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琢磨がインディ500予選で魅せた。すべてを出し切る鬼神の走りで上位進出「もうホントにギリギリ」

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琢磨がインディ500予選で魅せた。すべてを出し切る鬼神の走りで上位進出「もうホントにギリギリ」

 今年のインディアナポリス500マイルレースは、14日(火)から始まるプラクティスが雨で走行出来る時間が限られたからか、予選初日は多くの波乱が起きた。11時に始まった予選が17時50分に終わるまでに生まれた多くのドラマは、まさにインディ500というレースを象徴する出来事ばかりだった。

 今季は古巣レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLL)から出走する佐藤琢磨は、2度のインディ500チャンピオンであることもさる事ながら、インディ500の予選においてもそのフォーマンスに一目置かれている。

インディ500予選1日目/パワーがトップ通過、ペンスキー1-2-3。琢磨は9番手でトップ12へ

 日本人として初めてフロントロウスタートとなった2020年を始めとして、琢磨が4周のタイムアテンプトに出ている間は、巨大なインディのスピードウエイが一斉に興奮の坩堝に包まれる。毎年のようにウォールにキスしながら予選アタックを繰り返す琢磨に、場内の観衆は魅了されるのだ。

 琢磨は今年RLLに言わば予選の仕事人として迎えられた。昨年インディ500で予選落ちの悪夢を経験したRLLは、琢磨に全幅の信頼を置いて予選セッティングを基軸としたスピードの追求を任せた。プラクティスの初日から、予選セッティングを中心とした走行を繰り返し、エンジニアのエディ・ジョーンズと琢磨は雨の悪条件があっても、ひたすらに予選スピードに集中してチーム全体の底上げを狙っていたのだ。むしろ決勝セッティングを蔑ろにしてまで、予選のスピードを追求していた。

 予選用にエンジンブーストが上がるファストフライデイまで琢磨はプログラムを変えず、決勝のセッティングをまったく試せないままに予選日を迎えているくらいなのだ。

「RLLは昨年のことがあるから、まず予選のスピードを上げなくちゃいけないと。そこを僕が任されて、決勝のセッティングはグラハム(・レイホール)と他のチームメイトに任せることになったんですけど、まさか雨でこんなに走れないとは。でもみんな同じ条件だから、やるしかないですね」と琢磨。

 これまでに出場した過去15年のなかで、もっとも走行時間の少なかったプラクティスを終え、予選初日を迎えた。琢磨のアテンプト順はドローの結果26番。天候を考えるとあまり良い順位とは言えなかった。

 案の定と言うべきか、予選アテンプトで1番を引いたカイル・カークウッドは4周平均232.764mphの好タイムを出し、良い順番を引いたチーム・ペンスキー勢がさらに上回る速さを披露して上位を占めた。なかでも9番手で予選に臨んだペンスキーのウィル・パワーは、この日のベストとなる233.758mphをマークしてトップに立った。全体的にペンスキー、A.J.フォイト・エンタープライゼス、アロウ・マクラーレンのシボレーエンジン勢の健闘が目立ちながら、1台1台と予選が進んで行く。

 琢磨が26番目に登場した頃には気温も上昇していたが、タイムアタックに入ると1周目は232.357mph、2周目を232.320mphとハイスピードでクリア、速度の落ち込みやすい3周目を231.968mphで走り抜け、4周目を231.915mphでうまくまとめてアベレージ232.140mphでこの時点の9番手につけた。このスピードは、アテンプト順を考えても上出来と言えただろう。

 だが、琢磨のタイムを後からアテンプトしてくるマクラーレンのアレクサンダー・ロッシらがひとりずつ上回ったことで、琢磨は12番手となった。予選2日目に進むファスト12の“オン・ザ・バブル”となったのだ。

 予選2日目の進出を考えれば、当然2度目のアテンプトに行くしかない。琢磨はさらにダウンフォースを削ったセッティングで、コースが空いたところを見て15時過ぎにレーン2から2度目のアテンプトに出た。レーン2は最初のタイムを有効にしたままに再アテンプトできるレーンだ。

 1度目のアテンプト時から少し時間は経過したにしろ、気温も依然高いままであったが、琢磨はコースインするとウォームアップからペース良く周回。1周目から233mph台に突入し、明らかに1回目のアテンプトよりペースが良い。だがターン2にしろターン4にしろ、ウォールまでギリギリで、一歩間違えばヒットしてしまいそうな勢いでアクセルを踏み続けている。

 4周のアベレージは232.473mphとなり、9番手に浮上した。琢磨がチェッカーを受けると場内は大きな拍手に包まれた。気温や路面のコンディションを考えると、75号車のすべてを出し切ったが、あの鬼神のような走りこそ琢磨の真骨頂だったと言えるだろう。

 琢磨がタイムを出すと堰を切ったようにドライバーのアテンプトが続いたが、ライバルらは琢磨のスピードを上回ることができず、無事に9番手で予選2日目のトップ12セッションに進むことが決まった。

 しかし反面でチームメイトのグラハム・レイホールが翌日のバンプ争いに残ることになってしまったり、RLLとしては白と黒のコントラストがはっきりと分かれる結果となってしまった。さらに上位を席巻したのはペンスキー、マクラーレン、A.J.フォイトなどのシボレー勢で、琢磨はホンダ勢として3番手と言う結果になった。さらに、優勝候補でもあるチップ・ガナッシ・レーシングが1台も予選2日目に進めないという異常事態もあったりと、本当に波乱が多い予選だった。

 プラクティスからの流れを考えると、琢磨は首の皮一枚で残ったと言えなくもないが、予選セッティングに専念していたことが奏功した結果だと言えるだろう。

「もうホントにギリギリのところまで行ったし、ちょっと暑いけど早めに行ってあのタイムが出て良かったです。明日の予選2日目はシボレーが速いので大変そうだけど、なるべく前からスタート出来るように頑張ります」

 今日のトップ12セッションへの進出は、ベテランらしい琢磨のノウハウと気迫が生み出した結果だろう。明日の予選二日目はどんなアタックを見せてくれるか楽しみだ。

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