日本仕様が発表されたBMWの新型「5シリーズ」に、今尾直樹がひと足はやく触れた! 新しいドイツのミドルサルーンの印象はいかに!?
ドイツ車の巨大化はどこまでも続く……
BMWのアッパー・ミドル・セダン、5シリーズが約7年ぶりに全面改良を受けた。と本国で発表されたのが今年の5月。それからたった2カ月後の本日7月13日、ニッポンでそのオール・ニュー5シリーズ・セダンの販売がはじまった。
それもこれもBMWが製品投入のタイミングをグローバルで統一しようとしているからだ。いやはや世界は小さくなっている。
それに先立って某日、事前説明会がお台場のBMW GROUP Tokyo Bayで開かれた。i5 M60 xDriveという新型5シリーズセダンの電気の最強バージョンが持ち込まれ、実車に触れられた。
i5 M60 xDriveはグリルがブラック仕様になっているのもあって大きさを感じさせないけれど、かなりデカいのは間違いない。
全長×全幅×全高=5060×1900×1505mmと、5.0m超もある。ちょっと前、第4世代の「7シリーズ」(2001~2009年)ぐらいのサイズである。
ホイールベースは2995mmと3.0m超えまで、あと5mm。BMWの発表によると、先代比で97mm長く32mm幅広く、36mm高い。ホイールベースはプラス20mmで、数値的には微妙な拡大である。つまり、先代からしてすでに十分大きかったのだ。
ちなみに昨年発売された旗艦7シリーズは、740iで5391mm×1950mm×1544mm、ホイールベース3215mmもある。新型5はこれに較べれば、331mmも短くて50mm狭く、39mm低い。ドイツ車の巨大化はどこまでも続く……。
その新型7シリーズとは対照的に、新型5のデザインはごくオーソドックスである。新しいキドニー・グリルも縦方向に大型化されたとはいえ、7シリーズほど巨大ではない。EVの「iX」が最初だったと記憶するけれど、このグリル、夜になると怪しく腎臓型に輝く。「アイコニック・グロー」という仕掛けが用意されているのだ。ウィンカーとしても働く、新しいデイライト・ラニング・ライトにも注目である。
フロントの造形がいわゆるシャークノーズ風になっているところがポイントで、その狙いはボンネットを長く見せて高級感を醸し出すことにあるという。その代わり、オーバーハングが従来型より60mmものび、これが全長5.0m超えにつながっている。
5シリーズ史上、もっともゴージャスなムードホイールベースを20mm、全高を36mmプラスしたおかげで、居住空間は後席の足元も含めて余裕がある。大型化は伊達ではない。
インテリアは7シリーズとおなじコンセプトで、7シリーズとおなじ部品とおぼしき12.3インチのインフォメーション・ディスプレイと14.9インチのコントロール・ディスプレイがコクピットに鎮座している。
7シリーズ同様、スワロフスキーのクリスタルガラスがセンターコンソールのスイッチに使われていたりもして、おそらく5シリーズ史上、もっともゴージャスなムードを醸し出している。
一方、シートやステアリングホイールの表面にビーガンレザーという植物由来の人工皮革仕様の用意もあり、SDGsをアピールしていたりもする。ヨーロッパのラグジュアリーは当然のようにエコロジー込みになっている。
パワートレインは、2.0リッター直列4気筒のガソリンを搭載する523i、同ディーゼルの523d xDriveの、両マイルド・ハイブリッドが日本史上の販売の主力となる。
EV版のi5は eDrive 40とM60 xDrive の2タイプ。前者は340psの電気モーターで後輪を駆動する、EVながら、伝統的な後輪駆動のスポーツセダンで、後者は2基の電気モーターが前後輪を、それぞれ分担して駆動する4WDのMモデルである。システム最高出力601ps、最大トルク820Nmという途方もない数値はMの文字にふさわしい。
自動運転アシスト関連では、高速道路での渋滞時においてステアリングから手を離しての走行が可能なハンズ・オフ機能付きのレベル2と、「パーキング・アシスト・プロフェッショナル」を標準装備する。
パーキング・アシスト・プロフェッショナルは、一度、その場所にドライバーが駐車して記憶させる必要がある。であるにしても、自動的に駐車してくれるのだから、めちゃくちゃ助かることだろう。ホントは初めての、やりにくそうな狭い場所こそ、自動で駐車してほしいわけですけれど、そんな夢の自動運転に向かってBMWは確実に前進している。
“センター・オブ・カスタマー・バリュー”本国ではPHEV(プラグイン・ハイブリッド)と6気筒モデルものちに出てくるらしい。なのにBMWジャパンでは、とりわけPHEVではこのセグメントのトップを走っていたというのに、このふたつをすっぱり諦め、EVに専念する。
それはBMWが2030年までに販売の50%をEVにする、と、宣言しているからだ。7年後に答えを見せるためにはいつからやるのか。いまでしょ。と彼らは判断したのである。直6のないBMWなんて……。と、外野でも思う。当事者にとって苦渋の決断だったことは疑いない。
BMWとしては、EVになっても「駆けぬける歓び」を維持すべく、前後重量配分50:50を維持し、ガソリン自動車比、プラス400kgの重量を感じさせることのないよう、アダプティブ・ダンパーと、リヤにセルフレベリング付きエアサスペンションを装備。ボディの大型化は4WSで補う。など、技術による解決を図っている。
直4ガソリンエンジンにもミラーサイクルを採用して高効率化が図られている。「EVが半分になっても、半分は世界最高のICE(内燃機関)がある」と、7年後の姿をBMWジャパンの5シリーズ担当者の方はあえて強気に語っている。
担当者によると、5シリーズこそ、BMW的価値の中心、“センター・オブ・カスタマー・バリュー”という。BMWらしい美しいスタイリングと、3シリーズよりも長距離を快適に駆けぬけられる性能を持つオーナー向けセダンで、最新デジタルエクスペリエンスを提供する。デジタルエクスペリエンスについては国産車からの乗り換えのひとの期待値が高いらしい。
初期生産限定モデルとして、「ザ・ファースト・エディション」の受け付けが7月13日からBMWオンラインストアで始まっている。納車は2023年第4四半期、すなわち10月からだ。
7月14日(金)から東京・表参道で新型5シリーズのポップアップエキシビジョンを9月17日(日)まで開催する。すでにご存じでしょうけれど、世のなか、大きく動き始めている。
文・今尾直樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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