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完璧主義のレストア ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター ネジ1本までオリジナル 前編

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完璧主義のレストア ジャガーEタイプ・シリーズ1 ロードスター ネジ1本までオリジナル 前編

30年越しで仕上げたシリーズ1 ロードスター

英国クラッシックの定番といえば、ジャガーEタイプはその筆頭だろう。AUTOCARでも何度も登場している。

【画像】ジャガーEタイプ・ロードスター S1とS3 レストモッド版イーグルと最新のFタイプも 全113枚

ジャガーのレストアを専門とするポール・ブリッジズ氏は、Eタイプへの追求心が収まらないらしい。160 RKJのナンバーを付けたシリーズ1 ロードスターを、30年越しで手掛けてきた。

レストアが一段落したEタイプは、2021年に英国で開催されたコンクール・デレガンス、サロン・プリヴェでお披露目。同時開催となった、ジャガー・カークラブの60周年記念コンクールでは、オリジナルに準じた品質として認められ、優勝を掴んでいる。

シャシーや部品番号が一致するのは序の口。芸術作品を修復し鑑定するのと同じくらい、細心の注意が払われている。

ブリッジズは、ナットやボルト、ワッシャーに至るまでオリジナルであることを確認するため、信じがたい労力を割いてきた。長い間眠っていた真新しい部品だけでなく、40年以上前に製造されたダンロップRS5という、クロスプライ・タイヤも発見した。

彼は31年間、ジャガーでエンジニアとして働いた経歴を持つ。ジャガー・ランドローバー(JLR)によるクラシックカーの再生事業、リボーン・プロジェクトのプログラム・マネージャーも経験し、Eタイプのボディ修復へも公式に関わった。

自身のクルマを完璧にするという使命を感じても、不思議ではなかった。2018年以降はバーミンガム郊外のヘリテージ・クラシックス社へ移籍。日々の業務をこなしつつ、シリーズ1 ロードスターにも愛情を注いでいる。

量産仕様とは異なる最初期のEタイプ

ブリッジズが最初にEタイプを購入したのは、1989年。アメリカのアリゾナから、2+2のハードトップを6000ドルで仕入れたという。「あまり人気のない年式のEタイプでしたが、完全にサビとは無縁でした」

「英国で生き抜いたサンビーム・タイガーのボディを手掛けていた時期で、サビがないのが嘘のようでしたね」。と彼が振り返る。

それから数十年、ブリッジズはEタイプへの関心を強めていった。「整備士としての経験はありませんでしたが、父のフォード・カプリのクラッチ交換を、土曜日の朝に終わらせるだけの技術は持っていました」

レストア心へ完全に火が付いたのは、2000年。きっかけは、彼が出展したシリーズ3 ロードスターが、コンクール・イベントで優勝したことだったという。

ジャガーEタイプのレストアへ本格的に取り組むなら、160 RKJのようなシリーズ1は理想的といえる。1961年5月4日に製造されたシャシー番号850022のクルマで、右ハンドル車としては22台目に作られた、本当に最初期のEタイプだ。

その後の量産仕様とは異なる、この時期のモデルだけの特徴も備えている。一種のプロトタイプのような成り立ちで、一般的な知識だけでは完璧なレストアは難しい。

この850022のEタイプは、経営責任者の1人だったロフティー・イングランド氏と営業部門のために用意され、社会的に影響力を持つ人へ販売するよう指定されていた。量産を前にし、欠陥が出た場合の口止めを頼める人が候補だったようだ。

幸運にも近年まで保たれたオリジナル状態

当初選ばれたのが、レーシングドライバーのビクター・パーネス氏。しかし話が付かず、デモ車両としてしばらく使用され、ロンドン南東部にあるブロムリーという町のディーラー、KJモーターズへ卸された。

最初のオーナーになったのが、ピーター・ライト氏。モーリス・マイナーを売却し、100ポンドの手付金も支払い済みだった。ブラウンズレーンの生産ラインが本格始動するより早く、Eタイプが届くとは想像していなかっただろう。

160 RKJのナンバーで登録されたシリーズ1 ロードスターは、1961年10月に納車。ブラックのソフトトップにレッド・レザーの内装で仕立てられていた。当初はクラブレースでの走行が想定されていた名残りとして、コンペティション・クラッチが組まれていた。

ライトはEタイプを11年間所有し、オリジナル状態のまま約4万6000kmを走った。1972年以降は乾燥した環境に保管され、1980年代に入ると公道を走れる状態を目指し、地元のガレージへ簡単なレストアに出される。

この頃は、生産当時の状態を保つことへの価値が充分に認められていなかった。もし金銭的に余裕があれば、量産後の違う再生部品が用いられ、最初期の特徴は失われていたかもしれない。

しかし、資金に限度があったことが幸いした。レストアは途中で断念され、Eタイプの専門店を営むデビッド・エイガー氏へ売却された。

同じ頃、ブリッジズはサビだらけのサンビーム・タイガーのレストア真っ最中。だが、初期のEタイプ・ロードスターを手掛けたいという、最終的な希望を抱いていた。

1993年にEタイプを入手するも放置状態に

「1990年代の初めには、Eタイプも何台か手に入れていました。しかし、サイドロックのボンネットのクルマが欲しいと考えていたんです。そこで世界中を捜索。サンディエゴに1台見つけましたが、海岸沿いということでボディは錆びていました」

「それから、ディーラーへ手当り次第電話。デビッド・エイガーさんも含まれていて、初期のロードスターを所有しているものの、売却する気はないという返事でした。レストアするためにね」。とブリッジズが回想する。

「諦めきれず、何度も彼へ頼みました。しつこく。面倒くさくなって、当てずっぽうに売値を提示されるまで」

特別なEタイプに関する、価格の指標はまだなかった。「何を参考に値段を考えるべきか、わかりませんでした。かなりの高額で、実際の価値以上を支払ったと思います」

Eタイプは、部分的に分解されていた。それでも、センターロック・ホイールを固定するトールハンマーや純正のツールキットも残る、素晴らしい状態だったという。

念願のシリーズ1 ロードスターを1993年に入手したブリッジズは、ボディの修復を専門家のマーティン・ロベイ氏へ依頼した。「あまり悪い状態ではありませんでした。しかし、サイドシルやフロアは修復が必要でした。雨漏りしますからね」

一方、本人はJLRでの仕事が忙しくなり、自身のクルマへ時間を咲くことが難しくなった。修復されたボディは戻ってきたが、放置状態になったという。

この続きは後編にて。

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