2002年に乗用車販売事業から撤退したいすゞ。若者にとっては“いすゞ=トラック”かもしれないが、ベレットや117クーペなど日本自動車史に名を残す名車は数知れず。そこで、ここでは比較的記憶に新しい4車種を紹介したい。
文:FK/写真:いすゞ
オヤジは知っている!! トラックだけじゃないんだよ!! [いすゞ]って実は名車の宝箱だった!
■何から何まで“個性のカタマリ”という言葉がぴたりとハマったミュー
実寸大のチョロQともいわれた個性的なデザインがひと際目を惹く初代ミュー。ほかのSUVにはなかったビビッドなボディカラーが採用されたことも特徴のひとつだった
1989年に“事件な乗り物”という意味深なキャッチコピーとともにデビューしたSUVのミュー。
MYSTERIOUS UTILITY(ミステリアスユーティリティ)の頭文字をとった車名からもわかるように2ドア2シーターというパッケージをはじめ、1780mmのワイドボディが生む精悍なフォルム、ハードカバーとソフトトップという2種類のボディタイプ、洗練された迫力のブリスターフェンダーによる個性的なスタイリングなど、単なるSUVとは一線を画すエクステリアが大きな特徴であった。
また、デビュー当時はエンジンが2.6L直列4気筒ガソリンのみ、トランスミッションも5速MTのみの設定など、割り切ったシリーズ展開も話題を呼んだ。翌1990年には2.8Lのディーゼルターボ搭載モデルを追加するとともに、4人乗りのメタルトップモデルを設定。
1993年にはホンダとの間で締結された商品の相互補完に関する基本契約に基づき、ミューをベースにしたOEM車のジャズなるSUVがホンダから登場。
ジャズ専用のアルミホイール、ボディカラー、シート表皮、ドアトリムなどを採用することでミューとの差別化も図られていた。
こう聞くとやや色物の雰囲気が漂う初代ミューではあるが、実は最大安定傾斜角度は右側47°/左側49°、アプローチアングルが41°、デパーチャーアングルが33°、最低地上高が240mmとクロカンモデルとして一級品のスペックも誇っていた。
その後、1998年6月に行われたフルモデルチェンジでは、サイズが全長・全幅・全高ともにひと回りサイズアップ。
2000年と2001年には一部改良が行われたが、2002年の乗用車事業完全撤退を受けて国内での販売を終了。現在は絶滅の危機に瀕している2ドアSUVなだけに、今の時代に発売されれば熱烈に歓迎される……かも!?
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■骨太かつワイルドな本格SUVとして国内外で評価が高かったビッグホーン
いすゞが1972年に販売を開始したピックアップトラックのファスターロデオ。その2代目のシャシーとパワーユニット、4WDシステムを使用してSUVに仕上げられた初代ビッグホーンが発売されたのは、1981年9月のことだった。
“荒野にのみ生きようとする四輪駆動車の時代は終わった。あらゆる地形を走る4WD機能に快適な乗り心地と軽快な操縦感覚を加味した真のマルチパーパスビークル”としてデビューしたビッグホーン。
発売当初のボディタイプはショートバン、ロングバン、ショートソフトトップの3種類で、エンジンはマイナス20℃の寒さのなかでも3.5秒で始動が可能なQOS(クイック・オン・システム)を搭載した2.2L直列4気筒ディーゼルが採用された。
デビューから10年後の1991年12月には3ナンバー専用ボディに200psの3.2LのV6 DOHCガソリンと125psの3.1L 直4ディーゼルターボという2種類のエンジンを設定した2代目が登場。
当初はロングボディのみの設定だったが、1992年3月にショートボディが登場してグレードもベーシックのほかに3つが展開された。
そのなかでも、ガソリンエンジンとショートボディを組み合わせたイルムシャーRSは1994年のパリ・ダカールラリー市販車無改造部門でのクラス優勝で高い走行性能を証明してみせた。
1995年のビッグマイナーチェンジでは、一部グレードに前後輪のトルク比を0:100の後輪駆動状態から50:50の直結4WD状態まで自動制御するトルク・オン・ディマンドを採用。
2001年6月の一部改良でもガソリンエンジン用コンピュータの32ビット化をはじめ、各気筒の燃焼状態を検知して最適な点火時期を設定するイオンセンシング式イグニションシステム、リニアなアクセルワークを実現した電子制御スロットルを採用して商品力の向上が図られた。
が、しかし……。2002年にいすゞの乗用車事業からの完全撤退にともなって惜しまれつつも生産終了となった。
■街の遊撃手ことジェミニはモータースポーツの世界でも活躍したホットモデル
1974年から1987年の13年間にわたって販売された初代ジェミニ。デビュー当初は逆スラントノーズが採用されていたが、1979年のマイナーチェンジでスラントノーズに変更された
双子座を車名の由来としながら、GMとの提携で共同開発されたグローバルカーがいすゞとユーザーを信頼で結ぶことを願うべくジェミニと名付けられた小型乗用車は1974年に販売が終了したベレットの後継車として登場。
1974年から2000年の26年間にわたって販売されたジェミニは日本にとどまらず、オーストラリアやアメリカを中心に輸出され、1975年度のオーストラリアにおけるカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、グローバルモデルとして高い評価を獲得した1台でもあった。
そんな初代ジェミニの存在感を印象づけたのは、1979年に追加されたスポーティグレードのZZだろう。
スラントノーズ化によるスタイリッシュなデザインをはじめ、130psを発生するDOHCガソリンエンジン、4輪ディスクブレーキの採用、前後スタビライザーの強化などで高い走行性能を発揮。なかでも2ドアのクーペボディを採用したZZ/Rは全日本ラリー選手権でも活躍した。
1985年に行われたフルモデルチェンジでは駆動方式がFRからFFに移行される大きな変更が行われたが、その2代目が大きなインパクトを与えたのはテレビコマーシャルだった。
“街の遊撃手”のキャッチコピーでパリの街並みを2台のジェミニが疾走するその様は、クルマ好きならずとも記憶に残っている人は決して少なくない。
また、2代目はジウジアーロ率いるイタルデザインによる直線を基調としたスポーティなフォルムも斬新であった。
1987年には内外装が変更され、ドイツのイルムシャー社がサスペンションをチューニングしたスポーツモデルや英国・ロータス社がチューニングしたジェミニ ZZ handling by LOTUSモデルといったスポーツモデルも発売された。
その後もグリルレスのフロントマスクとショートフード・ロングキャビンを採用したカプセルフォルムの3代目、ホンダドマーニのOEM車として発売された4代目&5代目が登場したが、2000年にこちらも販売が終了となった。
■ピアッツァはジウジアーロが生み出した唯一無二のスタイリングが一世風靡!
1979年のジュネーブモーターショーにアッソ・ディ・フィオーリ(イタリア語でクラブのエース)の名で発表されたピアッツァ。
その後、1981年5月に市販化されたピアッツァは、完璧なフラッシュサーフェスとくさび型のウェッジシェイプフォルムによる空力特性と居住性を融合して大きな注目を集めた。
しかし、注目を集めたのは独創的なスタイリングだけにあらず! 世界初のメモリー式チルトステアリングをはじめ、クイックアジャスト機構付無段階調整式マルチコントロールシート、セミリトラクタブルヘッドランプ、デジタルメーター、サテライトスイッチなどの先進機能も数多く採用されていた。
そんな初代ピアッツァのなかでも1985年に登場したイルムシャーは、高品質で際立つ個性を放ったスポーツバージョンとして知る人ぞ知る存在だ。
サスペンションはドイツのイルムシャー社と共同でチューニングし、エンジンも180psの最高出力を発生する2Lインタークーラーエレクトロターボを搭載。
加えて、専用の空力デザイン、MOMO社製本革巻ステアリング、RECARO社製レカロシートなども標準装備。精悍なブラックで統一されたインテリアもスポーティムードを演出した。
そんなピアッツァは1991年8月にフルモデルチェンジを実施。
アメリカではインパルス、国内ではPAネロ(ヤナセが販売)の名で販売されていたクーペをベースに、新開発の1.8L DOHC16バルブDOHCエンジンを搭載して登場した2代目。
エアダム一体式バンパー、リアスポイラー、セミリトラクタブル4灯ハロゲンヘッドランプなどでスポーティな印象を高めたエクステリアに加え、MOMO社製本革巻ステアリングやRECARO社製レカロシートを標準装備とし、サスペンションのチューニングも英国ロータス社が担当するなど魅力あふれるスペックを誇った。
しかし、群雄割拠の様相を呈していた当時の国内スポーツカー市場においてセールスは低迷。1995年に販売が終了となった。
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