ターボSに近いGTSのシャシー構成
執筆:Mike Duff(マイク・ダフ)
【画像】ポルシェ911 最新のカレラGTSとGT3 ツーリング 競合するスポーツモデルと比較 全189枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
先日、最新のポルシェ911 カレラGTSをイタリアで試乗したばかりだが、早速右ハンドル車が英国へ上陸。走り慣れた道で試乗することができた。
舗装の良くない、英国ウェアデール周辺の一般道でステアリングホイールを握ったのは、カレラ4 GTSクーペ。四輪駆動のGTSだ。
このGTSはトリムグレードではなく、1つのモデル・グードに相当する。ボディはクーペやカブリオレ、タルガから選択できるし、様々な走りに影響を与えるオプションも多様に追加できる。
オプションやボディスタイルだけでなく、後輪駆動と四輪駆動のどちらを選ぶべきかも、熟考すべきポイントになる。特に、雨が多く雪も降る英国や日本のドライバーにとっては。
四輪駆動の方が、滑りやすい路面でも高いトラクションを確保できる。しかしカレラ4 GTSの場合、後輪駆動のカレラGTSより英国では5580ポンド(86万円)高くなる。車重も50kg重くなる。
試乗車に装備されていたオプションは、後輪操舵システムにPCCBカーボンブレーキ、速度感応式のパワーステアリング・プラスなど。ボディロールを抑えるPDCCダイナミック・シャシーコントロールは付いていなかった。
ポルシェの説明によれば、GTSのシャシー構成や設定は、ターボSに近いという。確かに、通常のカレラやカレラSと乗り比べてみると、荒れた路面での乗り心地は明確に硬い。だがスタビリティは感心するほど。雨が酷くなっても変わらなかった。
感動的なパワーを路面へ展開する能力
サスペンションにはPASMと呼ばれるアダプティブダンパーが備わる。だが、最適なモード選択には悩むかもしれない。
英国では一般的といえる、シャシーには手厳しい凹凸が多く存在する区間では、ノーマル・モードで短い周期の振動をいなしきれずにいた。速度域が上昇するとともに、フロントが軽くなるような感覚もあった。
スポーツ・モードを選択すると、硬くタイトになる。そのかわり、シートを介して強い衝撃が腰骨へ伝わってきてしまう。
一方で、カレラ4 GTSの3.0Lツイン・ターボチャージド・フラット6のパワーを路面へ展開する能力は感動的。乗り心地を忘れるほど。
最高出力はカレラSから29psほど引き上げられた479psで、911 ターボと比べれは明らかに弱い。だが、GTSが備える低回転域でのトルクと、8速PDKの電光石火と呼びたいレスポンスが組み合わさり、馬力以上に鋭く感じられる。
標準のカレラからボリュームアップされたエグゾーストノートも、ドライバーの気持ちを鼓舞する。それでいて、圧倒されるような動力性能を引き出すのに、ドライバーが過度に気張る必要はない。
タイトコーナーが連続するような区間では、流暢で機敏な印象が増す。ボディを狙ったラインへ導きやすく、忠実に辿ってくれる。さらに速度や負荷が上昇しても、正確なステアリング・フィールは変わらない。
992型911のスイートスポット
すべてのポルシェ911に共通することだが、僅かなインプットへシャシーが確実に反応してくれるのも美点。アクセルペダルの角度を繊細に変えるだけで、コーナリングラインを緩めたり絞ったりすることも造作ない。
ドライ路面でのメカニカル・グリップは強大。しかし、凹凸が目立つ濡れた路面では注意も必要。リア側の太いピレリPゼロが、突然路面を掴みきれなくなるような場面も何度か見られた。
リアのトラクションが抜けた瞬間、四輪駆動であることのありがたみを実感する。トルクは素早くフロントタイヤ側に引き渡され、まっすぐにクルマを進めようとしてくれる。
カーボンセラミック・ブレーキは、公道利用には少々オーバースペック。だが、穏やかな減速時でも完璧に働いてくれていた。
911 カレラGTSは、ジュニアGT3ではなく、シニア・カレラだと筆者は思う。GT3を試乗したのと同じ区間をカレラ4 GTSで走ったが、レスポンスやサウンド面で、GT3に迫るほどの奥行きは感じられなかった。
とはいえ、適切にオプションを選んだカレラ GTSは、現実環境で引き出すことが可能な動力性能が極めて高い。992型ポルシェ911の才能あふれるモデル・グレードとして、スイートスポットになるのではないか、と感じた。
ポルシェ911 カレラ4 GTS クーペPDK(英国仕様)のスペック
英国価格:11万4500ポンド(1774万円)
全長:4519mm
全幅:1852mm
全高:1298mm
最高速度:309km/h
0-100km/h加速:3.3秒
燃費:8.8-9.3km/L
CO2排出量:245-259g/km
車両重量:1595kg
パワートレイン:水平対向6気筒2981ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:479ps/6500rpm
最大トルク:57.9kg-m/2300-5000rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
だけどGTSは魅力的だなー