

初めは有頂天で乗り回した。大学(日芸)にもこれで通った。、、が、買った時、すでにヘタリかかっていたV8のガスガズラーぶりはすごく、さらにはオイル消費まで、、。


結局、その出費に耐えられず、短期間で手放さざるを得なかった。憧れの相手と過ごした夢の生活はあっけなく幕を閉じた。でも、僕の所有歴の中で唯一のアメリカ車は、素晴らしい思い出として残っている。

同時期に、赤のサンダーバードに乗っていた友人がいたが、どこに行っても、この2台が並ぶ姿は壮観だった。ときどき交換して乗ったが、お互い「文句なしの交換!」だった。

シャコタンのベレットとピンクのデソートで疲れ切った僕は、「真っ当なクルマ」に乗ろうと気持ちを切り替えた。

そして選んだのが、MG1100 (ADO16)。ボディカラーはブリティッシュグリーンとブリティッシュオフホワイトの2トーン。大人になった気がした。

そして息子が生まれたのだが、MG1100は家族3人の生活になんの不都合もなかった。

だが、息子の成長を見るにつけ、なぜか殊勝な気持ちに、、。そして「子育ての間は穏やかなセダンに乗ろう」となり、3代目トヨペット・コロナに乗り換えた。

ところが、その少し後に、マツダからルーチェ1500が誕生。ベルトーネが関わった美しいルックスに一目惚れして買い替えた。

殊勝にしていたのはここまでで、すぐまた病気が疼き始めた。そして、MG1300を。

もともと小粋だし、走り味も乗り味もいい。1300 には「MG」を名乗るに相応しいスポーツ性もあった。

すごく気に入ったので「僕だけの1台」にすべく、他にないボディカラーに塗り替えることにした。


好き者の間では名の通っていた麹町の塗装会社「わたびき」に依頼。落ち着いたワインとオフホワイトの2トーンに塗った。「僕だけのMG1300」が生まれた。あまり洗車好きではない僕だが、これはよく洗車した。

僕もクルマをよく換えたが、兄も同じく浮気者だった。ポルシェ 356Cという素晴らしいクルマを手にしたのに、2年ほどでミニクーパー1275Sに乗り換えた。当時もっともホットな話題のクルマだったからだろう。

そんな忙しない流れは、その後も続いた。1968年に誕生したセドリック・スペシャル6になぜか強く惹かれ、カタログにはなかった「スーパーホワイト」ともいえる白に塗ってもらって買った。塗装は日産の工場(試作部門?)でやってくれた。

ピニンファリーナ改?のルックスも気に入っていたし、国産車ながら、得意になって乗り回した。実際に多くの人目も引いた。

そして1960年代最後の年、アルファロメオ・ジュリアスーパーを買うことに。親しい業者からの「いいものがでたよ!」の一言で。

「4ドアのスポーツカー」、ジュリアスーパーは、僕を虜にした。トラブルが心配だったが、幸い重大なトラブルはでなかった。

310型ブルーバードから始まった僕の1960年代は「激動の10年!?」だった。周りも含めて、多くのクルマに出会った。そして最後に、憧れのアルファロメオで締めくくれた。

振り返ってみると、なんとも忙しなくクルマを買い替え続けた10年だった。1台をゆっくり愛でるひとにはお叱りを受けても仕方がない。でも、楽しくもハッピーな10年だった。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト


1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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みんなのコメント

1件
  • 1960年代からこうしてクルマを乗り継いでいたというのは、裕福なお家だったと思います。二代続いてモータージャーナリスト(当時は自動車評論家)とのことですが、後継ぎはいるのでしょうか?クルマ社会自体が激変して、モータージャーナリスト自体が近い将来いなくなる(不要になる)可能性は大ありですが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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