現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【今さら聞けない】エンジンのボア×ストロークって何?

ここから本文です

【今さら聞けない】エンジンのボア×ストロークって何?

掲載 更新
【今さら聞けない】エンジンのボア×ストロークって何?

ボア×ストローク比がエンジンの特性を左右する

「ボア」とは、韓国出身のタレントでも、アナコンダやニシキヘビのことではなく、「穴・トンネル」という意味。つまり、エンジンのシリンダーの内径(≒ピストン径)のこと。ストロークは、ピストンの移動量で、エンジンの排気量は、このボア×ストローク×気筒数で決まる。

【今さら聞けない】ガソリン「直噴」エンジンのメリットとは?

もし、2リッター4気筒のエンジンなら、1気筒あたりの排気量は500cc。ところが、同じ1気筒500ccでも、ボア&ストロークは、エンジンによってかなり異なる。

たとえば、レッドゾーンが9000回転だった、ホンダが誇る超高回転エンジン=F20C(S2000 AP1)は、ボア×ストローク:87.0mm×84.0mmで、ボアよりもストロークが短いショートストローク型。

一方、トヨタのヴォクシーなどに搭載された、3ZR-FAEエンジンは、ボア×ストローク:80.5mm×97.6mmで、ボアよりもストロークが長い、ロングストローク型。そして、ボア×ストローク:86.0mm×86.0mmで、ボアとストロークがまったく同じというエンジンもある。

これはスクエア型(四角という意味)と呼ばれ、古くはトヨタの3S-G、最近ではスバルのFA20が、このスクエア型。FA20はスバルのBRZと、トヨタの86のエンジンだが、ボア×ストロークがちょうど86mmというのは興味深い!?

ところで、なぜエンジンにはこのようにショートストローク型とロングストローク型が混在しているかというと、それはそれぞれに一長一短あるからだ。

その特徴を簡単に紹介しよう。

同じ排気量でもボア×ストロークが変わるとエンジン特性が変わる

・ショートストローク型

ボアが大きい=ピストン径が大きいので、吸気・排気バルブの径も大きくできる。バルブ径が大きければ、吸排気に要する時間が短く、ストロークが短いので、ピストンスピードを上げずに、高回転化できるので、排気量あたりの出力を大きくしやすいメリットがある。つまりショートストローク型=高回転(高出力)型エンジンと認識されている。

デメリットは、バルブ径が大きい分、低回転域では、混合気の流速が遅くなるので(ガスは速く動けば動くほどよく燃える)、燃焼が悪く、低速トルクは比較的小さく、燃費の面でも不利になる。

・ロングストローク型

エンジン=クランクの回転数が同じなら、ストロークの長いエンジンだと、それだけピストンが上下動する平均速度=ピストンスピードが速くなる。つまり、ロングストロークエンジンは、ショートストロークエンジンよりも、ピストンスピードが速いので、低回転で大きなトルクを発生し、実用域で使いやすいエンジン特性が得られる。

燃費の面でも有利だが、高回転化には不向きで、トルク重視型とも呼ばれている。

・スクエア型

スクエア型は、ショートストローク型とロングストローク型の中間的性格で、FA20型エンジンを採用しているトヨタとスバルは、「ショートとロングのいいとこ取り」と称している。

しかしそのベースとなったFB20型エンジン(フォレスター、インプレッサ)は、ボア×ストローク:84.0 mm×90.0mmの典型的なロングストロークエンジンだった。

さらにいえば、かつてのレガシィ、インプのパワーユニットで、今もWRX STIなどに搭載されるEJ20型エンジンは、ボア×ストローク:92.0 mm×75.0mmと、超ショートストローク型。同じ、水平対向4気筒の2リッターで、ボア×ストロークをこれだけ変えてくるのは、興味深い。

一方、日産などは、1967年デビューのS30Zに搭載された、L20型と、セドリック、グロリア、スカイラインに搭載されたRB20、そして国産初のV6エンジン=VG20まで、同じボア×ストローク(78.0mm×69.7mm)を踏襲している。

高回転を求めるレーシングエンジンはショートストロークが主流

見てきたとおり、ボア×ストローク比は、かなりエンジンの特性を左右する、基本的な要素となっている。高出力=馬力は、トルク×回転数で決まるので(同じ排気量なら一分間に一回でも多く爆発するエンジンの方がパワーが出る)、レーシングエンジンやスポーツタイプのエンジンは、高回転型のショートストローク型が主流。

量産車にもかかわらず、最高回転9000rpmで売り出した、ホンダS2000のF20Cのピストンスピードは、23.24m/s。2.4L V8で、レブリミットが19000rpmだった時代のF1エンジンのピストンスピードが、約24m/sなので、ほぼF1級。現行(2014年以降)のF1は、1.6リッター V6ターボでレブリミット15000rpmなので、F20Cの方がピストンスピードは速いかも!

でもじつは、同じホンダのB18C(DC2に搭載)のピストンスピードは、8400rpmで23.25m/sと、F20C以上のピストンスピードだった。こちらはボア×ストローク:81.0mm×87.2mmで、ロングストローク型エンジン。

もともとバイクメーカーだったホンダは、ショートストロークの高回転高出力型エンジンがお家芸で、第2期F1の初期、1984年までは、極端なショートストローク型のエンジンの伝統を守っていたが、翌1985年の第5戦からロングストローク化した新型エンジンを投入。シーズン4勝を挙げ、ホンダF1 黄金期の幕開けとなった。

このとき、ホンダのロングストロークエンジンが成功したのは、ターボエンジンだったから。ショートボア×ロングストローク化して、バルブ径が小さくなっても、ターボチャージャーで空気はいくらでも送り込めるので、燃焼効率がよく(燃焼速度が速い)、燃費にも優れたロングストロークエンジンの長所が勝ったため。

ちょっとマニアックかもしれないが、名機のボア×ストローク比を振り返ってみると、特性や長所の活かし方がいろいろあって、各メーカーごとの考え方もわかってくるので、調べてみると面白いのではないだろうか。

(文:藤田竜太)

こんな記事も読まれています

8年ぶりモデルチェンジ 見た目だけじゃない、フリードはどう変わったのか
8年ぶりモデルチェンジ 見た目だけじゃない、フリードはどう変わったのか
AUTOCAR JAPAN
デコトラ野郎には日野が圧倒的人気だった! いすゞ・ふそう・UDとそれぞれの特徴をデコトラ目線でチェックしてみた
デコトラ野郎には日野が圧倒的人気だった! いすゞ・ふそう・UDとそれぞれの特徴をデコトラ目線でチェックしてみた
WEB CARTOP
Moto2フランス決勝|小椋藍、15人抜きで今季初表彰台2位! チームメイトのガルシアとワンツーフィニッシュ
Moto2フランス決勝|小椋藍、15人抜きで今季初表彰台2位! チームメイトのガルシアとワンツーフィニッシュ
motorsport.com 日本版
テインから『トヨタGAZOOレーシング GR86/BRZカップ 2024』プロフェッショナルクラス指定車高調「MONO RACING SPEC R」の販売が開始
テインから『トヨタGAZOOレーシング GR86/BRZカップ 2024』プロフェッショナルクラス指定車高調「MONO RACING SPEC R」の販売が開始
レスポンス
ドライビングプレジャーを継承しながらモダイナイズされたBMW「523i エクスクルーシブ」の完成度
ドライビングプレジャーを継承しながらモダイナイズされたBMW「523i エクスクルーシブ」の完成度
@DIME
V12エンジン搭載! 新型「カクカクSUV」世界初公開! 光る“パルテノン神殿“が超カッコイイ! “スーパーラグジュアリーSUV”「カリナン」登場
V12エンジン搭載! 新型「カクカクSUV」世界初公開! 光る“パルテノン神殿“が超カッコイイ! “スーパーラグジュアリーSUV”「カリナン」登場
くるまのニュース
世界唯一のロータリーエンジン搭載モデル、マツダ「MX-30 ロータリーEV」の革新性
世界唯一のロータリーエンジン搭載モデル、マツダ「MX-30 ロータリーEV」の革新性
@DIME
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年5月5日~5月11日)
モーターマガジンMovie 週間視聴回数BEST5 プラス1(2024年5月5日~5月11日)
Webモーターマガジン
渋滞緩和なるか 「岡山環状道路」2024年度延伸に反響集まる! 南西部分開通で国道2本を連絡
渋滞緩和なるか 「岡山環状道路」2024年度延伸に反響集まる! 南西部分開通で国道2本を連絡
乗りものニュース
キミ・アントネッリの”F1早期デビュー”を阻止するルール、導入のきっかけとなった張本人フェルスタッペン「大嫌い。すごく速くてもF1に出られないなんて!」
キミ・アントネッリの”F1早期デビュー”を阻止するルール、導入のきっかけとなった張本人フェルスタッペン「大嫌い。すごく速くてもF1に出られないなんて!」
motorsport.com 日本版
小型・高機能・リーズナブルな「Bluetooth FMトランスミッター」の新作登場!【特選カーアクセサリー名鑑】
小型・高機能・リーズナブルな「Bluetooth FMトランスミッター」の新作登場!【特選カーアクセサリー名鑑】
レスポンス
Moto3フランス決勝|ダビド・アロンソ終盤に一閃、今季3勝目でランク首位接近。山中琉聖が上位争い7位
Moto3フランス決勝|ダビド・アロンソ終盤に一閃、今季3勝目でランク首位接近。山中琉聖が上位争い7位
motorsport.com 日本版
ようやく過去のモノにできる……F1初優勝ノリス担当マクラーレンエンジニア、雨で勝利落とした2021年ロシアGPの“呪縛”から解放
ようやく過去のモノにできる……F1初優勝ノリス担当マクラーレンエンジニア、雨で勝利落とした2021年ロシアGPの“呪縛”から解放
motorsport.com 日本版
ランチア新型「イプシロン」欧州で注文開始! EVに加え48Vハイブリッドも用意する高級コンパクトカーの“気になる価格”とは
ランチア新型「イプシロン」欧州で注文開始! EVに加え48Vハイブリッドも用意する高級コンパクトカーの“気になる価格”とは
VAGUE
新型「GT-R“R36”」まもなく公開へ!? 1000馬力の“4.1リッターV6”搭載!レトロな「旧型風デザイン」もカッコイイ「和製スーパーカー」の正体は?
新型「GT-R“R36”」まもなく公開へ!? 1000馬力の“4.1リッターV6”搭載!レトロな「旧型風デザイン」もカッコイイ「和製スーパーカー」の正体は?
くるまのニュース
「ランボルギーニ」が後続を引き離し勝利! SUPER GT第2戦富士GT300クラスもドラマがありました
「ランボルギーニ」が後続を引き離し勝利! SUPER GT第2戦富士GT300クラスもドラマがありました
Auto Messe Web
15番手から追い上げ、3位獲得の日産ローランド「2~3周走ってすぐに、良い感触があった」
15番手から追い上げ、3位獲得の日産ローランド「2~3周走ってすぐに、良い感触があった」
motorsport.com 日本版
「NSX-GTよりもストレートは速い」 スーパーGTに新規参戦するシビックタイプR-GTの開発陣&ドライバーを直撃した
「NSX-GTよりもストレートは速い」 スーパーGTに新規参戦するシビックタイプR-GTの開発陣&ドライバーを直撃した
WEB CARTOP

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村