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美点を隠し持ったシトロエンらしいSUV──C5エアクロスSUV試乗

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美点を隠し持ったシトロエンらしいSUV──C5エアクロスSUV試乗

C5エアクロスSUVは、当然C3エアクロスより明確に大きいクルマだ。そのボディサイズは、C3エアクロスの4160×1765×1630mm、ホイールベース2605mmに対して、それぞれ4500×1850×1710mm、2730mmに達する。C3エアクロスが可愛らしさを感じさせるのに対して、こちらは堂々たる存在感を持つ。

2段構えのノーズを持つフロントスタイルはC3エアクロスとも共通する今日のシトロエンスタイルだが、ヘッドライトをビルトインしたグリルを持つC5の方が、ぐっとエレガントで大人っぽい表情を放っている。つまり、クルマのサイズやグレード感にマッチしているということだ。

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インテリアも同様で、見方によってはややオーバーデザインとも感じられるが、C3エアクロスより一段とラグジュアリーな雰囲気に仕立てられている。ドライバーズシートの着座位置はC3エアクロスよりもさらに高く、独特のクッション構造を採用した大柄なシートは、背中の部分を優しく支えてくれる。

大柄でよりSUVらしいルックスがC3と比べて特徴的なC5 エアクロス SUV。リアのLEDテールランプもいかにもシトロエンらしいデザイン処理だ。リアシートも着座感は前席と同様に快適で、しかも3席が独立したクッションとバックレストを持っている。ただし、ボディサイズがかなり大きいわりに、レッグルームの余裕に関してはC3エアクロスと劇的な違いはないように感じられた。

その代わりC5エアクロスは、ラゲッジスペースが一段と広い。5人乗り標準状態で580ℓ(C3エアクロスは410ℓ)、リアシートを前方にスライドさせて670ℓ(同520ℓ)、それを畳んで1630ℓ(同1289ℓ)という、たっぷりとした容量を持つ。

C5だけの独自機構当然ながらパワートレーンはC3エアクロスと別物で、2リッター直4ディーゼルターボを搭載、177psのパワーと400Nmのトルクを発生する。トランスミッションも同じアイシン製ATながら、8段型にアップグレードされる。

ただし、駆動方式はこちらもFWD=前輪駆動のみだが、現在のシトロエンには4WDは存在しないのだという。その代わりC3エアクロスと同じく、ノーマル、スノー、マッド、サンド、オフの5つのモードを持つグリップコントロールを装備、急坂下降時のためには、ヒルディセントコントロールが備わっている。

一方、C3エアクロスにはないC5エアクロス独自の機構として、PHC=Progressive Hydraulic Cushionsと呼ばれる、ダンパーのなかにもうひとつ小型ダンパーを内蔵してバンプストップ時の衝撃を軽減するシステムが、サスペンションの4輪に備わる。

さてその、「ハイドロニューマチックの再来」とも、「魔法の絨毯に乗った感じ」とも謳われるPHCを備えたC5エアクロスのサスペンションがもたらす乗り味はどんなものか、まずはそこからドライビングインプレッションを始めよう。

スピードメーターなどを表示するインストルメントパネルと、8インチタッチスクリーンを組み合わせたコクピット周り。Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応し、ワイヤレスチャージャーを搭載するなどスマホ対応もバッチリ。走り出した途端に感じたのは、とにかく乗り心地がソフト、ということだった。適度に締まった乗り味の多い今どきのクルマではめったに味わえないほど、C5エアクロスの脚は柔らかく、ふんわりとしている。だがそれでいてダンピング不足は感じさせず、ボディは余計な上下動を見せることなく路面をいなしていく。

「ハイドロニューマチックの再来」というには、あの独特の強烈なフラット感には及ばないと思ったが、「魔法の絨毯」に乗った感はたしかに味わえる。けれどもこの絨毯、ひとつだけ残念なポイントがあった。

リクライニングと前後スライド機能を持つ3列独立式フルサイズリアシート。運転席と同じアドバンスドコンフォートシートと呼ばれる高い快適性のシートを使用している。路面の突起を超える際などに、18インチのミシュランとそれを履くホイールのバネ下の重さが、明確なショックとなってボディに伝わってくるのだ。脚はいい仕事をしているのだけれど、ボディとバネ下の関係がイマイチ煮詰められていない、という印象。より軽いバネ下の採用、もしくはそれを受ける側のボディの熟成が進めば、PHCは本当の意味の魔法の絨毯になるだろうと思う。

アイシン製の8速オートマチックを搭載。4WDではないがシフトレバー横のスイッチで路面状況に応じたドライブモードを選択できる。このクルマだけの魅力がある好ましいのは、柔らかいサスペンションがもたらすソフトな乗り心地にもかかわらず、コーナリングにその悪影響が及んでいないことだった。C3エアクロスのような軽快さこそ感じられないものの、C5エアクロスは狙ったラインを確実にたどって、安定した姿勢でコーナーを抜けていく。

記事中にもあるように通常時の積載容量は580ℓで、リアシートをスライドすることで670リッター、全て折りたたむことで1630リッターまで拡大する。3席あるリアシートは個別に折りたためるので、乗員や荷物に応じて自由に調整できる。その一方で、パワートレーンは想像を超える美点を持っていた。2リッター4気筒ディーゼルターボと8段ATが1640kgの車重に対して充分なパフォーマンスをもたらすのは、まさしく想像したとおりだったが、そのスムーズさと音の心地好さは想像を超えていた。なかでも特に、スロットルを深めに踏み込んだときに奏でられる“プォーン”というサウンドは、ガソリンエンジンのスポーツカーのようだといったら、褒めすぎだろうか?

搭載するエンジンは2ℓ 直列4気筒のディーゼルターボエンジン。最高出力177ps、最大トルク400Nmを発揮する。つまりC5エアクロス、乗り心地とエンジンのサウンドという、ライバルがなかなか持ちえない分野に美点を隠し持つところが、いかにもシトロエンのSUVらしいと思った。標準型が431万9000円、ナッパレザーパッケージ仕様が468万5000円というプライスが同サイズカテゴリーの輸入SUVのなかで買い得感のあるものであるところも、このクルマの魅力のひとつではないだろうか。

文・吉田 匠 写真・柳田由人 編集・iconic

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