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俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記第2部「少年探偵団編」のVol.2──スバル・レガシィ・ツーリングワゴン(初代)

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俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記第2部「少年探偵団編」のVol.2──スバル・レガシィ・ツーリングワゴン(初代)

「ボ、ボ、ボクらは少年探偵団・ヤングタイマー探訪記第2部」のはじまりです。1980年代、1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。今回は、探偵の生まれ年である1989年に登場した日本車を取材。永山探偵をサポートする“物知り少年”は自動車評論家の小川フミオ(少年O)とGQ JAPAN編集部のイナガキ(少年I)のふたり。取り上げるのはスバルのステーションワゴン「レガシィ・ツーリングワゴン」だ。

衝撃的なデビュー

29歳、フェラーリを買う──Vol.115 危機一髪! ガソリン漏れの結末

少年I ♪ピーポーゲットレーディ……

探偵 聞きなれないメロディーですね。いったいこの曲は?

少年O ロッド・スチュワートのマネでしょう。

少年I ダヤシンク、アムセクシー?

【前話】日産PAO

少年I 探偵のために解説すると、ロッド・スチュワートは英国出身のロックシンガー。『ピープル・ゲット・レディ』は、ジェフ・ベックと組んで1985年に大ヒットさせた曲ですね。ジ・インプレッションズにいたときのカーティス・メイフィールドが65年に作ったオリジナルもいい曲であります。

少年O ロッドはさいきんでも人気があって、英国の人気番組『The Late Late Show』に出たときもユカイでした。ホストのジェイムズ・コーデンとの車中対談形式。ザ・ローリングストーンズのギタリスト、ロニー・ウッドも在籍していたザ・フェイシズでツアーをしていた1970年代を思い出して「毎晩ドリンキング&シャギングだったなアー」と楽しそうに笑っていましたね。そうそう日本では、実業家というかタレントというか、大屋政子さんもロッドの大ファンでした。

探偵 で、ロッド・スチュワートとレガシィにどんな関係性があるのでしょうか?

【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
メルセデス・ベンツ500E
ランチア・デルタHFインテグラーレ

少年I 冒頭の曲は、スバル・レガシィのテレビコマーシャルに使われました。1993年の2代目ですけどね。このときはロッドもコマーシャルに出演していたんですよ。当時のクルマのCMって、海外の有名人が多数出演していましたよね。2代目ホンダ「レジェンド」のハリソン・フォードとか、5代目トヨタ「セリカ」のエディ・マーフィーとか。あ、バブル期に登場した3代目の日産「マキシマ」には、ケント・デリカット、ケント・ギルバート、チャック・ウィルソン、デーブ・スペクターの4人が出演していたのは印象深いですね。

少年O ロッドは英国の重税から逃れるため1975年ごろ米国に本拠を移しました。ロッドは米国うまれ、と、思っているひともいるぐらいで、北米市場に力を入れていた当時の富士重工業(現SUBARU)のイメージに合っていたともいえますね。

探偵 私のような1989年生まれにとっては、レガシィよりも、その後継車にあたるレガシィ・アウトバックやレヴォーグのほうが近い存在です。

【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
マセラティ・ギブリ(2代目)
メルセデス・ベンツGクラス(2代目)

少年I 今回のレガシィ・ツーリングワゴンは1989年型。スバルがきれいな状態で保管しているクルマです。なぜこのレガシィを保管しているのか? というと、2020年の2代目レヴォーグ発表と関係しているんだそうです。レヴォーグでは、より遠くまでより速くより快適により安全に、というスバルの“グランドツーリング思想”がうたわれています。航空機メーカーだった当時から受け継がれているこの哲学は、昨日今日生まれたものではないと、その歴史を伝えるために、レガシィを初代から5代目までレストアしてそろえたんだそうですよ。しかも、いつでも走行可能な状態で保管しているというからすごい。

探偵 今回の初代レガシィ・ツーリングワゴンは、新車当時から保管してあったんでしょうか。

少年O 中古車を購入したそうですよ。ただし、グッドコンディションではなかったそうで、たとえばルーフの内張りは、オリジナルではなかったため、似たような素材に張り替えたといいます。BBS製鍛造ロードホイールは磨きと再塗装。「最終的には新車1台分ぐらいの費用がかかりました」と、スバル広報部は教えてくれました。

探偵 新車1台分! たしかに実際乗ると、普通に乗れたのにはびっくりしました。最新のクルマとそれほど大差ないんです。それだけの費用をかけて手をいれたのであれば納得ですね。

少年O ところで、今回の試乗車は「GTタイプS2」というグレードですよね。

少年I はい、そうです。最高出力200psの2.0リッター水平対向4気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載していました。専用ダンパーを組み込んだスポーツサスペンションに、アクティブトルクスプリット式AWDシステムもそなえた高性能モデルです。現代でいうところのレヴォーグなどに設定されている「STIスポーツ」モデルに近いかもしれません。

【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
アルファロメオ・スパイダー(初代)
日産PAO

探偵 意外なほど“上質”なクルマでした。実際に運転すると、乗り心地はいいし、ハンドリングもしっかりしています。まぁ、“200ps”という数字から期待していたほどのパワフル感はそれほど感じませんでしたが、そのかわり、作りがいいし、適度な速さゆえリラックスした気分で乗っていられます。私にとってスバルといえば、ラリーで活躍した「インプレッサWRX」のようにスポーティ・高性能なイメージが強いんですが、初代レガシィ・ツーリングワゴンは、成熟した世界観のクルマですね。

少年O レガシィが1989年に発売されたときは驚きでしたよ。それまでのスバルは、実用的な「レオーネ」でしたから。それが、うんと上質で、かつ、ボクサー(水平対向型)エンジンにシンメトリカルAWD(左右対称に近い4輪駆動のドライブトレイン)と、メカニズムもセリングポイント。しかも“ツーリングワゴン”というステーションワゴンがシグネチャーモデルのレガシィが出たわけで。こういうコンセプトの日本車はなかったので、衝撃的でした。

探偵 なぜ、それほどまでに衝撃的なモデルがスバルから登場したのでしょうか?

少年O 製品化は、当時の社長の英断だったそうで。性能チェックのために大事なテストコース建設にゴーを出したのも、おなじ人。レガシィにつづいて1992年にはインプレッサで、スポーツイメージをどんどん強化したのも、今日のスバルにつながりますものね。企業はひとなり、の好例ですよ。

探偵 なるほど。レガシィがなかったら今日のスポーティなスバルはなかったのかもしれませんね。

少年O レガシィ・シリーズでエポックメーキングなのは、1993年に登場した2代目です。スタイリングコンセプトなどは初代の継承であるいっぽう、インタークーラー付き2ステージツインターボ、アクティブトルクスプリット式AWD、電子制御エアサスペンションなど、装備もりだくさん。これらが、しっかりと理想のスポーティセダンとスポーティワゴンを作るためと、視座がしっかりしていたのがレガシィ。それでいて、ボディはいわゆる5ナンバーサイズ(全幅1.7m未満など)だったので、そりゃあ、ヒットしますよね。

【俳優・永山絢斗の“ヤングタイマー”探訪記】
メルセデス・ベンツ500E
ランチア・デルタHFインテグラーレ

少年I トヨタは「カルディナ」、日産は「ステージア」、三菱は「レグナム」と、競合他社が続々とスポーティな雰囲気のステーションワゴンを投入したのも、レガシィが金脈を掘り当てたからですね。

探偵 少年がいま挙げたモデルのなかで、初代のコンセプトをいまもしっかり守っているのは、スバルだけかもしれません。ステージアやレグナムは、今、ないですよね?

少年O 悲しいかな、後継モデルはありません。だから、レヴォーグを作り続けるスバルのひたむきさは注目すべきです。SUVブームにあっても、レヴォーグは“ステーションワゴン”と“ボクサー・エンジン”を強調してきたのも、イメージ確立におおいに寄与していますね。これもブランディングにとって大事なことでしょう。そこに「アイサイト」という運転支援と安全のためのシステムを盛り込んで、スバル車にしかない世界観を作り上げた。

少年I トヨタ・クラウンですら次期型はSUVになるかもしれない!? なんてウワサが出たほどだから、ワゴンにこだわり続けるスバルはスゴいです。

少年O ちなみにレガシィにはセダンもあって、こちらは「RS」というスポーツモデルもあるぐらいで、ワゴンとすこし世界観がちがう。こちらのほうがスパルタンというか。走りが好きなひとはセダンでした。

少年I 1990年に、いすゞ「アスカCX」として、いすゞにOEM(相手先ブランド生産)供給したのもセダンでした。高性能版が欲しいひとはスバルを買うんですけれど。

探偵 スバルのこだわりの強さに驚きました。レヴォーグに再注目してみよう……という気になったほどです。クルマづくりに信念を感じました。

少年I 信念というカギがあれば、どんなドアも開くし、望む場所に連れていってくれる列車にも乗れる。

探偵 それは?

少年O 冒頭のピープル・ゲット・レディの一節ですな。

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日産PAO

【プロフィール】

俳優・永山絢斗(ながやまけんと)

1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。

2021年8月13日(金)放送の終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』(NHK総合・22時~)には冬木克太役で出演する。

まとめ・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア・松本明男 メイク・中村了太

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