スペースシャトル「コロンビア」が宇宙空間への初飛行を成功させたのが81年。そのため80年代は神秘的な宇宙への憧れが強かった……かどうかは分からないけど、近未来感をムンムンに漂わせた一台をフィーチャー!REPORT●佐藤恭央(SATO Yasuo)PHOTO●星野耕作(HOSHINO Kosaku)
ジェントル&ユーモラス ホンダの挑戦的な一台!
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80年代前半のスクーター事情を漢字二文字で表すなら「挑戦」が相応しい。70年代後半からのソフトバイクブームもひと段落し、次の流行を作り出そうと各メーカーが躍起になっていた時期。爆発的ヒットを飛ばしたパッソルをライバル視したタクトやラブ、そしてヨーロピアンテイスト溢れるリード、サリアン、ジェンマなどハイエンドなモデルにも多数ラインナップされ、市場には多種多様なスクーターが乱立していた。
ただ、その多くは体面的に女性ユーザーをターゲットにしたもので、語弊を恐れずに言えばスクーターは軟弱な乗り物というイメージが強かった。そんな1982年の最中、ホンダから常識を覆す一台が発売された。それがスペイシーである。直線を基調としたシャープな外観は非常にスタイリッシュで、この斬新なデザインは大いに話題を呼んだ。グレードはデラックスとカスタムの二つが展開され、上級モデルのカスタムには、なんとスクーター初となるデジタル液晶メーターを採用!宇宙に思いを馳せる男子諸君ならばこの見た目と装備だけでご飯三杯は軽くいけてしまうが、もちろんその魅力はこれだけに留まらない。
高級路線のモデルであるためその作りは確かなもので、専用設計のフレームにはスーパーカブC50をベースに開発された5psの4ストエンジンを搭載。2ストが主流の中にあって4ストにこだわったホンダらしいチョイスといえよう。さらに、前後足周りは油圧式ダンパーを備え、その上質な乗り心地に4ストならではの静粛性や燃費性、トルク感が組み合わされて大人の男性が乗るに適した一台に仕上がっている。
このようにわが道を独走したスペイシーだが3速AT仕様のために変速のタイミングが合わず加速が鈍くなりがちだった。しかし、発売から2年後に無段階変速(Vマチック)へとリニューアルされたことでネガも払拭。さらなる人気獲得を後押しした。なお、スペイシーには兄弟分が存在し、二人乗りを可能にしたスペイシー125ストライカーがラインナップされている。このスペイシーシリーズは80年代で姿を消したものの、03年にスペイシー100としてリバイバル! 近未来感は薄れてしまったけれど、そのタフネスさと実用性の高さから多くの人のアシとして活躍し、バイク便でも数多く導入されたのは記憶に新しい。
結果から言えば、80年代のスクーターは「そこそこ安いスポーツ路線」が大正義だったのだが、スペイシーのような遊び心が溢れるマシンもまたホンダのチャレンジスピリットがもたらした功績なのだ。
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