国内最高峰の舞台で、絶大な支持を獲得
バイクライフを楽しんでいる人の中で、サーキット走行の必須アイテムであるレーシングレザースーツに興味を抱いている人はどのくらいいるのでしょうか。おそらく、あまり多くはない……ような気がしますが、日本のライディングウエアメーカーである「ヒョウドウプロダクツ」(以下、ヒョウドウ)の製品を目にしたことがある、もしくは愛用しているなら、時代に応じて着実な進化を遂げてきた、同社製レーシングスーツの最新事情を知っておいて損はないと思います。何と言ってもヒョウドウのストリートアイテムには、レースで培ったノウハウが活かされているのですから。
【画像】ヒョウドウの最新レーシングレザースーツを画像で見る(15枚)
本題に入る前に大前提の話をしておくと、近年の全日本ロードレース選手権で、ヒョウドウは絶大な支持を獲得しています。中でも最高峰のJSB1000クラスにおける着用率は圧倒的で、表彰台に登壇したライダー全員がヒョウドウユーザーというケースが珍しくありません。
ちなみに、この原稿を書いている2024年10月中旬時点でのJSB1000のシリーズランキングで上位に入っている6人、中須賀克行選手、岡本裕生選手、水野涼選手、高橋巧選手、津田拓也選手、岩田悟選手は、いずれもヒョウドウライダーです。
そして同社のレーシングレザースーツやグローブ、エアブースト(エアバッグウェア)の開発には、彼らの意見が反映されているのです。
ニットとシャーリングの面積拡大
そんなヒョウドウの最新作となるレーシングレザースーツが、既存の製品と同様にフィット感や軽さ、安全性を徹底追及しながら、自社開発のエアバッグウエア「エアブースト」の着用を前提にしてすべてを再構築した「AGILITY」(アジリティ:機敏、軽快という意味。スポーツやビジネスの世界では、状況変化に応じて柔軟かつ迅速に対応できる姿勢を示す)です。
これまでの同社の旗艦だった「ダイナミックプロ」と比較した場合、「アジリティ」の最大の特徴は、前側面のニットと背面・側面のシャーリングの面積を大幅に拡大したことでしょう。
具体的な話をするなら、脇/肩の後部と股/腰に使用していたニットとシャーリングを、前面の左右/脇腹部分にも配置し、ニットが脇と股、シャーリングが肩の後部と腰を結んでいるのです。その結果として、前身頃と後ろ身頃はフローティング的な構造になったのですが、もちろん、安全性はしっかり確保されています。
それに加えて、従来は別部品だったネックガード(コブ)と背面のレザーが一枚革になったこと、背面の上部にニット素材を配置したこと、ヒザまわりのレザーを3から2分割構造に変更して上部にカーボンプロテクターを設置したこと、シャーリングに新素材である「COVEC」(引っ張り強度や引き裂き強度、耐切断性、耐摩擦強度、対破裂性などに優れる)が選択できるようになったことなども、「アジリティ」ならではの特徴です。
また、一部の「アジリイティ」シリーズでは素材をレザーからCOVECに置き換えた仕様も展開する予定です。そのメリットは、機能的には軽さと良好な通気性ですが、熱でインクを浸透させる“昇華プリント”によって、既存のレーシングレザースーツでは実現できなかったイラストやパターン、文字が使用できるようになったことは、ルックスという面では大きなプラス要素でしょう。
サーキットからストリートへ
私(筆者:中村友彦)が取材に訪れた「ヒョウドウプラス浜松」では、同社の全製品が展示されています。それらをじっくり眺めた私は、レーシングレザースーツで培った技術がストリートアイテムに転用されていることを改めて実感しました。
中でもその印象が強かったのは、多種多様な形態が存在するD3OプロテクターとCOVECを使用するデニムパンツですが、2024年6月から発売が始まったエアブーストも、サーキットからストリートに派生した製品と言えなくはありません。
もちろん、最新レーシングレザースーツの「アジリティ」が導入した新しい技術も、将来的にはストリートアイテムに転用されることになるでしょう。
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