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トヨタが2023年スーパー耐久挑戦に向けた取り組みを発表。液体水素は第1戦は欠場も挑戦は継続

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トヨタが2023年スーパー耐久挑戦に向けた取り組みを発表。液体水素は第1戦は欠場も挑戦は継続

 3月18日、トヨタ自動車は三重県の鈴鹿サーキットで開催されるENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Powered by Hankook第1戦『SUZUKA S耐』の会場内で記者会見を行い、残念ながら今回は参戦が実現しなかったものの、液体水素を使用したORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの取り組み、さらにST-Qクラスに参戦するORC ROOKIE GR86 CNF Conceptの取り組みについて説明を行った。

 TOYOTA GAZOO Racingは、『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』をテーマに掲げ、スーパー耐久を舞台に戦うORC ROOKIE Racingとともに挑戦を続けている。スーパー耐久では、ST-2クラスに登場したGRヤリス、さらに2021年第2戦富士からはモータースポーツ界のみならず画期的な取り組みとなった水素エンジンを積むORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptを投入。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを行っている。

水素エンジン搭載のORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptがスーパー耐久第1戦鈴鹿を欠場へ

 迎える2023年シーズンに向けては、2月23日に富士スピードウェイで行われた公式テストで、非常に画期的な液体水素を使用した水素エンジンを積んだGRカローラを登場させた。ただ、その後3月8日に行った社内専有テストで、エンジンルームの気体水素配管からの水素漏れによる車両火災が発生。残念ながら第1戦は欠場となってしまった。

 ただORC ROOKIE RacingとTOYOTA GAZOO Racingは、5月26~28日に開催される第2戦富士SUPER TEC 24時間レース参戦を目指し、引き続き開発を進めていくという。第1戦鈴鹿の予選日となる3月18日に鈴鹿サーキットで行われた記者会見には、4月からトヨタ自動車社長に就任する佐藤恒治執行役員、さらに川崎重工業の橋本康彦社長、岩谷産業の間島寛社長執行役員が出席した。

 今季に向け、トヨタの佐藤執行役員は「先日発表させていただいたとおり、テスト走行時の不具合により、車両復旧が間に合わなかった都合上、今回の参戦を断念することになりました。楽しみにしてくださった皆さま、我々とともに準備を進めていただいた皆さまにお詫びしたいと思います。しかしながら、この挑戦を揺らぐことなくしっかりと前に進め、富士24時間には挑戦できるよう、全力で取り組んでいきたいと思っています」と語った。

「スーパー耐久への挑戦は3年目ですが、『意志ある情熱と行動』のもと、選択肢がないのであれば、自分たちで選択肢を作っていこうと、現場で水素エンジンを鍛えてきました。回数を重ねるごとに、水素を『つくる』『はこぶ』『つかう』というサプライチェーンを考えた取り組みの大切さを感じているところです」

■液体水素エンジン開発の難しさは
 水素エンジンの参戦については、2021年の挑戦開始時には8社のみの“仲間”とのスタートだったが、液体水素を使う今季は、39社にまで増えた。そして川崎重工、岩谷産業、電源開発などから構成される技術研究組合である『HySTRA』のプロジェクトとして、川崎重工が建造した液化水素運搬船『すいそ ふろんてぃあ』で、2022年2月に豪州から輸送した褐炭水素を、水素エンジンカローラの燃料の一部として使用する予定となっている。

 液体水素に燃料を変更することで体積当たりのエネルギー密度が上がることから、富士24時間に向けて満充填からの航続距離は約2倍、充填時間はこれまでの気体水素時と同じ約1分半を目標に開発を進めていき、年間を通じてエンジン性能、航続距離、充填時間をさらに改善していくという。これまでの気体水素では、ピット周辺に広大な給水素設備が必要だったが、大きくコンパクトになる。これも水素社会実現に向けては、大きな技術的な貢献となるはずだ。

 一方、液体水素は充填や貯蔵の際に-253℃より低い温度に保つ必要があり、低温環境下で機能する燃料ポンプの技術をいかに開発するか、またタンクから自然に気化していく水素にどう対応するかなど、技術面で非常に難しい部分がある。この挑戦については、これまで同様水素を『つくる』『はこぶ』『つかう』という分野において、それぞれ“仲間”と連携し、課題克服に取り組んでいく。「世界初の、本当に難しい挑戦(佐藤執行役員)」という液体水素について、トヨタが挙げるメリットと課題は下記のとおりだ。

●液体水素搭載のメリット
・体積エネルギー密度が高く航続距離が伸びる
・水素ステーションのコンパクト化(ピット内で充填が可能)
・昇圧の必要がなく、複数台連続の充填が可能

●液体水素搭載の課題
・-253℃より低い温度を保つ必要がある
・タンク内での受熱により気化する水素への対応
・-253℃の低温環境下で機能する燃料ポンプの技術

 非常に困難な取り組みのレースデビューが、ふたたび富士24時間が舞台となることになったが、これについては「気体水素のときも、MORIZOさんの『出ようよ』という言葉からスタートして富士24時間がデビューでしたが、今回の液体水素も富士がデビューになるのは運命なのかな、と思います。しかし、しっかりとした技術をもったパートナーとの挑戦なので、ワクワクしながら楽しみにしています」と佐藤執行役員は語った。

■『もっといいクルマづくり』の挑戦を継続
 また、水素エンジンを積むORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptのみならず、今季もST-QクラスにはORC ROOKIE GR86 CNF Conceptを投入。カーボンニュートラル燃料を使用し、同じ燃料を使うスバルのTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptと戦う。夏以降はさらに、ST-Qクラスにマツダがロードスターを投入しこちらもともに競い合っていき、燃料の選択肢を広げる取り組みを、仲間とともに継続していく。

 さらにST-4クラスでは今季トヨタGR86使用チームが増加しているが、レースで鍛えることで、市販モデルやパーツの開発に活かしていく。2022年チャンピオンのTOM'S SPIRITはもちろん、他のチームと切磋琢磨しながら、一部の知見を共有することで、ST-4クラス全体の盛り上げにも寄与していきたいとした。

 今回、ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは欠場となっているが、代わって出場しているORC ROOKIE GR YARISも以前のままではなく、さまざまなパーツをトライしているという。今季もTOYOTA GAZOO RacingはORC ROOKIE Racingとともに、『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』への取り組みを止めることはなさそうだ。

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