ビギナーからベテランまで楽しめるヒストリックカーラリー
サーキットでのレース系イベントや車両展示系のギャザリング(いわゆるミーティング)とは異なり、ヒストリックカーラリーは傍から見ていると参加者が何をやっているのかを把握しにくいイベントだ。
クラシックカーラリーはマジで「頭脳戦」! 名車「アルファGT1600ジュニア」で「極上のクルマ遊び」に参加した【MARINE GP】
以前、自動車専門誌にヒストリックカーラリーのインサイドレポートを寄稿していた。そんな経緯もあり、数多くの読者さんに23年前から愛用している1974年式アルファロメオGT1600ジュニアのヒストリックカーラリーにおける雄姿を確認してもらっていた。 連載のようなスタイルで頻繁に紹介していたので、わが愛機とともにヒストリックカーラリーの認知度も上がったはず、と思っていた。しかし、あるとき「いつも誌面で拝見しています」と、お会いするたびに言ってくださっていた読者さんから「ヒストリックカーラリーってパレードランみたいなものなんでしょ? 今回も完走できてよかったですね」と告げられたことがあった。
ヒストリックカーラリーは「知力」「気力」「体力」が要求される競技
ヒストリックカーラリーは、決められた区間を決められた時間で、どれだけ正確に走行できるのかを競う線踏み競技(=1000分の1秒単位で計測するPC競技。基準タイム走行とも呼ばれる)で獲得した点数にて順位をつける。同時に、走行ルートが記されたコマ図(マップ)上のチェックポイント認証による公道走行(=スタンプシートの提出)や、指定速度競技(アベレージ走行)やCO競技(ルートブックに記載された指定時刻に前輪で計測ラインを踏みながら通過し、その誤差を競う)なども実施されるのが通例である。そのことを件の自動車専門誌においても、もちろん、しっかり紹介していた。 しかし、残念ながらちゃんと伝わっていなかったのだ。きっとわかりにくい誌面構成であったことが伝わらなかった最大の要因なのであろうと、いまでも深く反省している。
端的に説明すると、ヒストリックカーラリーは“ラリー”というイベント名だが、グラベルやターマックを速く走った者が勝つというわけではなく、ましてやパレードランでもない。知力、気力、体力が要求される深遠なるコンペティションである。
去る10月3日に愛知県で開催されたMARINE GPは、参加しやすいイベントとしてスタートしたヒストリックカーラリーだったので、線踏み競技だけが実施された。そのため、ヒストリックカーラリーに初めて参加するというエントラントが複数いた点が特徴だった。当日、気になった参加者(ビギナーからベテランまで)を5組取材してきたので、ご覧いただこう。
トヨタ・カローラレビン
まず紹介するのは、名古屋を拠点にタイヤなどを販売している、K-oneのAE86レビンで人生初のヒストリックカーラリーに臨んだmuta Racingの女性コンビ。MT免許を持っている稲葉沙重さん(普段はプレサージュを愛用)がドライバーを務め、AT免許の川野梨沙さん(普段はハリアーを愛用)がコ・ドライバーを担当した。
ドライバーの稲葉さんがMT車での街乗りに慣れていなかったようで苦戦していたが、見事完走し、ふたりでイベントを満喫していた。
BMW 3.0CS
続いて紹介するのは、1973年式のBMW 3.0CSで参加したMさん夫妻だ。こちらのコンビはヒストリックカーラリー経験者で、MARINE GPの前身であり、かつて中部地方と三重県および滋賀県を舞台として開催されていたヒストリックカーミーティング(名古屋クラシックツアー、ヒストリックカーミーティング、ジャパンクラシックツアーという3タイプがあった)時代にもファミリーで定期的に参加していた。
以前、筆者がお声がけしたときは愛息の悠生君(当時8歳)とMさんの実兄である裕司さんという3人でエントリーしていたが、今回、子どもたちは“お留守番”とのことだった。あらためて年齢をお聞きしてみたら、悠生君は中1になったそうだ(長女は高2)。今回、3~4年ぶりとなるヒストリックカーラリーを夫婦水入らずで楽しんでいた。
トヨタ・スプリンタートレノ
TE27トレノでヒストリックカーラリーを堪能していた成瀬公人さんは、愛娘と一緒に参加していた。センスよくモディファイされた愛機は、FRP製ボンネット、40φソレックス・キャブレター、2Lエンジン、LSDなどを装備。ダンパーも交換しているとのことだった。往時に成瀬さんの父親がTE27レビンでラリーに参戦していたらしく、その影響もあって2年ぐらい前に兄弟車であるTE27トレノをゲット。
このクルマのほかに、フォード・マスタング、フェラーリ328、フィアット500グッチ、アルファロメオ105系段付きクーペ、レース用のルノー5ターボ2なども愛用していると話してくれた。
日産スカイラインGT-R
国産旧車では、ハコスカも参加していた。こちらも女性コンビがドライブしたAE86レビンと同じようにK-oneが所有しているクルマで、名古屋77ナンバーの2オーナー車だ。K-oneのスタッフ(ハコスカの現オーナー)によると、お年寄りの前オーナーが大切にしていた個体を引き継いでから、すでに10年ほど経ったのだという。
ドライバーを担当したのは久納さん(48歳)で、今回が初ヒストリックカーラリーとのことだった。ちなみに、久納さんはR32型GT-Rを所有しており、ハコスカの現オーナーの仕事上の先輩でもあるということで、稀少車のハンドルを任された。
ダットサン・サニートラック
レーシングドライバーの松田次生さんもハコスカで参戦しようと思ったエントラントのひとりだが、今回は数ある愛車のなかからサニトラをチョイス。人生初となるヒストリックカーラリーを楽しんだ。
各部をレストアしつつ、ボディカラーを赤から白にしたというサニトラは、ホイールを変えて、車高を下げて、エアコンを外して……といった感じでモディファイされていた。だがエンジン自体はノーマルで、機関系はキャブレターの変更とA型エンジン用エキマニの装着ぐらいにとどめていた。
速く走った者が勝つレースとは異なり、ヒストリックカーラリーは決められた区間を決められた時間で、どれだけ正確に走行できるのかを競う線踏み競技で順位を確定している。そのため、松田選手でも初めての競技はさすがに難しかったようだ。
ベテランにはベテランの、ビギナーにはビギナーの楽しみ方があるヒストリックカーラリーは、各地で定期的に開催されているので、趣味性が高い愛車で安全に競技を楽しんでみたいと思っている方は参加してみるといいだろう。MARINE GPは電気自動車での参加もウエルカムとのことだったので、来年のレギュレーションが発表されたらぜひとも確認してみてほしい。
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