新車試乗レポート [2023.09.29 UP]
ヒットを約束されたレクサス LM【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●レクサス
レクサス 見えてきた未来【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
先週のレクサスLBXに続いて、今回はレクサス LMの詳細をお届けする。レクサス LMはアルファード/ヴェルファイアのレクサス版に当たる。アルヴェルですら上級グレードではかなり贅沢な内装を与えられているが、それがレクサスブランドともなれば、当然それ以上でなければならない。レクサスの言い分としては「次世代LEXUSが新たな選択肢として提案するフラッグシップMPV」だそうだ。
レクサス LM
ポイントは運転席と後席キャビンの間のパーテーション。とりあえず発売当初はこのパーテーション付きしか選べないらしいが、受注が落ち着いたら無しのモデルも追加されるという。ちなみにパーテーションありのモデルは、後ろの客室のシートは2脚のみ。よくキャプテンシートと呼ばれる独立シートが2人分だ。3列目はない。だからLMはあれだけのボディサイズを持ちながら運転席、助手席を合わせて4名乗車モデルである。
レクサス LM
キャビンの内装はもう隙がないくらいの革張り。まあそうだろう。デザインは少なくとも目障りなところはない。と歯切れが悪いのは、筆者的には豪華すぎて居心地がわるい。ただLMを買おうという人はおそらくこういう世界観を求めているのだろうし、それはそれでメインターゲットには良きモノなのだと思うが、自分が当事者ではないので想像でしか言えない。
これまたゴージャスなシートにはあらゆる調整やオットマンやマッサージ機能が付いており、エアコンやオーディオも含めて、後席2人分の、取り外せるスマホ型リモコンがそれぞれに用意される。多分初めて乗った時はこれだけで30分は遊べるだろう。
レクサス LM
さて、件のパーテーションには、冷蔵庫と巨大な48インチスクリーンが設られ、写真でもわかる通り、パーティションの上部のガラスは瞬間調光ガラス。これは左右分割式のガラスルーフも同様。スイッチひとつ透過度が変わる。パーティションはもちろん電動で上下する。間仕切りのガラスを上げて曇りにすると、キャビンは、過去に経験したことのない個室感が味わえる。鉄道のA寝台車に近いだろうか。仕事が終わったVIPが誰にも見られることも干渉されることもなくくつろげるという意味では、相当にレベルが高いと思われる。
もっとも今回は富士スピードウェイの構内通路で15分程度の試乗なので、あくまでもちょっと味見の印象の話に過ぎない。このシートで、ある程度長時間を過ごしてみないと、本当に落ち着くのかどうかは判断できない。
なお、多分、普通の家庭でこれを買うのは止めておいた方がいい。全席と後席は身分が違うくらいの隔絶感がある。同じクルマに搭乗している気がしない。運転する人は従来のミニバンよりはるかに運転手である。
当然ハンドルも握ってみた。面白いのは運転モードで、「リヤコンフォート」が選択できる。加速を穏やかにし、アシも穏やかに。なおかつブレーキの効きもリヤブレーキの比率を高めている。これによって減速時のノーズダイブを防いで、後席の快適性を上げている。運転する側もショーファーに徹する限りはその制御はありがたく、いちいちピリピリしなくてもクルマを穏やかに鷹揚に動かせる。これは売れるだろう。
実は古くは1984年のルノー・エスパスや1990年のトヨタ・エスティマの頃から、こうしたモノフォルムのミニバンをベースに大きなエアボリュームを備えた新時代のセダンを作れないかのトライが行われてきたわけだが、今回のアルヴェルにおいて、それはようやく完成を見たのかもしれない。そしてそれに明確なショーファー要素を加え、内装に贅を凝らしたレクサスLMは、もしかしたら世界に新しい自動車の時代を産むかもしれない。
ながらく自動車マニアから軽んじられてきたミニバンだが、これだけ走るようになると、見る目は変わる。LMが最も売れるのは中国や中東だとは思うが、もしかすると欧州で新しいジャンルとして確立するのではないか。そんな気がするのである。
レクサス LM
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