ミニバンなのに4人乗り
レクサスが高級ミニバンの「レクサスLM」を、日本で正式発表した。12月下旬ころの発売を予定している。
【画像】えぐい! でも乗ってみたい「レクサスLM」【デザイン/内装を見る】 全52枚
現時点では「LM500hエグゼクティブ」というグレードのみを販売するのだが、そのプライスタグは2000万円。
価格帯は超高級車の域に入っている。なぜこれほどまでに高額なのか。
このクルマで1番の特徴といえば、乗車定員を4人とした豪華なインテリアだ。
内装は、部品間の段差を「極限まで」減らしたというほど仕上がりに力を入れている。
リアのスライドドアのトリムは、グラデーション状のパンチングを施してあり、そのモダンな世界観はレクサスの次世代を印象づける。
そして、リアシートとフロントシートの間は、大型ディスプレイ(48インチ!)を内蔵したパーティションによって隔てられている。
2000万円は妥当なのか?
パーティションの構造は、マグネシウムダイキャストを部分的に使用しており、強度は高い。
上部には昇降・調光ガラスが設定されており、静粛性・プライバシーの面でもリアシートは“前席とまるで別の部屋”という感覚だ。
このクルマの主役は後席に座るヒトなのである。
日本で後席に要人を乗せるクルマといえば、トヨタ・センチュリー・セダンの役割だった。現行型の価格は2008万円。LMの価格とほぼ同じ。
またレクサスの上級セダンといえばレクサスLS。上位グレードは1800万円クラスだ。それでも後席は、別の部屋を思わせる造りにはなっていない。
バン・タイプの車種ではどうだろう?
高級車のアイコンであるメルセデス・ベンツには、バン・ボディの「Vクラス」が存在する。上位グレードは1300万円台となる。ただし、こちらは7人乗りなので、4座仕様の設定はない。
Vクラスの購入者がLM並みのリアシートを手に入れるには、特別仕立てのコーチビルダーへ依頼することになるだろう。その費用を考えるとLMの価格帯になるはずだ。
重要なのは、たとえVクラスの後席を“個室”のようにしたとしても、その車体構造が商用バンの血筋という事実からは逃れられないこと。LMは、レクサスRXなどと同じTNGAを基礎骨格としている。
「静か」の意味が1歩進化
新型LMは、近年のラグジュアリーマーケットにおける顧客の“価値観の変化”をうけてフルモデルチェンジされた。レクサスは「すべての乗員が自然体でくつろげる乗り味と居住空間を作り上げることを目指しました」と説明している。
とくにこだわったのが“心地よく感じる自然な静けさ”と表現された「静粛感」。
ナチュラル・クワイエットという言葉をコンセプトに掲げ、音圧だけでなく音色・バランスを重視し、森でくつろぐような心地よさを追求したという。
その手法は、源音を小さく(低減)、車内への侵入を防ぐ(遮音)、車内のノイズを下げる(吸音)という3ステップで取り組まれている。
面白いのは、外部からの音を完全にシャットアウトするのではなく、「音の適度な反射により空間の広がりを感じさせる工夫」を施したこと。
例えば、天井の内張りは、あえて非吸音化するなど新しい発想の開発を進めた。
新型LM 海外の反応は?
新型LMは、ロールス・ロイスのお膝元、英国でも受注が始まり、すでに170台を超えるオーダーを集めている。
4座仕様の価格は、邦貨換算で2000万円クラス。2024年には、さらに300件の注文が入るとレクサス現地法人は見込む。
こうして見ると、トヨタ・センチュリー・シリーズの方向性とも、輸入車ブランドのプレミアムクラスとも異なる商品性を持っているLM。
次世代レクサスが提案する“新たなフラッグシップモデル”というわけだ。
少し下のクラスでは、新型アルファード/ヴェルファイアにも4人乗りの試作車が存在することが分かっている。
フルモデルチェンジが待たれる日産エルグランドにも、かつては4人乗りの「VIP」がラインナップされていた。
日本のショーファードリブン市場は4人乗りミニバンに軸足を移し、やがては日本発の高級車の提案として世界に受け入れられるのかもしれない。
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