今年2018年は、ジャガーにとって記念すべき年だ。なぜなら、「XK」シリーズとその心臓部となった名機「XKエンジン」が誕生して70年を迎えたからだ。
この「XK」シリーズは、第2次世界大戦後、ジャガーが一流のスポーツカー/高級車メーカーとしての名声を博する契機となったモデル。それまでのジャガーといえば、「プアマンズ・ベントレー」とも揶揄されたりする「安いけれど性能よりもカッコ優先のクルマ」との風評がつきまとった。それをくつがえしたのが性能も美しさも第1級のXKシリーズだったのである。
登場から70年を記念し、7月12~15日にイギリスで開かれた「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(通称:FoS)」では、「70 Years of the XK」と銘打ったブースが特別に設けられた。
フェスティバル・オブ・スピードのメインイントである「ヒルクライム」では、1950~1951年の「アルパイン・ラリー」にて、イアン・アップルヤードのドライブで連勝を果たしたXK120スーパースポーツ(ロードスター)の有名なワークスカー「NUB 120」を先頭に、XK120フィクスト・ヘッド・クーペのワークスカー「LMK 707」が続いた。同車は、1952年にパリ近郊のモンレリィ・サーキットで、サー・スターリング・モスら4人のドライバーが交替しながら7日7夜を走破、その平均時速で、初めて100mph(約160km/h)超を達成したクルマである。
そのあとに続いたのが、1953年のル・マン24時間レースでトニー・ロルト/ダンカン・ハミルトン組に総合優勝をもたらしたXK120-C、通称Cタイプだった。
このほか、ジャガーのレーシングスポーツのなかで、アイコニックなモデルとして知られるDタイプは、実に3台が出走した。さらに、ジャガーEタイプの開発プロトタイプとなった「E2A」もヒルクライムに姿を見せた。そして、Eタイプベースの純レーシングモデル「Eタイプ・ライトウェイト」のなかでも、さらにエクストリームな空力モディファイ版「ロードラッグ・クーペ」も登場している。
ジャガーとしてもさることながら、自動車史においても極めて重要とされる珠玉のクルマが続々と出走したのだ。
ヒルクライムのコースサイドを埋め尽くしたギャラリーは、「ビッグキャット(ジャガーの愛称)」がハイスピードで駆け抜ける素晴らしいスペクタクルとともに、名作「XKエンジン」の直列6気筒DOHCエンジン音が轟かせるバリトンのごときエキゾーストサウンドを存分に味わうことできたのだった。
ジャガーXKと同じく今年70周年を迎えたのがロータスである。今年の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」では、自社ブースに1978年シーズンを制覇したF1マシン「ロータス79」を展示したほか、ヒルクライムの「スーパーカー」枠に、エキシージやエヴォ―ラなどの現行モデルが出走した。
その傍ら、筆者を含む“アラフィフ世代”には堪らない展示だったのは、「マルティーニ・ストライプ」をまとったレーシング/ラリーマシンだった。イタリアの老舗酒造メーカー「Martini & Rossi(マルティーニ・エ・ロッシ)」社が1968年以来、半世紀にわたってサーキットレースとラリーの双方で世界最高峰のカテゴリーをサポートしてきたことを記念し、ポルシェやランチアのワークスマシンたちを送り出すための専用パドックと、ドライバーやVIPのためのホスピタリティブースを設置したのだ。
今回、数多くのマシンを走らせたポルシェは、1973年の「911カレラRSR」やそのターボモデル、「935/78ターボ」や「936」などが、続々とマルティーニのパドックからコースインしていった。
ランチアは「モンテカルロGr.5ターボ」や「LC1」などレーシングマシンに、「037ラリー」や「デルタS4」、そして「デルタHFインテグラーレ」などのラリーマシンを送り出す拠点とし、パドックに詰めかけたファンたちを魅了した。
そして「ヒルクライム」では、ブルー/レッド/ブラックのマルティーニ・ストライプに彩られたポルシェとランチアが、それぞれのカテゴリーで快走した。世代的にドンピシャな筆者を含むエンスージアストたちを熱狂させたのである。
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