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フォード・マスタング・マッハE GTへ試乗 486psと87.4kg-m 楽しいDNA受け継ぐ

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フォード・マスタング・マッハE GTへ試乗 486psと87.4kg-m 楽しいDNA受け継ぐ

合計486psのモーターに専用の足まわり

執筆:Richard Lane(リチャード・レーン)

【画像】フォード・マスタング・マッハE GT 欧州で競合する純EVクロスオーバーと比較 全121枚

翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)


クロスオーバー・カテゴリーで着実に数を増やしている純EV。メルセデスAMG GT ブラックシリーズやポルシェ911 GT2を超える最大トルクを持つモデルが、選択肢に加わった。

フォードの純EVクロスオーバー、マスタング・マッハEに「GT」が登場。四輪駆動のみの設定で、フロントとリアに強力な駆動用モーターを搭載する。ただし、オプションを少し追加すると、英国価格はアウディSQ5より高くなってしまう。

マッハE GTの最高出力は486ps、最大トルクは87.4kg-mに達する。粗野にならないよう、思慮深いESPがなだめてくれる。GTならではの機能も追加されているが、乗車定員は5名のままだ。

アルミホイールは複雑なメッシュ・デザインの20インチ。タイヤは純EV専用設計のピレリPゼロが組まれる。

磁気粘性流体によるマルチモード・ダンパーと、高性能なブレンボ社製ブレーキを獲得したこともポイント。フロント側には、直径385mmの大径ディスクを備える。2198kgの車重を受け止めるために。

コーナリング時の安定性を高めるべく、タイヤのネガティブキャンバーが強められ、車高は10mm落とされている。ブラック・アウトされたフロントグリルと、フロントバンパーの下に追加されたスポイラーで、やる気に溢れたスタンスに仕上がっている。

フォードがマッハE GTへ、見た目以上の内容を与えたことは明らかだ。さらに試乗車のボディはサイバーオレンジという派手なカラーで、一層目立っていた。

サーキット走行に最適化させたモードも

格好だけではないことを示す1つが、アンテイムド・プラスと名前が付けられた専用のドライブモード。ESPの介入を控えめにしつつ、バッテリーに負荷をかけるパワーブースト機能が切られる。

野性的というモード名と反するように思えるが、このドライブモードは、サーキット走行に最適化させた設定。よりハンドリングの自由度が増す一方で、最高出力を抑えるかわりに、利用頻度の高い領域での能力が高められる。

つまり、直線加速を求めるスピード狂を相手にしているのではなく、マッハEの走りの能力を引き上げることが目指されている。クルマ好きが運転したいと思える、普段使いの純EVに仕立てることが本来の意図だ。

果たしてその仕上がりは、実際に公道を走らせてみると、良し悪しが入り交ざる。まず良い部分として、マッハE GTは速い。0-100km/h加速は3.7秒しかかからない。

背骨がシートバックに押し付けられる程ではないものの、100km/h前後までなら、フォルクスワーゲン・ゴルフRやメルセデスAMG A45を凌駕するだろう。テールを沈めながら、怒涛の勢いを味わえる。

ドライブモードに関わらず、アクセルレスポンスは鮮明。特にアンテイムド・プラスでは鋭い。デュアルモーターの能力が、最大限に引き出される。

能力の幅が広いことも魅力。高速道路を心地よく長距離移動できると同時に、カーブの続く郊外の道では、優れた姿勢制御とトラクションで、流暢に駆け抜ける。シャシーに過度な負荷を与えない限り。

ストロングポイントは自由度のある操縦性

今回試乗したクロアチアの荒れた路面での印象から察するに、英国の路面環境との相性はあまり良くないかもしれない。リアタイヤ側の落ち着きが少々足りず、不安定さを感じることもあった。

マスタング・マッハE GTのストロングポイントは、自由度のある操縦性。コーナーでは、アクセルペダル操作でフロントノーズを内側へ巻き込んでいくこともできる。ペダル操作から0.5秒もあれば発揮される極太の最大トルクのおかげで、意のままだ。

この挙動は、マッハE GTに与えられたニュートラル寄りの、40:60という前後の駆動力配分でありながら実現できている。通常のマスタング・マッハEの四輪駆動モデルでは、30:70に設定されている。

一方で突然、オーバーステア状態に変化することも。ESPがこらえきれず介入してしまう。よりチューニングが磨かれ、ESPの監視下の中で穏やかにオーバーステアへ推移するシャシーになれば、ドライビング体験は一層楽しいものになるだろう。

もう1つマッハE GTで気になる点が、ステアリング。切り初めの反応は良く、重み付けもクラス水準でいえば自然と呼べるもの。だがコーナーを攻めていくと、レシオがスローになるような印象を受けた。

優れた姿勢制御とアクセルペダルの反応を備えているだけに、シャシー能力を発揮できるステアリングも求めたくなる。現状では、コーナーへの進入時も頂点へラインを絞る時も、旋回する動きに抵抗感があるようだった。

運転が楽しい純EVへ一歩づつ接近

筆者としては、相当に積極的な運転をしなければ、オーバーステアへ持ち込めないことももどかしく感じた。低速域でのコーナリングはアンダーステアが支配的。BMW 3シリーズのようなスポーツサルーンが備える、充足度までは達成できていない。

確かに、ブレーキを用いたトルクベクタリング機能や、前後モーターの出力調整で、トラクションは完全に近い状態で制御されている。しかしフォードらしい、動的能力の一貫したアイデンティティのようなものは感じられなかった。

理性が効いた状態から、ワイルドな状態へ揺れ動くとでもいえようか。コーナーへ侵入するたびに。

通常のマスタング・マッハEの後輪駆動版、RWDは、より自然な操縦性のバランスを備えている。粘りのある操舵感は、内燃エンジンを搭載したフォード車にも通じる部分だ。

マッハE GTでも味わえるが、あと付け感が否めない。マスタング・マッハEで最も充足感のあるドライビング体験が得られる、とまではいい切れないだろう。

短時間の海外試乗ながら、マスタング・マッハE GTから受けた印象は大きかった。走りに定評があるフォードのDNAを受け継ぐモデルとして、運転が楽しい純EVへ、一歩づつ近づいていることは間違いなさそうだ。ポルシェがタイカンで挑んでいるように。

だが、向上したパフォーマンスと乗りやすさを兼ね備えているとはいえ、まだ期待には届いていない。英国価格6万5000ポンド(1007万円)のクルマとして。英国の道路環境で、改めて検証してみたい。

フォード・マスタング・マッハE GT(欧州仕様)のスペック

欧州価格:6万5080ポンド(1008万円)
全長:4712mm
全幅:1881mm
全高:1597mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:3.7秒
航続距離:498km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2198kg
パワートレイン:ツインAC同期モーター
バッテリー:88.8kWh(実容量)
最高出力:486ps(システム総合)
最大トルク:87.4kg-m(システム総合)
ギアボックス:−

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