予想外に温かい受け止められ方
ロンドン中心部の交差点で止まる。「凄いカッコいいなぁ」。そんなことを、隣のサイクリストが呟く。信号が青へ変わり、静かに発進。「ワォ、電気だ。凄い!」。これははっきり聞こえた。
【画像】「85%」の電動なんです! ベントレー・ブロワー・ジュニア 本家コンティニュエーションと4 1/2リッターも 全80枚
出発してから15分しか経っていないが、同じような反応が繰り返される。ある人は、満面の笑みで振り返って「最高の一日を楽しんで!」と叫んでくれた。気難しい人が少なくないロンドンとしては、予想外に温かい受け止められ方だ。
もっとも、運転している自分はメチャクチャ楽しいから、そんな反応なしでも笑顔。渋滞に巻き込まれても平気。リアシートで撮影するフォトグラファーも、交差点を曲がるたびに、声を上げながら喜んでいる。
この真っ黒なクルマは、リトルカー・カンパニーが仕上げたベントレー・ブロワー・ジュニア。同社はアストン マーティンDB5やフェラーリ250 テスタロッサなど、多くの伝説的なクラシックカーを子ども用サイズのバッテリーEVで再現する、技術者集団だ。
AUTOCARの読者なら、同社の記事を過去に目にされたかもしれない。だが、ベントレーのクラシックを手掛けたのは初めてだとか。最新作を試乗する場所が混雑した市街地だというのは、妥当なのか初めは疑ったものの、実は理に適っている。
オリジナルは1929年製のレーシングカーだが、ブロワー・ジュニアの最高速度は72km/hで、航続距離は104km。郊外を目指せるほどの性能はない。しかもロンドンは、ベントレー・ブランド発祥の地でもある。
大きさはオリジナルの85% ライセンス取得済み
創業者のW.O.ベントレー氏は、1919年に自身初のクルマをこの都市で完成させた。工場の跡地は既に住宅地として再開発されているが、チャグフォード・ストリート47番地に立てられた小さな銘版が、その歴史を静かに今へ伝えている。
ブロワー・ジュニアは、リトルカーが仕上げたモデルでは過去最大の縮尺で設計された。通常は67%(2/3)か75%(3/4)の縮尺で、キャビンは子ども向きの広さしかない。だが、これは85%。それでも、全長と全幅はケータハム・セブンより小さい。
オリジナルは、ベントレー・ヘリテージコレクションとして保管される、ル・マン24時間レースを戦った1929年式ベントレー4 1/2リッター・スーパーチャージド・チームカー No.2だ。これを3Dスキャンし、精巧に手作りされている。
従来のモデルと同様に、公式にライセンスも取得済み。アルミニウム製ボディは、同社の職人が成形している。シートやインテリアは、2020年にベントレーが12台販売した、ブロワー・コンティニュエーションと同じルストラーナ・レザーを使っているそうだ。
ダッシュボードには、当時物のメーターが改造されて組まれ、バッテリーの充電量やモーターの出力が表示される。4スポークのステアリングホイールも、精巧に再現された。
ただし、幅が狭いため運転席はボディの中央。ボディフレームは、カーボンファイバー製だという。液晶モニターとシートベルト用ステーが、ちょっと雰囲気を濁している。
60km/hでもミュルザンヌを疾走する気分
シャシーは独自のラダーフレーム。サスペンションは、フリクションダンパーとリーフスプリングで構成される。
パワートレインは、大排気量の直列4気筒スーパーチャージド・エンジンではない。駆動用モーターの最高出力は20ps。歩行者へ近接を伝える未来的な人工音が、控えめに放たれる。
駆動用バッテリーは10.8kWh。フロントグリルの前に置かれた、スーパーチャージャー・ハウジングを模したケースに、充電ポートが隠れている。
狭い路地を走るのは簡単。全幅は約1.5mしかない。ウインドウやルーフはなく、上半身が露出し、周囲の視界は抜群。道が混雑していても、スルスルと隙間を縫うように運転できる。小さなフロントガラスは殆ど役に立たないが、スピード感は圧倒的。
ロンドン中心部は、時速20マイル(約32km/h)で一律に制限されている。コンフォート・モードはパワーが絞られるものの、交通の流れに不足ない加速が得られる。回生ブレーキは積極的に働く。
途中で片側2車線の道路へ合流。スポーツ・モードへ切り替え、20psを開放する。身をかがめてステアリングホイールを握る。60km/hを少し越えた程度でも、ル・マンのミュルザンヌ・ストレートを疾走しているような気分になれる。
リーフスプリングのサスペンションは乗り心地が悪く、骨まで振動が響く。ウォーム&ローラー式のステアリングラックは、スローレシオで曖昧。だが現代的なディスクブレーキが組まれ、しっかり止まれる。
洗練された運転体験とは別の次元の面白さ
基本的に全開で走れ、小さなロータリー交差点が楽しい。洗練された運転体験とは、まったく別の次元の面白さで満ちている。30km/h程度でも満足できる。気分は前例がないほど特別。注目度の高さも。
ウェストミンスター宮殿やバッキンガム宮殿の前を通り過ぎると、観光客がブロワー・ジュニアへスマートフォンを一斉に向ける。交差点で停まれば質問攻め。みんな笑顔だ。発進時にクラクションを鳴らすと、一層喜んでくれた。
冷静に捉えれば、ブロワー・ジュニアに意義があるとはいいにくい。バッテリーEVとしての性能は低く、雨から身を守る装備はなく、カタチは忠実でも大きさは85%だ。しかし、ロンドンでクルマを運転して、こんなに良い気分になれることは滅多にない。
価格も、冷静には受け止めにくい。1台10万8000ポンド(約2160万円)!で、大人のおもちゃだとしても破格。少なくとも生産数は99台だから、希少性は高いといえるが。
10倍は高額なハイパーカーでロンドを運転しても、これほど周囲を喜ばせることは難しいだろう。多くの人が、ブロワー・ジュニアを気に入ってくれたことは明らかだった。筆者もその1人だ。
リトルカー・カンパニー・ベントレー・ブロワー・ジュニア(英国仕様)のスペック
英国価格:10万8000ポンド(約2160万円)
全長:3690mm
全幅:1480mm
全高:1270mm
最高速度:72km/h
0-100km/h加速:−秒
航続距離:104km
電費:−km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:550kg
パワートレイン:電気モーター
駆動用バッテリー:10.8kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:20ps
最大トルク:13.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント