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クルマらしい形のクルマ フィアット1500L プジョー404  1960年代の凸型ボディ 前編

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クルマらしい形のクルマ フィアット1500L プジョー404  1960年代の凸型ボディ 前編

欧州車の歴史に刻まれるべき大切なモデル

よほどのブランド・マニアでなければ、この2台へ強く関心を抱くことはないかもしれない。それでも、プジョー404とフィアット1500Lは、欧州車の歴史に刻まれるべき大切なモデルだと思う。

【画像】クルマらしい形のクルマ 1500Lと404 同時期のフィアットとプジョー 最新モデルも 全137枚

刺激的な走りを披露したわけではないし、誇らしくコンサルやケンブリッジを名乗るモデルのように、特別な印象を残したわけでもないだろう。だが設計に優れ、車内は広く乗り心地は快適で、近年は激減したファミリーサルーン・ユーザーの共感を得た。

ドーバー海峡を越え、英国でも販売された。当たり前のようにフォードやBMC、ヴォグゾール(英国オペル)などを選んできた市民へ、海外モデルに関心を抱かせるきっかけを作った。

404は1618cc、1500Lは1481ccの4気筒エンジンを搭載し、充分な動力性能を発揮しつつ燃費は良好。毎日の通勤を倹約的にこなせ、週末は家族での長距離ドライブを気軽に楽しめた。

英国では排気量に比例する課税制度がなく、自国車に対する支持率は高く、排気量の小さい輸入車を選ぶ人は限られた。とはいえ、一般家庭に普及したテレビの画面には、フィアットやプジョーが頻繁に姿を表した。

ローマのコロッセオ前が紹介されれば、混沌とした車列を縫うように、1500Lが揚々と先を急いでいた。パリのシャンゼリゼ通りが映されれば、古いタクシーの群れと入り交じりながら404が闊歩していた。

さらに404はサファリラリーで活躍。東アフリカでの4度の優勝が、耐久性を証明した。

ロールス・ロイスに迫る外界との隔離性

ある年齢層のクルマ好きにとって、1960年代の普通の欧州製サルーンを想像するなら、404へ近い姿が思い浮かぶに違いない。期待した通りのモノが手に入る、当時の典型的な1台といえた。

横から見ると凸型のスリーボックス・ボディを手掛けたのは、ピニンファリーナ。優雅なウエストラインをまとうが、同じく彼が描いたスタイリングのオースチン・ケンブリッジが存在したロンドンでは、さほど新鮮には感じられなかったかもしれない。

その頃の英国では輸入関税がかかり、6気筒エンジンのヴォグゾール・クレスタや、スポーティなトライアンフ2000と同等の1200ポンドという価格だった。気取りすぎない上品さを漂わせる404ながら、割高感があたことは否めないだろう。

ゆとりのある車内空間や、厳しい条件にも耐えうる製造品質へ注目した英国人も少なからずいた。動力性能では際立つ部分がなくても、ミシュランXタイヤは路面をしなやかに捉えた。同時期のロールス・ロイスに迫る、外界との隔離性すら叶えていた。

比較的扱いやすいコラムシフトを得ていた404は、広く愛されたプジョー403の後継モデルとして1960年に登場。当初は1.6Lガソリンで73psの5シーター・サルーンだけの設定だったが、1.9Lディーゼルがすぐに追加されている。

また6シーターのサルーンと、8シーターのステーションワゴンも登場。燃料インジェクション仕様のエンジンも選べた。

フィアット・デザインのありふれたサルーン

シートの表皮はクロスからレザーまで幅広く用意され、すべての404で前席はリクライニング可能だった。背もたれを完全に倒せば、ベッドのようにフラットな空間を作ることもできた。

細かなアップデートを受けつつ、1968年に登場した504へ主力サルーンの立場を交代。404は安価なベーシック・モデルとして装備が簡素化されつつ、欧州では1975年まで提供が続いた。

シャシーは、従来的なフロントエンジン・リアドライブだが、中身にはプジョーらしさが溢れていた。サスペンションは滑らかなコイルスプリング。リアアクスルへは、ウォームギアが駆動力を伝えた。

クラッチ交換は手間だったが、リアアクスルを安定させるトルクチューブも備わっていた。ステアリングラックは、正確性に優れるラックアンドピニオン式が選ばれた。

4気筒1618ccエンジンは45度傾けて搭載され、大きなエアクリーナーボックスの下に隠れた。このユニットは発売後に改良を受け、メインベアリングが5枚へ増え、高圧縮比化。ソレックスのシングルキャブレターでも、最高速度150km/h以上を実現した。

1960年の404登場当初、0-100km/h加速には約22秒を要した。しかし、8秒も縮めている。

他方、フィアット1500Lも、404と同様に欧州ではありふれたサルーンだった。ピニンファリーナが描いた404と似ていたが、前後のライトを結ぶシャープなボディラインはフィアット独自のデザインだった。

スペインでは1980年代までタクシーで現役

1500Lのオリジナルは、1959年に登場した6気筒エンジンのフィアット1800と2100。1961年にフェイスリフトを受け、1800Bと4灯ヘッドライトの2300へ進化し、1963年に1481ccの4気筒エンジンを搭載した1500L(ロング)が追加されている。

この4気筒エンジンは、腕利きのウレリオ・ランプレディ氏が設計した、6気筒ユニットから2気筒を削ったもの。最高出力は当初72psで、シリーズ2では75ps。トランスミッションは4速マニュアルのみで、404のようにオートマティックは選べなかった。

イタリアでは、英国のルーツ・グループが展開していたシムカ1501などが主なライバルになった。同時期のアルファ・ロメオや、ランチアのファミリーサルーンより安価で、タクシー用にパワーが絞られた仕様も存在した。

1500Lのイタリアでの生産は1968年に終了されるが、4灯ヘッドライトのデザインで、スペインのセアトは1972年まで継続。合計で約20万台が作られた後、フィアット125へバトンタッチしている。スペインでは、1980年代までタクシーとして現役だった。

全長は4489mmで、404より約70mmも大きく、ホイールベースも2661mmと僅かに長い。リアシート側の空間はそのぶん広く、荷室容量も大きい。開口部の位置が少々高めだが。

今回ご登場頂いたバーガンディの404とネイビーブルーの1500Lは、同じ人物が所有している。現代的なスーパーカーを複数コレクションするマニアだが、名前は伏せて欲しいとのこと。

1980年代に住んでいたカナダで、普段の足にしていたのが404だったとか。それ以来、特別な気持ちを抱くようになったという。

この続きは後編にて。

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